えきのこっくすしょう

エキノコックス症

最終更新日:
2025年04月08日
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2025/04/08
更新しました
2018/08/17
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概要

エキノコックス症は、エキノコックス属の寄生虫(条虫)による感染症であり、主に肝臓に症状が現れる病気です。人に感染して問題となるエキノコックス症には、単包条虫が原因の「嚢胞性エキノコックス症」と、多包条虫が原因の「多包性エキノコックス症」があります。特に日本では、多包性エキノコックス症が公衆衛生上の重要な課題となっており、国内では主に北海道で発生が確認されています。

主な感染経路は、感染したキツネやイヌの糞便中に含まれる寄生虫の卵が、水や食物などを介して経口的に体内に入ることです。エキノコックスの成虫は体長数mmと小さな条虫で、野生動物やイヌの腸内に寄生して生活しています。

この病気の特徴として、感染から発症までの潜伏期間が数年から十数年と非常に長いことが挙げられます。初期症状がほとんどないため、発見時には病気が進行していることも少なくありません。症状が現れ始めると、腹痛や肝臓の腫れ、黄疸(おうだん)(皮膚や白目が黄色くなる症状)などがみられるようになります。

治療では、主に外科的手術による病巣の切除や駆虫薬による薬物療法などが行われます。感染すると重篤な症状を引き起こす可能性があり、完治が難しい場合もあるため、予防がもっとも重要です。予防としては、野生動物との接触を避け、山菜や果物などは十分に洗浄して摂取すること、また飲料水は安全な水を使用するか煮沸して飲むことが推奨されています。エキノコックス症がみられる地域の保健所や医療機関では、予防や早期発見のための啓発活動が積極的に行われています。

原因

エキノコックス症は、エキノコックスという寄生虫の非常に小さな卵を口にすることが原因で感染します。通常、人から人へは感染しません。

エキノコックスは主にキツネやイヌの腸の中で成虫となり、卵を産みます。この卵は動物の糞便と一緒に外界に排出されます。たとえば、キツネが山の中で糞をすると、その中に含まれる寄生虫の卵が周囲の環境を汚染することになります。

人への感染は、この卵を知らずに飲み込んでしまうことで起こります。具体的には、汚染された山菜などを十分に洗わずに食べた場合や、沢や井戸の水をそのまま飲んだ場合、また感染した動物の糞が付いた土に触れた手を十分に洗わずに口に入れてしまった場合などが考えられます。

症状

エキノコックス症は感染後、すぐには症状が現れない特徴があり、数年から十数年という長い潜伏期間を経て徐々に症状が出現します。感染する寄生虫の種類によって、症状の現れ方が異なります。

嚢胞性エキノコックス症

単包条虫による嚢胞性エキノコックス症では、主に肝臓と肺に嚢胞(内部に液体成分を含んだ袋)が形成されます。嚢胞は長期間にわたり徐々に大きくなり、それに伴いさまざまな症状を引き起こします。肝臓に寄生した場合は、徐々に腹痛が現れ、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。肺に寄生した場合は、胸の痛みや息切れ、持続的な咳などの呼吸器症状がみられます。また、全身症状として、食欲が落ちて体重が減少したり、体がだるくなったりすることもあります。

多包性エキノコックス症

日本での感染の大部分を占めるのは多包条虫が原因となる多包性エキノコックス症です。主に肝臓に寄生して徐々に組織を破壊していきます。初期の段階ではほとんど症状がないため、気付かないうちに病気が進行することが問題になります。症状が現れ始めると、右上腹部の痛みや違和感、肝臓の腫大、黄疸、全身の疲労感などがみられるようになります。さらに進行すると寄生虫は肝臓からほかの臓器(脾臓(ひぞう)、肺、脳など)にも広がっていく可能性があります。

検査・診断

エキノコックス症の検査では、画像検査、血液検査などが行われます。感染初期は無症状で進行することが多いため、特に発生地域では定期的な検査が推奨されています。

画像検査では超音波検査を行い、体表から超音波を当てることで肝臓内部の状態を観察し、嚢胞や病変の有無を確認します。より詳細な診断のためにCT検査やMRI検査も実施され、これらの検査では病変の広がりや周囲組織への影響を把握することができます。

また、血液検査では免疫血清学的検査(ELISA 法、Western Blot 法)が行われ、感染の可能性を判断します。場合によっては、ほかの病気との鑑別のために、病変部位の組織を採取する生検が実施されることもあります。

治療

エキノコックス症の治療方法は、感染している寄生虫の種類によって異なります。

嚢胞性エキノコックス症では、外科的手術による嚢胞の切除、PAIR法と呼ばれる嚢胞内の液体を吸引してエタノールを注入する治療、そして駆虫薬アルベンダゾールによる薬物療法が行われます。

一方、日本で多くみられる多包性エキノコックス症では、外科的手術による病巣の完全切除が唯一の根治療法となります。しかし、発見時にはすでに病気が進行していることが多く、完全な切除が難しい場合があります。その場合は駆虫薬による治療が行われますが、効果は患者によってばらつきがあります。

そのため、早期発見・早期治療が極めて重要です。特に多包性エキノコックス症は進行性の病気であり、治療が遅れると肝臓全体に広がり、さらにはほかの臓器にも転移する可能性があります。特に北海道などの発生地域では、定期的な検診を受けることで、治療可能な早期段階での発見を目指すことが推奨されています。

予防

エキノコックス症の予防は、寄生虫の卵を口にしないことです。野外活動後は必ず手を石けんでよく洗い、山菜を採取した場合は入念に洗浄したうえで、加熱調理することが推奨されます。また、沢や川の水は絶対に直接飲まず、必ず浄水や煮沸したものを使用します。

野生動物、特にキツネとの接触は避けることが大切です。感染源となるキツネやイヌは、エキノコックスに感染した野ネズミを捕食することでエキノコックスに感染します。そのため、ペットのイヌも野ネズミを捕食する機会がないよう、放し飼いは控えめにし、適切に管理することが大切です。

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