しゃるこー・まりー・とぅーすびょう

シャルコー・マリー・トゥース病

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

シャルコー・マリー・トゥース病とは、主に遺伝子異常による末梢神経疾患の総称で、1886年にこの病気をはじめて診断した3人の医師にちなんで名付けられています。世界的には2,500人に約1人、日本においては1万人に約1人の割合で発症するといわれています。人種にかかわらず、世界中に250万人を超える患者さんがいると推定されています。

末梢神経には、筋肉を動かす運動神経と、温痛覚や触覚などを司る感覚神経があります。これらが進行性に障害されるために、感覚が鈍くなったり筋力が低下したりという症状が現れます。若年期に発症することが一般的ですが、どの年齢の方でも発症する可能性があります。臨床的な症状は似ているものの、電気生理学的検査所見に基づいて脱髄型、軸索型、中間型に大別されます。

原因

神経細胞は、脳や脊髄からの刺激を伝える軸索と、それを節状に覆って刺激をすばやく伝える助けをする髄鞘から構成されています。シャルコー・マリー・トゥース病では、この軸索と髄鞘の構造や機能に関連したタンパクをつくる遺伝子に異常がおこるために病気が引き起こされると考えられています。

これまでに、発症に関わるとされる遺伝子異常が数十個同定されています。なかでも、PMP22遺伝子の重複はもっとも頻度が高い異常で、脱髄型に分類される患者さんの約60~70%(Merritt’s Neurologyに基づく)で認められると報告されています。しかし、このような遺伝子の異常がどのようにして神経細胞の障害を引き起こすのか、その詳細なメカニズムについては2017年時点も研究が続けられています。

また、原因となる遺伝子異常によって症状やその程度が異なることがあります。同じ遺伝子異常であっても、症状が異なる場合もあります。遺伝性とはいえ、原因となる遺伝子によって常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X染色体劣性遺伝など遺伝様式はさまざまなので、必ずしも子どもに遺伝するわけではありません。

症状

シャルコー・マリー・トゥース病では、末梢神経が進行性に障害されるため、多くの場合は足をはじめとし、徐々に手や腕へと症状がひろがっていきます。しかし、症状の程度は個人差が大きく、同じ遺伝子異常を原因とする家族内であっても異なる経過を示すことはめずらしくありません。

典型的な初期症状としては、バランス感覚の低下、足の筋力低下や易疲労感、巧緻性 (手先の器用さ) の低下などが挙げられます。多くの患者さんで、凹足や扁平足、槌状趾といった足の変形が伴います。また足の筋力が低下することから垂れ足となってつまずきやすくなったり、足がひっかからないように大腿を高くあげ、つま先を垂れて歩く「鶏歩」という特徴的な歩き方をするようになったりします。その他に、触覚や温痛覚といった感覚の低下が認められることがあります。一部の患者さんでは、聴力や視力に影響がおよぶこともあります。

検査・診断

問診や神経学的診察でシャルコー・マリー・トゥース病が疑われた場合には、神経伝導検査が実施されます。神経伝導検査では、筋肉上に電極を装着し、末梢神経に電気刺激を加えます。この刺激で得られた反応の速さや波形を測定し、末梢神経の機能を調べます。

たとえば、脱髄型のシャルコー・マリー・トゥース病では、神経細胞の軸索を包む髄鞘が障害される (脱髄) ため、神経伝導速度が低下します。一方、軸索型の場合には、神経伝導速度は維持されているものの、活動電位が低下するため、観察される波形の振幅が小さくなります。また、神経伝導検査に加え、必要に応じて針筋電図検査や神経超音波検査、神経生検が行われます。

シャルコー・マリー・トゥース病は原因となる遺伝子が複数同定されています。そのため、神経伝導検査などで末梢神経の機能に異常が認められた場合には、遺伝子検査を行います。もっとも頻度の高いPMP22遺伝子の異常に関しては、FISH法にて調べることが可能です。その他の遺伝子異常の検索にあたっては大学の研究室などの専門施設での解析が必要になります。

治療

現在のところ、シャルコー・マリー・トゥース病を完治させる治療法は見つかっていません。これまでにもさまざまな薬剤が検討され、なかでもアスコルビン酸は国内外で臨床試験が行われましたが、残念ながら現段階では患者さんにおける有効性は証明されていません。今後、投与期間や投与量も含め、さらなる検討が必要とされています。この他、神経栄養因子、クルクミンなどについても、日々研究が続けられています。

2017年現在実施されている治療としては、患者さんの症状に応じてリハビリテーションが取り入れられています。適度な運動療法を行うことで、筋力維持に役立ち、筋力の低下や萎縮を遅らせることができると期待されています。また必要に応じて下肢や上肢の装具や杖を利用することで、足や指の変形防止、疼痛改善、歩行補助、巧緻性の維持などに有効な場合があります。その他に、足の変形がひどく、生活に影響が出る場合には、痛みの軽減や歩行をしやすくすることを目的に外科的手術が選択されることもあります。

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