概要
ヘイリーヘイリー病とは、遺伝子の異常が原因で発症する皮膚疾患のひとつを指します。家族内で同一の病気がみられることもあるため、家族性良性慢性天疱瘡と呼称されることもあります。
国の難病指定を受けている病気のひとつであり、主に中年期以降に発症することが多いです。腋の下や股など皮膚が擦れあう部分に生じる水ぶくれが主な症状です。根本的な治療法がないため、健康な皮膚の状態を保つための対症療法が治療の中心となります。
原因
ヘイリーヘイリー病は、ATP2C1と呼ばれる遺伝子に異常が生じることが原因で発症します。この遺伝子は、細胞内のカルシウムやマグネシウムといった電解質を一定濃度に保つために重要な役割を担っており、異常が生じると電解質のバランスが崩れて細胞同士がうまく結合できずに、はがれやすくなります。
ヘイリーヘイリー病で見られる遺伝子異常は、家族性に見られることもあります。この場合には常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式を取り、親御さんが病気を有すると理論的に50%の確率でお子さんも病気を発症します。
一方で、こうした家族内の病歴とは関連なく、突然変異的に発症するケースもあります。
症状
ヘイリーヘイリー病では、中年期以降に皮膚に水ぶくれが生じます。水ぶくれに随伴して、やけどのような感覚も感じることがあります。
皮膚症状の変化は、腋の下や股、乳房や肛門周辺など、皮膚同士が擦れ合う場所で生じやすいです。
また、ヘイリーヘイリー病で生じた皮膚病変(皮膚の変化)ではバリア機能が低下しているため、細菌感染が生じやすくなります。そのため、膿や悪臭などが生じることもあります。
検査・診断
ヘイリーヘイリー病は、家族歴や皮膚の変化などをもとにして病気の存在が疑われます。皮膚に生じた変化をより詳細に評価するために、病変が生じた皮膚の一部を採取して、顕微鏡で観察する病理検査が行われることがあります。
また、ヘイリーヘイリー病はATP2C1遺伝子の異常をもとにして生じる病気であるため、この遺伝子異常を調べるための遺伝子検査も検討されます。
治療
ヘイリーヘイリー病に対しての根本的な治療方法は確立されていません。そのため、基本的には生じている症状に対しての対症療法が中心となります。
たとえば、皮膚が擦れることで症状が悪化するため、それを軽減させるような対処方法が大切です。具体的には、身体を洗うときには無理に擦らず石けんの泡で洗う、肌着はこすれにくく、風通しのよいものを選ぶなどです。
また、皮膚のびらん(ただれ)や水ぶくれ、感染症の併発などがみられる場合には、ステロイド軟膏や抗生物質の使用などを考慮します。
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