かぞくせいりょうせいまんせいてんぽうそう

家族性良性慢性天疱瘡

別名
ヘイリー・ヘイリー病
最終更新日
2020年09月28日
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2020/09/28
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

家族性良性慢性天疱瘡とは、成人以降になって(わき)の下・首・足の付け根・肛門の周りなど皮膚の摩擦が起こりやすい部位に水ぶくれや赤い発疹が生じる病気です。別名“ヘイリー・ヘイリー病”とも呼ばれています。特定の遺伝子の変異によって引き起こされ、親から遺伝することが分かっています。

家族性良性慢性天疱瘡は、発症すると水ぶくれや発疹などの症状が現れますが、いったんよくなっても再発を繰り返すのが特徴です。またかゆみを伴うため、かくことによって細菌感染を引き起こし、(うみ)が出て悪臭を放つようになることも少なくありません。さらに、発症した部位は皮膚症状が改善したとしても色素沈着を残して周りの皮膚よりも色が濃くなっていきます。この病気を完全に治す治療法はありませんが、進行や症状の悪化を抑える治療法はあるため、できるだけ早い段階で的確な診断が下され、治療を開始することが望まれます。

原因

家族性良性慢性天疱瘡は、“ATP2C1”と呼ばれる遺伝子の変異によって引き起こされると考えられています。このATP2C1と呼ばれる遺伝子は、皮膚の細胞内のカルシウムの出し入れに関わる構造の機能などを司る遺伝子であることは分かっていますが、なぜカルシウムの出し入れに異常が生じることで水疱や赤い発疹などが引き起こされるのか、明確には解明されていないのが現状です。

また、この遺伝子の変異は遺伝することも分かっており、“常染色体優性(顕性)遺伝”という遺伝の仕方をします。つまり、両親のうち、どちらかからこの遺伝子の変異を引き継ぐと発症するのです。一方で、家族性良性慢性天疱瘡発症者の約30%は遺伝に関係なく発症していることも分かっています。

症状

家族性良性慢性天疱瘡は遺伝性の病気であるものの、生まれてすぐに症状が現れるわけではなく、多くは中年以降に発症します。

発症すると、(わき)の下、脚の付け根、肛門の周囲、首など柔らかく、皮膚の摩擦が起こりやすい部位にかゆみを伴う水ぶくれや赤い発疹が生じるようになります。これらの病変はいったん改善しても再発を繰り返し、とくに摩擦や汗、紫外線など外的な刺激が加わると再発しやすいのが特徴です。

また、この病気は再発を繰り返すうちに水ぶくれや発疹などの症状が治りにくくなり、水ぶくれが割れて痛みを引き起こしたり、細菌感染を引き起こしたりするようになります。そして、が混ざったようなかさぶたが形成され、時間をかけて改善していきますが、元通りきれいに治ることは少なく、多くは紅~褐色の色素沈着を残します。

検査・診断

家族性良性慢性天疱瘡は、遺伝によって発症するケースが多いため、同じ家系内の病歴や症状、再発の有無などから容易に診断を下すことが可能です。

しかし、確定診断のためには、病変部の皮膚組織を採取して顕微鏡で詳しく調べる“病理検査”や、発症原因とされる“ATP2C1”の遺伝子変異の有無を調べる“遺伝子検査”が必要となります。

治療

家族性良性慢性天疱瘡を根本的に治す方法は、現在のところ確立されていません(2020年6月時点)。

そのため、この病気の治療は水ぶくれの痛みや細菌感染などを改善すること、進行を抑えることが目的となります。

症状が比較的軽い段階では、炎症を抑えるステロイドの塗り薬などが用いられますが、再発を繰り返して症状が強くなっているような場合にはステロイド薬や皮膚の炎症を特異的に鎮める作用を持つジアフェニルスルホンなどの内服治療が行われます。

また、そのほかにも免疫抑制剤の内服やビタミンD製剤の外用なども有効であるとの報告もありますが、確立された治療法はないのが現状です。

そのほか、水ぶくれが破れて細菌感染などを起こしているときには、抗菌薬の投与が行われます。

予防

家族性良性慢性天疱瘡は遺伝性の病気であるため、発症を予防することはできません。

しかし、この病気は再発を繰り返し、徐々に悪化していくのが特徴です。再発は皮膚の摩擦、汗、紫外線、感染などの外的な刺激が誘因となることが分かっていますので、発症した場合はできるだけこれらの原因を避けるよう日常生活の中で注意していくことが大切です。特に、夏場は冬よりも再発や悪化が生じやすいため、より徹底した対策と注意が必要です。

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