概要
中毒性視神経症とは、薬物の影響によって視神経(目に入った情報を脳に伝える神経)にダメージが生じる病気の総称です。原因となる薬物は、抗結核薬、一部の抗菌薬や抗がん薬、抗不整脈薬など病気の治療に使われる薬のほか、シンナーや農薬なども挙げられます。
中毒性視神経症を発症すると、両目の視野の中心部分が見えにくくなる“中心暗点”と呼ばれる症状が起こり、色の見え方の異常などを伴うこともあります。
一般的には原因となる薬物の使用を中止することで症状は改善します。しかし、中毒性視神経症は症状が緩やかに進行するため発症に気付かないことがあり、薬物の中止が遅れると後遺症として視力障害が残るケースもあります。
原因
何らかの薬物が原因となって視神経にダメージが生じます。中毒性視神経症の原因となる薬物には、抗結核薬のエタンブトール、抗菌薬のクロラムフェニコール、抗がん薬のビンクリスチンや抗エストロゲン薬のタモキシフェン、抗不整脈薬のアミオダロンなどが挙げられます。
また、病気の治療で使用される薬以外にもシンナーなどの有機溶剤や有機リン系の農薬、メタノール、エチレングリコール、鉛なども中毒性視神経症を引き起こすことが知られています。
症状
中毒性視神経症では、目の中に入った情報を脳に伝えるはたらきを持つ視神経にダメージが生じることで視力低下などが起こります。両目の視野の中心部分が見えにくくなる中心暗転がみられることが多いとされており、色の見え方の異常や両目の外側が見えにくくなるといった視覚の異常が生じることもあります。
中毒性視神経症は緩やかに進行するため、発症に気付かず適切な対処が遅れることで後遺症として視力障害が残るケースも少なくありません。また、薬物の中でもメタノールは失明の原因になりやすいことが知られています。
検査・診断
中毒性視神経症の診断は、ほかの病気の治療歴や投薬歴などを確認することが重要です。具体的には以下のような検査が行われます。
眼底検査
目の奥の状態を詳しく観察する検査です。中毒性視神経症が進行すると視神経の萎縮がみられます。また、眼底検査ではほかの目の病気との鑑別を行うことも可能です。
視力検査、視野検査
中毒性視神経症は視力や視野の異常を引き起こすため、症状の状態を評価するために視力検査や視野検査が行われます。
中心フリッカー試験
視神経の機能を評価する検査の1つです。
中心フリッカー試験は、片目ずつ点滅するランプの光を見て視神経のはたらきを確認する検査です。中毒性視神経症では中心フリッカー値(点滅するランプの光に対する感度)が低下することが知られています。
視覚誘発電位検査
白黒に点滅するモニターを見て、その情報が脳に届くまでの経路に異常がないかを調べる検査です。
治療
原因となっている薬物の使用を中止します。また、ビタミン製剤などが使用されることもあります。
中毒性視神経症は、基本的に原因薬物の使用をやめることで症状は改善していきます。しかし、発症に気付かず薬物の中止が遅れると視神経に強いダメージが生じて視力が改善しないこともあります。
予防
中毒性視神経症はさまざまな薬物によって引き起こされる病気です。発症を予防するには原因となる薬物の使用を控えることが大切ですが、結核やがんなど、ほかの病気の治療で使用せざるを得ない場合もあります。
適切な対処が遅れると視力障害が改善しないこともあるため、薬物を使用中にものの見え方の異常を自覚した場合は、できるだけ早く医師に相談しましょう。
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