にゅうぼうさいけん

乳房再建

種類

乳房再建は、大きく自家組織(自身の皮膚、皮下脂肪や筋肉)による再建か、インプラント(人工物)による再建かに分けられます。

自家組織による再建

自家組織を使用する乳房再建の場合は、自身のお腹や背中、太ももなどの皮膚や皮下脂肪、筋肉を切離して移植します。お腹の皮膚や皮下脂肪、筋肉を移植する“腹直筋皮弁法”、お腹の皮膚や皮下脂肪を移植する“穿通枝皮弁法(遊離下腹部皮弁法)”、背中の皮膚や皮下脂肪、筋肉を移植する“広背筋皮弁法”、太ももの皮膚や皮下脂肪を移植する“遊離大腿皮弁法(ゆうりだいたいひべんほう)”が挙げられます。

また、自家組織による再建を行う前に、“エキスパンダー”と呼ばれる組織拡張器を留置することもあります。エキスパンダーを乳房切除術後の皮下や大胸筋下に挿入し、生理食塩水を注入することで、皮膚や皮下組織、大胸筋を徐々に引き伸ばしていきます。十分に組織が引き延ばされた後、エキスパンダーを取り除き、皮下(大胸筋上)に皮弁*を移植して再建します。この場合、乳房切除術以外に、再建完了までに計2回の手術が行われます。エキスパンダーの種類によっては、使用中にMRI検査を受けることができないなどの制限が生じます。

自家組織による乳房再建は、自身の組織を使用するため、インプラントと比較して柔らかく自然な感触や温かさを得られるとされています。また、形状の面で柔軟な再建が可能です。一方、患者の体への負担が大きくなる傾向があり、入院日数も長くなります。また、腹直筋皮弁法は妊娠や出産を希望する方には向いていないなどの特徴もあります。

*皮弁:乳房再建では、自身のお腹や背中、太ももなどから切離した、皮膚や皮下脂肪、筋肉などの組織を指す。

インプラントによる再建

インプラントを使用する乳房再建の場合は、エキスパンダーを使用して乳房の皮膚と皮下脂肪、大胸筋を十分に引き伸ばしたうえで、シリコン製のインプラントを大胸筋下に挿入することが一般的です。そのため、再建完了までに手術は2回行われます。患者の状態によっては、エキスパンダーを使用せずに1回の手術でインプラントを挿入する場合もあります。

エキスパンダーの種類によっては、使用中にMRI検査を受けることができないなどの制限が生じます。インプラントに交換した後は、MRI検査を受けることに問題はありません。

挿入するインプラントにも種類があり、表面の性状、全体の形状に違いがあります。

表面の性状では、ざらざらとした凹凸の程度が強い“テクスチャードタイプ”と、凹凸のない“スムーズタイプ”に分けられます。テクスチャードタイプでは、表面の凹凸により周囲の組織と接着し回転などの動きを防ぐことができます。一方、この凹凸の程度が強いテクスチャードタイプのインプラントは、BIA-ALCL(乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)の原因と指摘されたことがあり、現在は使用できない状況となっています。BIA-ALCLについては発症例がごくまれに報告されています。

全体の形状の違いとしては、お椀のような丸形の“ラウンドタイプ”と、しずくのような形の“アナトミカルタイプ”に分けられます。

インプラントを使用した乳房再建は、自家組織による再建に比べて体への負担が少なく、手術時間や入院日数が短いという利点があります。その一方、感染を合併し、そのコントロールが難しい場合は、インプラント抜去が必要となることがあります。

日本では、インプラント再建後10年以上経過した症例を集めて分析した結果が、これから明らかになるところです。インプラントの破損や、再建した側の乳房と切除していない側の乳房の左右差により、将来的なインプラント交換が必要になる可能性もあります。そのため、再建後は定期的なフォローアップ(2年に1度は超音波検査やMRI検査による画像評価)で、インプラントの状態やBIA-ALCLが発生していないかの確認を行う必要があります。

そのほかの乳房再建、乳頭乳輪の再建

自家脂肪注入

自家組織やインプラントを用いる乳房再建のほかに、“自家脂肪注入”と呼ばれる方法も行われています。自身の体から吸引した脂肪を乳房に注入する方法で、小さめの乳房の再建や、自家組織やインプラントと組み合わせた再建などとして行われることがあります。体への負担が少ない方法といわれていますが、保険適用外の方法であり実施できる施設も限られています。

乳頭乳輪の再建

乳頭や乳輪の再建も行うことができます。切除していない側の乳頭や乳輪の一部を使用する方法や、再建した乳房の皮膚を立ち上げて乳頭をつくる方法、太ももの皮膚を移植して乳輪をつくる方法などがあります。

医療アートメイク(タトゥー)により乳輪を着色する方法もありますが、現在は保険適用外であり、次第に色が薄くなるため追加の着色など修正が必要となることもあるため、注意が必要です。そのほか、必要時に装着できる、人工の乳頭乳輪も利用できます。

最終更新日:
2025年06月30日
Icon close
2025/06/30
掲載しました。

「乳房再建」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

乳房再建

Icon unfold more