概要
仙腸関節障害とは、骨盤を構成する関節である仙腸関節が何らかの原因で障害され、腰痛を引き起こす状態をいいます。仙腸関節とは背骨の下にある“仙骨”と仙骨の左右に広がっている“腸骨”の間にある関節を指し、足と胴体をつないで上半身を支え、地面からの衝撃から体を守る役割を果たしています。通常、仙腸関節は靱帯でしっかりと固定されていますが、何らかの理由で緩んだり固まってしまったりすると仙腸関節障害を引き起こします。
仙腸関節障害はスポーツを行う人をはじめ、中腰での動作がある仕事をされる方、出産経験のある方などに多く発症します。特に10~50歳代の女性に多く発症するといわれていますが、年齢や性別を問わず発症する可能性があります。複数の原因が合併して腰痛を引き起こすこともあるため、診断がつきにくい傾向にあります。
原因
仙腸関節障害は、スポーツなどで足を前後に開いたり腰を大きくひねったりと骨盤に左右非対称の力が加わることで発症しやすいと考えられています。このほか、鞄や荷物をいつも同じ側の肩で持つ癖や足を組んで座る癖があるなど、日頃から骨盤が左右非対称になりやすい生活をしている方にも多くみられます。また、腰椎や股関節に病気がある方も発症しやすいといわれています。
仙腸関節障害が女性に多く発症する理由の1つに出産が考えられます。出産では、仙腸関節周辺の靱帯が緩むことで骨盤が広がります。この緩んだ靱帯が出産後も戻らずそのままになってしまい、腰痛や鼠径部痛を引き起こすケースがあると考えられています。
症状
仙腸関節障害は腰痛症状を引き起こすことが一般的ですが、腰だけでなくお尻や足の付け根、太ももにも痛みが広がる場合があり、以下のような症状がみられる傾向にあります。
- 腰が痛くなってきて長く椅子に座れない
- 上向きで寝ることや、痛みがある側を下にして寝ることができない
- 体を動かし始めるときに痛む(動かしているうちに痛みは治まる)
- 中腰になれない
仙腸関節障害は腰椎椎間板ヘルニアなどの症状とよく似ているため、正しい診断や治療を受けられないケースもあります。仙腸関節障害の多くは原因と考えられるスポーツなどを一時休止し、体を休めることで改善しますが、スポーツなどの再開により再発することがあるため特に注意が必要です。
検査・診断
仙腸関節障害は、X線検査やMRI検査などの画像検査では明確な異常はみられません。そのため、患者自身にもっとも痛い部分を指してもらう(ワンフィンガーテスト)ほか、医師が仙腸関節を手で押すなどして痛みが生じるかを確認(疼痛誘発テスト)することで診断されることが一般的です。
片足立ちした際、腰に痛みが生じるかどうかも確認します。そのほか仙腸関節後方の靱帯部分もしくはワンフィンガーテストで指さされた部分にブロック注射(局所麻酔薬)を行い、痛みが和らぐようであれば仙腸関節障害の可能性が高まります。
治療
仙腸関節障害の治療では一般的に手術は行わず、安静をはじめとする保存療法で症状の改善を図ります。
まずはスポーツなど仙腸関節障害の原因と考えられる活動をいったん中止し、安静にしましょう。痛みがある場合は薬物療法として痛み止めを服用するほか、仙腸関節用の骨盤ベルトやコルセットなどで骨盤を締め、仙腸関節を安定させる場合もあります。また、リハビリテーションとしては股関節などをスムーズに動かすためのストレッチや、仙腸関節を安定させる筋肉トレーニング(体幹深部筋トレーニング)が指導されます。
仙腸関節後方靱帯や仙腸関節内に局所麻酔薬を注射する仙腸関節ブロック注射を行うこともあります。
手術治療が行われる例
保存療法を行っても症状が改善せず、歩行障害が持続する場合には手術が検討されることもあります。手術では仙腸関節にボルトを入れて関節を固定する方法などが用いられます。
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