概要
切創とは、いわゆる“切り傷”のことです。
皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織の大きく3層で成り立ち、その下には筋肉や骨が位置しています。医学的には、物理的な損傷を受ける範囲が表皮や真皮にとどまるものを“傷”、皮下組織や筋肉まで到達するものを“創”といいます。
切創は、刃物やガラス片などの鋭利なもので体の一部を切ることで生じ、多量に出血することがあります。
また、手足の切創では、比較的浅い部分を走行する血管や神経、腱などの損傷を伴うこともあります。このほか、顔面の切創では、顔面神経、涙の排泄路である“涙小管”、唾液を分泌する“唾液管”を損傷するケースもあり、そのような場合は外科手術を行います。
原因
切創は、刃物やガラス片、金属などの鋭利なもので体の一部を切ることで生じます。
また、原因となる受傷の状況などにより傷の範囲や深さは異なり、皮膚の一番上の表皮にとどまるものから真皮にまで到達するもの、血管や神経の損傷を伴うものまでさまざまあります。
症状
表皮のみを損傷した場合は、出血しても患部を圧迫することで止血できることがあります。ただし、汚れたものと接触した場合は患部から細菌などが侵入して感染を起こす恐れがあります。
傷が真皮にまで到達している場合には、傷口が開いて白い真皮部分が露出することがあります。さらに下の皮下組織まで損傷が及ぶと傷口から皮下脂肪が見え、傷口が大きく開くこともあります。
感染を伴う場合には、受傷から2〜3日経過後に傷口が化膿するケースもあります。表皮までの傷であれば傷あとを残さず治癒が期待できますが、傷が真皮にまで到達している場合には、治癒した後にも傷あとが残ることがあります。
このほか、部位によっては皮膚の切り傷に加えて神経や血管、腱、筋肉、靱帯の損傷を伴うこともあります。神経や血管、腱などの損傷を伴うと、切り傷以外に知覚麻痺や指の曲げ伸ばしの異常、指先の色が白っぽくなるといった所見を伴います。
検査・診断
切創を負った場合は、必要に応じてX線やCT、MRI、超音波などの画像検査を行って傷口に異物がないか、また神経や血管の損傷がないかを確認します。
治療
切創によって出血が多い場合は、患部を清潔なガーゼなどで圧迫・保護して医療機関を受診する必要があります。
切創は壊死性筋膜炎を引き起こす可能性があるため、傷口を十分洗い流すことが重要です。その後は、必要に応じて消毒も行います。
医療機関では、傷の大きさや深さに応じて以下のような治療が行われます。
表皮までの傷
傷が表皮にとどまる場合はしばらく圧迫することで止血できるため、多くの場合、傷口を縫い合わせる処置(縫合)は必要ありません。屋内で受傷し、未使用の刃物や紙によるものなど傷口が清潔である場合には、医療用のテープを用いて傷口を寄せるようにして固定します。
一方、細菌感染の可能性がある場合は傷口を生理食塩水などで洗い、抗菌薬の軟膏を使用します。動物に引っかかれるなどさらに傷口の感染のリスクが高い場合には、抗菌薬の内服を行うこともあります。
真皮まで到達している傷
傷が真皮にまで到達している場合は治癒した後も傷あとが残る恐れがあるため、縫合が行われることがあります。子どもの顔面などに生じた切創で傷口が比較的清潔な場合は、傷あとに配慮してテープ固定などの処置が検討されます。
感染の可能性がある場合は抗菌薬の外用薬や内服薬が用いられます。血管や神経、腱などの損傷を伴う場合は、麻酔を使って損傷した組織を縫合する処置が行われます。
また、切り傷から破傷風に感染する可能性があるため、感染リスクが高いと判断された場合は破傷風トキソイドの接種が推奨されます。1967年以前に生まれた方は、子どものころに破傷風ワクチン(破傷風トキソイド)を定期接種していないため、基礎免疫がありません。加えて、最後に破傷風トキソイドを接種してから5年以上経過している方も、対応が必要といわれています。
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