概要
刺創とはいわゆる“刺し傷”のことであり、刃物、アイスピック、針、箸、鉛筆など先端が鋭利な器具などが皮膚に突き刺さって生じる外傷を指します。傷の深さが皮膚の表層のみの場合は刺創とはいわず、傷が皮膚よりも深い部位にある皮下組織、筋肉などに達するものを刺創と呼びます。
刺さった物の形や長さ、刺さる力の強さによって傷の状態は異なりますが、傷口は小さいものの奥行きが深いのが特徴です。傷が浅い場合は軽症で済むこともありますが、突き刺さった物が血管、神経、内臓などを損傷している場合は、命に関わることも少なくありません。また、刺さった物に付着していた細菌などが体内に侵入することで重篤な感染症を起こすこともあります。治療方法は傷の状態によって異なりますが、出血が多い場合は止血や縫合などの処置が必要になります。
原因
刺創は、先端が鋭利な刃物、アイスピック、箸、釘、鉛筆などが皮膚に突き刺さることによって生じます。
先端が鋭利な物が皮膚に突き刺さる原因はさまざまですが、不意の事故や転倒などのほか、他者からの暴力や自傷などが原因となることもあります。
症状
刺創の症状は突き刺さった物の形や長さ、突き刺さった部位によって大きく異なりますが、いずれも痛みや出血を伴います。
神経や腱が切れると、知覚が鈍くなったり麻痺が生じたりすることがあります。太い血管が切れた場合は大量出血となり救命が困難になることもあるため注意が必要です。胸部や腹部など体幹に刺さった場合、以下の症状がみられた場合はすぐに救急要請をしましょう。
突き刺さったものは抜くとさらに出血することがあるため、抜かずに病院を受診しましょう。
また、刺創は傷口や刺さった器具などから体内に細菌が入り込み、重篤な感染症を引き起こすことがあります。特に錆びついた刃物などが刺さると破傷風を発症する可能性があります。
検査・診断
重症度によっても異なりますが、呼吸数、血圧、脈拍数、体温といったバイタルサインの測定のほか、出血量や神経の損傷を確認するために、運動や知覚の検査を行います。
針やナイフなどの金属製の異物が刺さった場合には、異物が体内に残っていないかを確認するためにX線検査を行います。刺さったものがX線検査で確認できない材質の場合などには、CT検査やMRI検査、超音波検査などを行います。
治療
医療機関に到着するまでの応急処置として、器具などが刺さっていない状態であれば傷口を圧迫して出血を抑えることなどが推奨されています。
傷が浅く軽症の場合は、感染症を予防するために傷を十分に洗浄してから、抗菌薬の内服や点滴、破傷風トキソイドの接種などの処置を行います。破傷風トキソイドの接種は、5年以内にワクチン等で接種していない場合などに行われます。
一方、傷が深く、血管、神経、腱、内臓などにダメージが及んでいる場合には、修復するための手術が必要となります。また、重症で出血量が多い場合には、状態に応じて輸血を実施する必要があります。軽症の場合と同様、感染症の予防も行われます。
刺創が生じたときは、ごく小さな傷でなければ医療機関を受診し、重症と思われる場合は救急要請をしましょう。
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