概要
化学熱傷とは、刺激性の高い化学物質が皮膚や粘膜に直接触れることで、組織に損傷が生じることをいいます。化学損傷と呼称されることもあります。
刺激性の高い化学物質の例としては、強い酸性物質やアルカリ性物質、油になじみやすい(脂溶性)有機化合物といったものが挙げられます。
これらの化学物質により、食道や胃、消化管の粘膜を損傷した場合には、穴があく(穿孔)こともあります。
原因
化学熱傷が生じる場面とは、化学工場や実験室などで爆発や容器の破損が起こったとき、もしくは自傷他害行為などが行われたときなどです。
体に刺激性の高い化学物質がかかってしまうと、細胞膜と組織は強いダメージを受けてしまいます。体にとって外からのバリアーとなっている皮膚や粘膜が損傷を受けると、感染や脱水などのリスクが高まります。また、気道や消化管の内側が細くなって機能が低下したり、視力や味覚、嗅覚、触覚が低下したりすることがあります。
症状
化学物質が触れた皮膚や粘膜に、びらんや壊死を生じます。化学物質との接触が長期間続くと、さらに組織の深いところにまで損傷が及びます。
以下は部位ごとの症状の一例です。
皮膚
火炎や熱湯に触れたときと同じようにやけど(熱傷)を生じます。皮膚のどの深さにまで損傷が及んだか、どのくらいの面積が損傷したかによって重症度が変わります。
眼球
いわゆる「白目」と呼ばれる結膜に壊死が起こったり、視力にかかわる角膜の欠損したりしす。失明に至ることもあります。
消化管
粘膜のただれ(びらん)や穿孔、瘢痕狭窄が起こり、疼痛や嚥下困難などの症状が生じます。
気道
揮発性の化学物質を吸い込むことにより、気道粘膜の熱傷を生じ、咳や呼吸困難などの症状が生じます。
塩酸や硫酸などの酸性物質が危険であることはよく知られています。しかし、アルカリ性の物質は組織へ浸透しやすいため、酸性物質よりも重症化しやすいとされています。
検査・診断
問診では、原因となった化学物質の種類や受傷のきっかけ、現場での除染処置の有無などの詳しい情報を伝えることが大切です。
アルカリ性の化学物質による熱傷の場合、組織に浸透し損傷が持続するため、深達度(傷の深さ)の評価が慎重に行われます。
広範囲の化学熱傷の場合、通常のやけどと同様、血液ガス検査や電解質、尿量のモニタリングが行われます。
消化管粘膜の損傷が疑われる場合には、消化管内視鏡検査により、粘膜損傷があるかどうか調べます。
気道熱傷が疑われる場合には、気管支ファイバーによる観察が必要とされます。粘膜の浮腫が強く気道が狭くなっている場合には、生命に関わる危険な状態に陥ることがあります。
また、胸部X線写真やCT検査により肺の病変がないか調べます。
治療
治療として最も優先されることは原因物質の除去です。化学熱傷の多くは酸やアルカリによるもののため、応急処置として皮膚や目など損傷した部位をただちに流水でよく洗浄し、汚染した衣類を除去します。十分な洗浄を行なった後、軟膏薬とガーゼなどの保護材により被覆します。判断に迷った場合には、医療機関に問い合わせるようにしましょう。
広範囲熱傷や気道熱傷の場合、入院となり、熱傷範囲や尿量を参考にして輸液管理が行われます。気道狭窄が起こっている場合には気管挿管、人工呼吸管理が行われます。
化学熱傷が生じたときの注意
酸やアルカリの物質により損傷してしまった時に、反対の性質の物質をかけて「中和」させると、中和により熱が発生する危険や、中和剤による新たに化学熱傷を発生させる可能性があり非常に危険です。ただし、フッ化水素に対するグルコン酸カルシウムやフェノールに対するエチルアルコールのように、化学熱傷に対する中和剤が有効な特殊例もあります。
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