概要
咽頭結膜熱とは、アデノウイルス3型、4型、7型などに感染することによって、38℃以上の高熱、のどの痛み、結膜炎といった症状を引き起こす病気のことです。保育所や幼稚園、小学校など集団生活をする子どもの間で夏場に流行することが多く、特にプールでの接触などによって感染が広まることが多いため“プール熱”とも呼ばれています。
現在のところ、咽頭結膜熱の原因となるアデノウイルスに対する抗ウイルス薬は開発されていないため、治療は症状を改善するための“対症療法”が主体となります。咽頭結膜熱は3~5日ほどで自然によくなり、後遺症を残すことはほとんどありませんが、新生児が感染すると重症化するとの報告もあります。
原因
咽頭結膜熱は、約70種類発見されているアデノウイルスのうち、3型、4型、7型などに感染することによって発症します。
アデノウイルスは主に飛沫感染と接触感染を引き起こすことが分かっています。また、夏場のプールで、ウイルスに汚染された水が目に入ることにより感染するケースもあります。
症状
咽頭結膜熱は、原因となるアデノウイルスに感染してから5~7日ほどの潜伏期間を経て、38~39℃の発熱とのどの痛み、結膜炎を発症するのが特徴です。
通常、結膜炎は感染が生じた片方の目のみに発症しますが、1~2日ほどでもう片方の目にもウイルスがうつって症状が現れます。この病気は結膜炎による目の充血、目の痛み、涙、まぶしさ、眼脂(目ヤニ)などの症状が強く現れ、瞼のむくみなどもひどくなりますが、3~5日ほどで自然に回復していきます。
そのほか、症状がある期間には頭痛、食欲不振、だるさ、首のリンパ節の腫れと痛みなどの症状を伴うことも少なくありません。
通常は目の機能などに後遺症を残すこともなく、何らかの合併症を併発することはありませんが、新生児は重症化しやすいとされています。
検査・診断
咽頭結膜熱の確定診断には、鼻水や唾液、痰、便などにアデノウイルスが含まれているか否かを調べる必要があります。現在では、これらの検体にウイルスが含まれているか簡易的に調べることができる検査キットがあります。また、遺伝子検査(PCR検査など)を行えば、アデノウイルスのどのタイプが含まれているのか調べることも可能ですが、症状への対応は変わらないため、病院やクリニックでは行っておりません。そのほかにも、咽頭結膜熱は高熱など強い症状が現れるため、炎症や脱水の程度などを調べるために血液検査を行うことがあります。
一方で、典型的な症状が現れるため、年齢や生活歴などから特別な検査をせずに診断が下されることも少なくありません。
治療
アデノウイルスに対する抗ウイルス薬は開発されていないのが現状です。そのため、咽頭結膜熱を根本的に治す方法は現在のところありません。治療は、発熱に対する解熱剤、のどの痛みに対する鎮痛剤、目の渇きに対する目薬などそれぞれの症状を改善するための対症療法が主体となります。
咽頭結膜熱は重症化することは少ないですが、乳幼児などではのどの痛みが強いために十分な哺乳ができずに脱水に至るケースもあります。そのような場合には点滴治療が必要になることも少なくありません。
予防
咽頭結膜熱の原因となるアデノウイルスは、飛沫感染や接触感染によって感染が拡がります。飛沫感染とは、ウイルスが含まれる感染者の咳やくしゃみのしぶきを近くの人が吸い込んでしまうことによって感染する経路のことです。一方、接触感染とは、感染者が排泄したウイルスが付着したものに触れ、その手で鼻や口を触ることによって感染する経路のことです。
飛沫感染を防ぐには、感染者との密接な接触を避けてマスクを着用することが大切です。一方、接触感染は手洗いや手指消毒を徹底すること、タオルや寝具、食器の共用を避けること、ウイルスが付着している可能性がある部位を消毒することが大切です。消毒にはアルコールが効きにくいため、漂白剤などに含まれる次亜塩素酸を使用することがすすめられます。なお、プールでの感染を予防するには適正な塩素消毒をキープすることが必要です。
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