概要
痘瘡とは、天然痘ウイルスによる感染症で、天然痘とも呼ばれます。天然痘ウイルスは非常に感染力が強く、かつては世界中で多くの死者を出していました。
しかし、1980年に世界保健機関(WHO)によって痘瘡根絶宣言が発表されました。そのため、現在では研究用に保管されているウイルスが存在するのみで、一般の人が感染することは基本的にありません。
原因
天然痘ウイルスに感染することで発症します。感染すると口の中や咽頭に皮疹ができ、この皮疹から天然痘ウイルスが排出され、唾液飛沫となって体外へ出ていきます。
この飛沫を他者が吸い込むことで感染しますが、ウイルスが付着した衣類やリネン類から舞い上がったウイルスを吸い込むことでも感染すると考えられています。
症状
天然痘ウイルスに感染してから約2週間後に、39℃以上の高熱、倦怠感、頭痛、嘔吐などの全身症状が現れ、3~4日ほど経過するといったん熱が下がり、顔や四肢を中心に強い痛みや灼熱感を伴う斑状の皮疹が現れます (水痘では皮疹が胸や腹部に多く見られるのと対照的)。皮疹は当初、斑状の丘疹(皮膚の盛り上がり)ですが、経過とともに水疱(水ぶくれ)となり、さらに膿疱(水疱の内容物が膿となる状態)を形成した後にかさぶたとなって治癒します。
皮疹が水疱になるころにいったん下がっていた熱が再び上昇するのが特徴で、治癒後に落ちたかさぶたにも強い感染力があるので注意が必要です。また、敗血症や肺炎、脳炎などを合併することがあり、それらの合併症が死因となることも少なくありません。
検査・診断
痘瘡の診断には、血液や唾液、皮疹から天然痘ウイルスを検出する必要があります。
血液や唾液などの検査材料を電子顕微鏡で観察したり、PCR法と呼ばれる方法で遺伝子検査を行ったりすることでウイルスの存在を確認します。
ただし、国内でPCR法が行える施設は限られているため、どの医療機関でも受けられる方法ではありません。
治療
痘瘡に対する特別な治療法はなく、発熱による脱水補正や疼痛管理などの対処療法が行われます。
ただし、感染してから4日以内であれば、ワクチンによって発症や重症化を防げることが分かっています。しかし、1980年にWHOが痘瘡根絶宣言を発表してから、世界でも痘瘡患者は発生しておらず、一般的に広く予防接種を行うことはなくなりました。
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