高度生殖医療(生殖補助医療)は体外受精、顕微授精、凍結胚移植の3つに大きく分かれますが、今回は顕微授精(ICSI)について田園都市レディースクリニック理事長の河村寿宏先生にお話しいただきました。
体外受精が卵子と精子の受精能力に任せた受精方法であるのに対し、顕微授精は受精までを手伝う方法といえます。具体的には、顕微鏡下で針を用いて卵子の細胞質内に精子を直接注入します。受精の方法以外の部分は、体外受精の流れと同じになります。
体外受精について詳しくはこちら
顕微授精は、体外受精でも受精しなかった場合や、医師が精液所見などから、体外受精では受精障害が予測されると判断した場合に適用されます。
具体的には重症精子減少症、精子無力症、精子奇形症、不動精子のみの症例、精巣や精巣上体から採取された精子を用いる場合などに実施されることがあります。
日本産科婦人科学会が2021年9月に出した報告によると、2019年の1年間で、顕微授精を用いた治療法は15万周期以上となっています。顕微授精のみでの治療周期が約12万4千周期、体外受精と顕微授精を同時に行った周期が約2万8千周期であり、体外受精のみで行った周期が約8万3千周期です。日本では、体外受精よりも顕微授精を受ける患者さんのほうが多くなっています。また、欧米ではさらに顕微授精の頻度が上回っています。
体外受精の場合、卵子と一緒になった精子は、自力で卵子の中に入って受精しなければいけません。そのため、精子や卵子に何らかの問題があり、受精することのできなかった患者さんは、そこで不妊治療を諦めるか、または、匿名のドナーから精子の提供を受けてAID(人工授精)という治療を受けるしかありません。
しかし、顕微授精の場合、針で卵子に精子を注入するため、正常な精子が少しでもあれば、受精卵を作ることが可能となりそのカップルの赤ちゃんを妊娠することが可能です。
また、体外受精では、受精卵ができなかったり、受精率が非常に低かったりする場合がありますが、顕微授精では精液所見が不良でも比較的安定した受精率が得られます。
このような理由から、顕微授精を受ける患者さんが増加していると思われます。また、顕微授精により高い確率で受精卵を作ることができるようになったため、結果的に患者さんの時間とコストの削減、精神的負担の軽減につながる場合も少なからずあります。
(日本産科婦人科学会より)
*split…1回の採卵で採取された卵子を、体外受精(IVF)を行う卵子と、顕微授精(ICSI)を行う卵子に分けて受精させること。
日本産科婦人科学会による2019年の全国統計では、胚移植あたりの顕微授精の妊娠率は18.7%です。
こちらの記事『不妊症の治療――体外受精胚移植(IVF-ET)』のように体外受精のリスクは全て顕微授精にもあてはまります。また、顕微授精の歴史は体外受精に比べて浅いため、次世代の妊孕性*がどうかなど、まだ不明な点も多く残っています。
*妊孕性:妊娠する力。
先天異常のリスクもありますが、先天異常は体外受精よりやや増えるという統計と、ほぼ同じという統計が混在しており、まだはっきりと分かっていません。
こちらの記事『不妊症の治療――体外受精胚移植(IVF-ET)』で述べた体外受精の費用に加えて、顕微授精費用が6万~10万円程度かかります(税別)。
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田園都市レディースクリニックHP
田園都市レディースクリニック 理事長、田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長
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