概要
心因性難聴とは、音を感じる内耳や脳の聴覚野に障害がなく、心理的な要因から引き起こされる難聴のことを指します。
具体的には、心理的なストレスが原因となり発症すると考えられており、学童期(6歳~12歳)に多くみられる傾向があります。また男子より女子に多いとされています。
難聴の自覚症状がない場合もあり、また、まれに耳鳴りやめまいなどの症状が現れることもあります。
原因
心理的なストレスを原因として発症すると考えられています。学童期のお子さんにみられることが多いです。
具体的な心理的ストレス因子としては、いじめやクラス替え、転校、進学に際してのストレスなどの学校に関連したことが多いです。
また、学校以外でも両親の離婚、塾での過度の勉強、両親の無関心などがストレスの要因となることもあります。
症状
実際に聞こえが悪くなるという自覚症状がある場合に限らず、難聴の自覚症状がないこともあります。実際、学校検診における聴覚検査の異常をもとにして初めて難聴の存在が指摘され、心因性難聴の診断に至ることも少なくありません。
また、心因性難聴では聞こえの低下といった自覚症状以外にも、耳鳴りやめまい、耳閉感などの症状が現れることもあります。そのほか、食欲不振、腹痛、頭痛、視覚障害、ふらつきなどの症状が現れることもあります。
検査・診断
心因性難聴の検査は、学校などでおこなわれる聴覚検査をきっかけにして疑われることがあります。
しかし、通常の聴力検査だけでは判断が難しいため心因性難聴が疑われる場合には、診断をおこなうために、さらに詳細な検査がおこなわれます。
具体的には、以下のような検査が挙げられます。
- 自記オージオメトリー:内耳の働きを他覚的に測定することで、ある程度の聴力が推定することができます。
- 聴性脳幹反応(ABR):音刺激による脳波を測定することで、他覚的に聴力を測定することができます。
など
治療
心因性難聴は、実際には難聴を起こすような病気がないことを本人に理解してもらうことも重要です。これにより、難聴の状況が早期に回復することが期待されます。
また、心因性難聴は、心理的な要因が関与してるため、原因と考えられる心理的ストレスを取り除くことが重要です。
具体的には、両親や兄弟なども含めた家庭環境での状況、学業や友人関係の状況なども含め生活状況を詳細に確認しつつ、原因として考えられるストレスを特定します。そのうえで、ストレスとなっている状況を改善できるように家族、学校関係者と共に働きかけます。この際、改善のための行動が本人にとって過度にストレスにならないような配慮をすることが大切です。
さらに、治療過程において再発をしたり、治癒経過に時間が掛かったりすることもあるため、本人のストレス状況を加味しつつ慎重に治療をおこなうことが大切です。
しかし、半年以上経過しても症状の改善がえられない場合には、心理カウンセラーや精神科医などに相談することも必要です。
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