概要
急性ヒ素中毒とは、毒性を持つヒ素化合物を口や気道から摂取することによって生じる急性中毒をいいます。ヒ素は天然にも広く存在し、古くは農薬や駆虫剤や防腐剤、また工業においても半導体やプリンターの生産過程で使用されてきました。
日本では、1998年7月に和歌山の祭り会場で起こった毒物カレー事件により、急性ヒ素中毒の危険性が示されることになりました。
原因
急性ヒ素中毒では、ヒ素が細胞のエネルギー産生に関わる酵素を阻害します。細胞のエネルギー産生が阻害されると細胞死を生じ、全身にさまざまな症状を起こします。
ヒ素はさまざまな化合物として存在しますが、毒性の強い代表的な化合物は三酸化ヒ素(亜ヒ酸)です。
ヒ素化合物は白色で無味・無臭で、少量でも中毒症状を起こします。
症状
急性ヒ素中毒の症状には以下のものがあります。
- 吐き気やおう吐、腹痛や下痢のような消化器系の症状
- 意識障害、けいれんや脱力といった神経系の症状
- ショック、不整脈といった循環器系の症状
この他、皮膚の発疹や肺水腫といった症状が現れることがあります。重症例では、肝臓や腎臓などの全身の臓器が障害され、適切な治療が行われない場合、循環血液量が減少して死に至ることがあります。
検査・診断
急性ヒ素中毒の検査は、生命を守るための救命処置と並行して行われます。血液検査や尿検査により、臓器障害が全身に及んでいないかどうかを確認します。また、ヒ素(亜ヒ酸)の濃度を尿、血液、毛髪などから測定します。
治療
急性ヒ素中毒の治療では、まず以下のような救命処置が行われます。
- 酸素投与、意識障害を来した場合は気管挿管、人工呼吸管理
- 輸液、ショックの場合は昇圧薬の持続静注
- 胃洗浄、活性炭の投与:摂取後1時間以内であれば医療用のチューブを鼻から胃に留置し胃内を洗います。また、薬剤の吸着を図るため活性炭を胃に注入します。
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