概要
急性腎障害とは、何らかの理由で腎臓の機能が急激に低下し、体内の水分や老廃物を排泄できなくなる病気です。
腎臓は、左右の腰部にあるソラマメ型の臓器で、それぞれ150g程度の重さがあります。臓器の機能として、体内の水分量の調整や、人間が生きるうえで必要な電解質やミネラルなどの量の調整、老廃物(尿)をつくっています。
腎不全には、数日から数週間で急激に腎臓の機能が低下する急性腎不全と、数か月から数十年の長い年月をかけて腎臓の働きがゆっくりと悪くなる慢性腎不全があります。より軽症の急性腎不全を含んだ概念として、急性腎障害という病名が用いられています。
原因
急性に腎機能が障害されるメカニズムとしては、腎前性・腎性・腎後性の3種類に分けられます。しかし3種類の病態はときに複合的に存在することもあります。また、腎前性と腎性を区別することが困難な場合も少なくはありません。
腎前性
腎臓へ流れる血液量が減少することが原因で発症します。血液が腎臓へ到着する前の状況を説明しているので、腎前性といわれます。その背景の状態は以下の通りです。
- 体液量の減少:消化管出血、外傷による出血、頻回な嘔吐・下痢、飲水量が極端に減っている状態など。
- 心機能の低下:心不全などにより、体に血液を巡らせるためのポンプとしての心臓の機能が低下をすることで、必然的に腎臓への血液量が低下することに伴います。体液量は増加していにも関わらず、有効に腎臓に供給されない状態です。近年、腎静脈圧の上昇による腎うっ血も急性腎障害の原因として注目されています。
- その他の血管の問題:重篤な細菌感染症を発症すると、体内の血管が拡張し、結果として血圧が低下することで、腎臓への血液量が低下します。
- 薬剤性:非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)や降圧剤などの作用に伴い、腎臓へ流れ込む血管を収縮させることで腎血流を低下させます。
腎性
腎臓自体の障害により発症します。腎臓の内部を構成する組織(糸球体・間質・尿細管・血管)のいずれかが障害され発症します。代表的な病気は以下の通りです。
腎後性
腎臓でつくられた尿が尿道から排泄されるまでの経路(腎臓・尿管・膀胱・尿道・男性では前立腺)のいずれかが閉塞されることで、上流に位置する腎臓の機能が低下します。以下が代表的な病態です。
症状
軽度の腎機能障害では、症状が出ないことがあります。場合にもよりますが、急性腎機能障害が発症しているサインとして、尿量の低下が認められます。
中等度以上の腎機能障害の場合には、以下の症状が現れることがあります。
- 吐き気、嘔吐
- 中枢神経症状(意識変容、認知機能低下、痙攣など)
- 血圧上昇
- 腹痛や背部痛 など
検査・診断
心身の負担が少ない検査として、最初に行われるのは、採血、尿検査、腹部超音波検査です。
採血
- 腎機機能を確認:クレアチニン(Cre)、尿素窒素(BUN)など
- 電解質を確認:ナトリウム(Na)、クロール(Cl)、カリウム(K)、カルシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(P)など
- 貧血や脱水を確認:Hb(ヘモグロビン)、Alb(アルブミン)など
- 炎症反応の確認:CRP、WBC(白血球)、血沈など
尿検査
尿試験紙法、尿生化学、尿沈渣、尿浸透圧などの検査を行い尿中タンパク質や血尿の有無を測定します。
画像検査
画像検査では、腹部超音波検査、腹部/骨盤部CT検査などを行い、腎臓の大きさを評価します。腎臓が正常~腫大しているときには急性腎障害、小さくなっている場合は慢性腎障害を考えます。また、水腎症や膀胱の拡大があれば腎後性を疑い、その原因を確認します。
腎生検
この検査は、背部から針を刺して直接腎臓から組織を取り顕微鏡で確認する検査です。心身への負担を考えると少しハードルは上がりますが、腎性の腎障害が疑われる場合には非常に有用な検査で、これにより正確な診断がつき治療方針に役立ちます。
治療
急性腎傷害が改善せず、慢性腎障害に進展する場合もありますが、慢性腎障害が不可逆的であるのに対し、基本的には急性腎障害は可逆性です。そのため、元の腎機能を回復するために原疾患に対する適切な治療が望まれます。
たとえば、
- 脱水での腎前性を疑われた場合には点滴での補液
- 薬剤性からの腎性の場合には、疑わしい薬剤の中止
- 尿路結石での腎後性の場合には、結石を取り除くことが治療となります。
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