せんもうちゅうしょう

旋毛虫症

目次

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概要

旋毛虫症とは、旋毛虫(代表的にはTrichinella spiralis)に感染することで発症する感染症です。旋毛虫は熊や馬、豚の筋肉の中に存在しており、これらの動物の肉を食品として摂取することから病気を発症します。

旋毛虫症は、世界で年間1万件の発生があると報告されています。日本での発症はまれではありますが、散発的に流行することがあります。

2016年12月には、旋毛虫に汚染された熊肉の摂取を原因とする集団発生例を茨城県でみています。本集団発生例では幸いなことに死者をみることはありませんでしたが、心不全や肺炎などから死に至ることもある疾患です。そのため、汚染が疑われる動物肉を摂取する際には加熱を十分し、感染のリスクをなくすことが重要です。
 

原因

旋毛虫症は、旋毛虫(代表的にはTrichinella spiralis)に感染することを原因として発症します。旋毛虫は熊や馬、豚の筋肉の中に存在しており、汚染された動物の肉を食品として摂取することから発症します。

豚肉の摂取はもちろんのこと、熊や馬の肉を摂取する習慣は、日本を含めた世界中の各地域でみられます。そのため、日本における発症頻度は低いとはいえ旋毛虫症をみることがあります。

旋毛虫で汚染された動物の肉などを摂取した場合、小腸の中で成虫へと成長し、消化管粘膜内に幼虫を産み落とします。さらに、幼虫は血液の流れにのって筋肉の中へと移ります。移り込みやすいのは、舌、横隔膜、目、四肢の筋肉などであり、血流感染・筋肉への感染に関連して、特徴的な症状が引き起こされることとなります。
 

症状

成虫が消化管内で幼虫を産出する時期に一致して消化管粘膜が刺激を受けることから、まず、下痢や腹痛、吐き気といった消化器症状をみることになります。
その後幼虫が筋肉へと移動することと関連して、筋肉痛や発熱、眼瞼浮腫(がんけんふしゅ)(まぶたの腫れ)、全身倦怠感(けんたいかん)、悪寒などを生じます。これらの症状は、原因食材摂取からおよそ2週間経過後に出現し、8週間ほど持続することがあります。また、影響を受けた筋肉によって症状の出現様式は異なります。

旋毛虫に感染しても無症状で経過することのほうが多いです。症状が出現しても、旋毛虫症とはわからずに自然治癒することがあります。

しかし、ときに、運動失調、けいれん、心筋炎からの心不全、呼吸困難などの重篤な症状が出現することもあります。こうした合併症により、まれではありますが亡くなられる方もいます。
 

検査・診断

旋毛虫症の診断は、動物肉の摂取歴や臨床症状をもとにして行われます。特に熊や馬、豚などの生肉を摂取した等の情報は重要です。
感染すると、人の体は旋毛虫を排除するための免疫反応を起こします。その一環として旋毛虫に対するIgGやIgMといった抗体を産生するようになるため、血液検査を通してこれら抗体を測定します。

また、筋肉の生検が行われることがあります。筋肉の一部を採取して顕微鏡で観察することで、旋毛虫の存在を形態学的に特定することになります。診断に際しては、感染源と思われる肉を検査することも重要です。

旋毛虫は寄生虫の一種であるため、血液検査で好酸球が上昇しています。さらに、筋肉の破壊を示唆するCKといった項目の上昇も血液検査で確認することができます。
 

治療

旋毛虫症では、アルベンダゾールやメベンダゾールといった治療薬を使用することで経過をみることとなります。重症例についてはステロイドが併用されることもあります。

旋毛虫は、熊や馬、豚などの食肉を冷凍した場合であっても比較的長い間生きることができるため、しっかりと加熱処理をした上で摂取することが重要です。筋肉内幼虫は低温にかなり強く、-30℃で4か月保存した熊肉の摂取での発症事例が報告されています。

熊や馬、豚以外にもキツネ、タヌキ、アライグマなどに旋毛虫が潜む可能性も指摘されています。多くの種類の肉が食用として流通するようになってきていますが、食用として出されていても汚染されている可能性はあるものとして、自身で注意を払うことが大切であるといえます。