概要
機能性難聴とは、耳の聴こえの低下を示すような明らかな病気がないにもかかわらず、聴力の低下を示す状態を指します。機能性難聴は正しい診断をすることが難しい場合もあるため、注意が必要な病気であるといえます。
発症には、心理的な要因や聞こえないという状況によって受ける実際的なメリットなどが関与しているため、原因となるような問題を特定し、それを取り除くような対応が必要となります。
原因
機能性難聴は、心因性難聴や詐聴といったものを含みます。
心因性難聴
心因性難聴は、ストレスを原因として発症すると考えられています。原因となりうるストレス状況としては、例として以下が挙げられます。
- 学習面での遅れ
- 友人やきょうだい・両親との人間関係
など
詐聴
身体的には難聴を引き起こすような病気がないにもかかわらず、「聞こえない」という状況によってもたらされる実際的なメリットと関連して引き起こされると考えられています。
具体的には、以下のような場合にみられることがあります。
- 身体障害者手帳を得たい
- 金銭面でのメリットを得たい
- 労災の診断書を得たい
など
いくつかの誘因・原因に基づいて分類される機能性難聴ですが、どのようなものを原因として発症しているのかを特定できない場合もあります。
また、機能性難聴の種類に応じて発症しやすい性別や年齢などが異なることや、さまざまな状況が誘因となりうることが知られています。
症状
機能性難聴では、耳の聞こえが悪くなっているという訴えがありますが、形態学的な検査や聴覚検査をしても原因を特定することができません。
また、検査を行うたびに耳の聴こえの程度が変動することや、学校検診を通して難聴の指摘を受けることもあります。
耳の聴こえの低下を訴えるため補聴器を使用することもありますが、実際には補聴器がない状態でもコミュニケーションが可能なこともあります。
また、耳の聴こえの低下以外にも、耳鳴りや耳の痛み、めまいなどの症状をみることがあります。
機能性難聴では、背景にストレス因子や実際的な利害状況が隠れていることもあります。こうしたことに関連して、うつ症状や不眠などの状況をみることもあります。
検査・診断
機能性難聴では、耳の診察や一般的な聴力検査に加えて、歪成分耳音響放射検査、聴性脳幹反応などの検査、CT・MRI検査も検討されます。
そのほかにもY-G性格検査、不安傾向診断検査などの心理検査が併用されることもあります。こうした検査結果と本人の自覚症状を組み合わせ、矛盾点がないかどうかを検討することで病気の診断を行います。
治療
機能性難聴は、精神・心理的な因子や実際的に受けるメリットなどが発症に関与していると考えられています。そのため、こうした背景にある要素を考慮したうえで対応策を講じることが重要です。
たとえば、問題となっている心理的な要素を特定して、それを取り除くことが大切です。場合によっては、認知行動療法や自律訓練法などの治療介入を行うこともあります。
機能性難聴では、不用意な薬物投与や手術介入を避けるためにも、慎重に原因を特定することが大切です。
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