概要
深頸部膿瘍とは、首の奥深くに膿が形成された状態を指します。扁桃炎などのどの感染症や虫歯、さらに歯ブラシなどによりのどが傷つくことで生じることもあります。
膿が表層に留まっている状況と比較してより深い場所で感染症が生じており、時に急速な経過から命に関わる状態となることもあります。そのため、深頸部膿瘍では迅速な診断と治療が必要とされます。
原因
深頸部膿瘍は、のどの感染症が原因で起こります。
のどの感染症として扁桃炎を挙げることができますが、具体的には炎症が扁桃に留まることなくさらに奥深くまで進展することで発症につながることがあります。また、口腔内の感染症として虫歯が原因となることがあります。
そのほかにも、耳下腺炎や顎下腺炎などの炎症が波及することでも生じることがあります。また、上部消化管内視鏡や、のどの異物による影響などが原因となることもあります。
さらに、歯ブラシなどでのどを傷つけてしまうことでも深頸部膿瘍が生じることがあります。特にお子さんの場合は誤って歯ブラシでのどを傷つけてしまうことがあり、その傷をきっかけとして首の奥深くまで感染症が進展することがあります。
また、肥満や糖尿病、先天性免疫不全、先天性嚢胞性疾患などが誘因・増悪因子になることも知られています。
症状
深頸部膿瘍が生じると、発熱、全身倦怠感、のどや首の痛みなどが生じます。通常の風邪とは異なり喉の痛みが強く、嚥下(食べ物を咀嚼して飲みこむこと)や呼吸にも支障をきたすことがあります。また、見た目でわかるほど首が赤く腫れることもあります。
お子さんの場合には、のどを傷つけてしまった後に機嫌が悪い状態が続くことなどがあります。深頸部膿瘍では、急激な経過から症状が悪化して命に関わることもあるため注意が必要です。
検査・診断
深頸部膿瘍では、口の中を視診することで扁桃炎や虫歯の有無などを評価します。加えて、ファイバースコープを用いてのどのより深くの状態を詳細に観察します。
また、膿瘍が首の奥深くに形成されている状態を評価するために、CT検査やMRI検査などの画像検査も重要です。
その他にも、血液検査を行うことで全身の炎症状況を評価することがあります。
治療
深頸部膿瘍は急激な重篤化も懸念されるため、迅速な治療介入が必要です。具体的には、呼吸状態が安定しているか判断し、気管切開も含めての呼吸管理が検討されます。
また、膿が溜まっている状態を改善するために切開排膿が行われることがあります。
そのほかにも、細菌感染症を沈静化させることを目的として、抗生物質の使用も検討されます。この際、口腔内の細菌を含めて複数の細菌が原因となっていることも少なくないため、しっかりと病原体をカバーするような抗生物質を選択することが重要です。
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