治療
食事指導
漏出性便失禁では軟便であることが多いので、まずは食物繊維の摂取量を増やす食事指導をします。
薬物療法
食事指導でも漏出性便失禁が改善しない場合は、ポリカルボフィルカルシウムという薬を内服して便の硬さを正常化します。目標は、食べ頃のバナナか、それよりもやや硬い程度です。ポリカルボフィルカルシウムの内服でも十分に便が硬くならない場合はロペラミド塩酸塩という下痢止めを内服しますが、内服量が多いと便秘になる危険性があるため、最初は細粒による少量内服から開始し、必要に応じて増量します。
排便習慣指導
直腸感覚低下による直腸糞便塞栓が漏出性便失禁の原因である場合には、患者に「直腸に便があっても便意を感じない異常な状態になっている」という事実を伝えたうえで、便意に頼ってトイレへ排便に行くのではなく、タイミングを決めて定期的にトイレに行く排便習慣指導を行います。
具体的には、食事摂取によってS状結腸の便が直腸まで来ている可能性が高い朝食と夕食の30分後に便意を感じていなくてもトイレに行って、いきんで排便する努力をします。それでも便が出ない場合は、炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム坐剤を挿入して直腸内にある便を強制的に排出させます。このようにして定期的に直腸を空虚化していると、直腸の感覚が次第に回復する場合もあります。
骨盤底筋収縮訓練・バイオフィードバック療法
内肛門括約筋は不随意筋であるため、肛門括約筋を締めて収縮力を高める骨盤底筋収縮訓練やバイオフィードバック療法では、その収縮力は改善しません。しかし、随意筋である外肛門括約筋の収縮力の一部は、安静時の肛門内圧にも寄与するため、内肛門括約筋機能低下による漏出性便失禁に対しても骨盤底筋収縮訓練やバイオフィードバック療法が有効な場合があります。
アナルプラグ
“アナルプラグ”と呼ばれる専用の装具を肛門から直腸に挿入・留置して、肛門に栓をすることによって便失禁を防ぐ治療法です。
直腸肛門の感覚が正常な方では、その肛門留置による不快感に耐えられないことが多いですが、その肛門留置を心理的にも身体的にも不快に感じないで継続使用できれば、漏出性便失禁に対する有用な治療になります。大切な用事での外出時だけなど、ワンポイントでの使用も有用です。
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