爪水虫とは、爪にできた水虫です。水虫(白癬)は白癬菌が足の皮膚や体の表面に感染して生じますが、爪水虫(爪白癬)は白癬菌が爪に感染して変形をきたした状態です。“爪が白や黄色っぽく濁ってボロボロと欠ける”“爪が分厚くなって切りにくい”といった症状が見られる場合、爪水虫(爪白癬)にかかっている可能性があります。爪水虫(爪白癬)は治りにくいといわれていますが、正しい対処を行えば完治も可能です。この記事では、爪水虫(爪白癬)について詳しく解説します。
爪水虫(爪白癬)の症状のひとつに爪の変形があります。しかし、爪に変形が生じる病気は複数あり、違う病気が原因であれば爪水虫(爪白癬)の治療を行っても、当然効果はありません。そのため、まずは変形の原因を突き止め、診断することが大切です。このことから、自己判断で市販薬を服用するより、まずは皮膚科を受診し、医師の診察の下で治療を行うことが大切です。なお、爪の変形は、そのうちの約半数が爪水虫(爪白癬)によるものと考えられています。
爪水虫(爪白癬)の診断をする際は、皮膚科を受診し、爪から菌が検出されるかどうかを検査します。検査の結果、原因菌が検出されれば爪白癬の診断が付きます。
内服薬には“テルビナフィン”“イトラコナゾール”“ホスラブコナゾール ”の3剤があります。テルビナフィンは、1日1回1錠を約6か月服用します。イトラコナゾールの場合、1週間服用してその後3週間休薬する“パルス療法”を3回繰り返します。ホスラブコナゾールは、1日1回1錠を約3か月服用します。爪が完全に生え変わるのに時間が掛かりますので、いずれも服薬中に完全に治ることはありません。しかし、服薬終了後にも徐々に改善が進み、やがて健康な爪に置き換わって治っていきます。なお、内服薬を服用する場合、開始前と開始後1~2か月に1回程度、血液検査が必要です。
外用薬としては、近年、“エフィコナゾール”“ルリコナゾール”の2種類が承認されました。治療効果は内服薬ほど高くはありませんが、肝障害などで内服薬が使用できない人も使うことができます。半年から1年間にわたり、1日1回爪だけに外用します。
爪水虫(爪白癬)の内服薬は爪で菌に効果を示しますが、残りは肝臓で解毒されて体外へ排出されます。このため、服用すると肝臓に負担がかかる場合があります。飲酒や過食などをできるだけ避けて、健康な日常生活に心がけましょう。
爪水虫(爪白癬)の内服薬はほかの薬との飲み合わせがよくないこともあります。治療開始前に内服中の薬があれば、皮膚科医や薬剤師に伝えてください。また、爪水虫(爪白癬)の内服治療中にほかの薬の服用が開始される場合も、必ず医師・薬剤師に伝えてください。
爪の変形は新しい爪が伸びなければ治ってきません。これは、健康な爪で病気の爪を押し出して治っていくためです。たとえば、爪をぶつける、合わない靴を履いてランニングや登山などの運動を続ける、爪を短く切りすぎて炎症を起こすなど、爪の伸びが悪くなるような状況は避けましょう。
爪水虫(爪白癬)は、足の皮膚に寄生している白癬菌が侵入して起こってきます。白癬菌が爪に侵入すると、爪の先端や横側から徐々に白や黄色に濁っていきます。また、場合によっては縦筋が入ったり、帯のように濁ったりすることもあるほか、爪の先端や横からではなく、表面や根元から濁ることもあります。なお、手の爪が侵されることもありますが、手足の爪が全て、同様に変形することはほとんどありません。その際は、白癬ではないほかの病気を疑います。
爪水虫(爪白癬)が進行すると爪が分厚くなり、爪切りで切れなくなることもあります。なんとか切っていっても、爪の下がもろくなっていて、脱落した状態になることもあります。また、爪が盛り上がってくると痛くて靴が履けなくなったり、爪先に力が入りにくくなり、体のバランスを取るのが難しくなったりします。
爪水虫(爪白癬)の原因菌は、体の表面にある角質のたんぱく質を分解する白癬菌です。角質は体の表面を広く覆っていて、外からの障害から体を守る鎧の役割を持っていますが、白癬菌はその角質を栄養にしていきています。手足に寄生した白癬菌が爪に侵入すると爪水虫(爪白癬)になり、爪が劣化してしまいます。
爪水虫(爪白癬)の原因菌は足など周囲の皮膚に感染していますので、爪水虫(爪白癬)の患者の多くは水虫(足白癬)を放置、あるいは適切に治療してこなかった人と考えられます。
そのほか、爪のふやけた状態が続いた場合は、それを契機に爪水虫(爪白癬)が発症することがあります。たとえば、靴が合わなかったなどで爪に傷を受けた際に、長期間傷テープを巻いていることで爪水虫(爪白癬)が生じるケースがあります。
また、糖尿病の患者さんは、そうでない人より爪水虫(爪白癬)にかかりやすいことが知られています。
金沢医科大学 名誉教授
望月 隆 先生の所属医療機関
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