概要
瘢痕性類天疱瘡とは、自己免疫の異常によって引き起こされる病気のひとつで、口腔内や目の粘膜に水疱が形成されます。
この際に瘢痕形成を伴うことがあるため、「瘢痕性」類天疱瘡と呼ばれていましたが、必ずしも瘢痕形成を伴うわけではないことも指摘され、粘膜類天疱瘡と呼ばれるようになっています。
治療では、ステロイドや免疫抑制剤の使用が検討されます。
原因
瘢痕性類天疱瘡は、本来は体内の異物を攻撃するべき免疫機能が異常を示すことで発症します。免疫機能の異常により、皮膚に存在する基底膜と呼ばれる部位が攻撃を受けてしまい、瘢痕性類天疱瘡が発症すると考えられています。
基底膜とは、粘膜が正常な形態を保つために重要な組織です。そのため、基底膜が障害を受けると、水ぶくれが生じやすくなります。
しかし、瘢痕性類天疱瘡において、なぜ自己免疫に異常が生じるのかは、完全には明らかにされていません。遺伝的な要因や、環境的な要因が発症に関与しているのではないかと考えられています。
症状
瘢痕性類天疱瘡では、口腔内や目の粘膜などに水ぶくれが繰り返し出現します。水ぶくれが生じた部位では、後々に瘢痕形成を来すこともあります。
口腔内で生じる水ぶくれは、歯肉や口腔蓋、頬の粘膜などさまざまな部位に見られることがあります。赤みや痛みを生じることもあり、さらに、出血することもあります。
粘膜病変は、食道や咽喉頭などにも見られることがあります。こうした部位に瘢痕形成を来すことから、ものが飲み込みにくくなったり、声がかれてしまったりすることもあります。重篤なケースの場合、呼吸困難に陥ることもあるため注意が必要です。
目の粘膜が障害を受けることで、緑内障を発症する方もいますし、逆さまつげのような状況になる方もいます。その結果、視力に著しい影響を及ぼすこともあります。こうした粘膜病変の重症度は人によりさまざまであり、ときに皮膚病変を見る方もいます。
検査・診断
瘢痕性類天疱瘡は、口腔内や目の粘膜などに水ぶくれや瘢痕形成を来している場合に疑われます。
診断には、病理検査が必要になります。病理検査は、粘膜病変を採取して顕微鏡で詳細に観察する検査です。この検査を通して、特徴的な自己免疫による障害を同定し、病気の診断へとつなげます。具体的には、基底膜に抗体が沈着していることを観察します。
治療
瘢痕性類天疱瘡は自己免疫の異常を基礎にして発症するため、ステロイドや免疫抑制剤の使用が検討されます。
また、血漿交換療法やステロイドパルスなどのより強力な治療方法が選択されることもあります。その他に、テトラサイクリンとニコチン酸アミドの併用療法も考慮されます。
瘢痕性類天疱瘡では、瘢痕形成に伴って機能障害を引き起こすこともあります。食道が狭くなる際には、狭くなった部位を解除するための処置が必要になることもあります。呼吸に重要な気道系に狭窄が生じた際には、外科的に狭いところを解除する、気管切開などの方法が選択されます。
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