ねんまくるいてんぽうそう

粘膜類天疱瘡

同義語
良性粘膜類天疱瘡,瘢痕性類天疱瘡
最終更新日:
2024年10月23日
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2024/10/23
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概要

粘膜類天疱瘡とは、免疫機能の異常によって皮膚に水疱やただれ(びらん)などがみられる類天疱瘡の病型の1つです。

私たちの体にはウイルスや細菌などの外敵に対する防御機能(免疫機能)が備わっています。免疫機能が正常にはたらいている場合には、ウイルスなどの外敵に対して免疫細胞から“抗体”と呼ばれる武器のようなものが産生され、外敵から身を守ることができます。しかし、何らかの原因によって、自分自身の正常なタンパクに対して抗体(自己抗体)が作られ、自分自身の一部を免疫が攻撃することがあります。

類天疱瘡は、皮膚の表皮と真皮の間にある基底膜に対して自己抗体が産生される病気です。原因となる自己抗体や出現する症状から、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症の病型を鑑別することが重要です。

その中で粘膜類天疱瘡は比較的まれな病型で、60歳以上の高齢の方に多く発症する傾向にあります。瘢痕性類天疱瘡とも呼ばれ、口腔内(こうくうない)や目の粘膜に症状が出現し、水疱・びらんが傷跡を残して治癒する傾向があることが特徴です。ほかの病型と異なり皮膚に症状が現れることは少なく、主に口腔内や目の粘膜にただれがみられます。なお、目の粘膜に主症状がある場合、眼粘膜類天疱瘡と分類されることもあります。粘膜類天疱瘡の治療では、症状の程度に応じた薬物療法などが考慮されます。

原因

粘膜類天疱瘡では、皮膚の表面を覆う表皮と、その下の真皮との間に位置する基底膜部の“BP180(XVII型コラーゲン)”、“ラミニン332”と呼ばれるタンパクに対して自己抗体が産生されます。BP180やラミニン332に対して自己抗体が作られる原因については解明されていません。

症状

粘膜類天疱瘡では、口腔内や目の粘膜などに繰り返し赤みや水疱などが現れます。水疱が生じた部位はやがてただれを起こし、跡を残しながら徐々に拡大します。

口腔内に症状がみられる場合には、歯肉が赤くなり、粘膜が剥けることが特徴です。一方、目の場合は両目に症状が現れるほか、瞼(まぶた)に水疱が形成され、失明するケースもあります。

また、口腔内や目の粘膜のほか、鼻粘膜や喉頭(こうとう)、食道、肛門(こうもん)、外陰部に水疱が形成されることもあります。比較的まれではあるものの、咽頭(いんとう)や食道に水疱が形成された場合には、飲み込みにくさ(嚥下困難(えんげこんなん))や呼吸困難がみられることもあります 。

検査・診断

粘膜類天疱瘡が疑われる場合には、診断のために皮膚生検や血液検査が行われます。

皮膚生検は、患部の皮膚を一部採取し、顕微鏡で細胞の状態を詳しく調べる検査です。顕微鏡では、水疱が表皮の下に形成されていることや、基底膜に自己抗体が存在するかなどを確認します。このほか、咽頭や喉頭、食道に形成された水疱の状態を確認するため、内視鏡検査が行われることもあります。

治療

粘膜類天疱瘡では、一般的に症状に応じた薬物療法が行われます。自己抗体の産生やはたらきを抑えるために副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬が用いられます。

軽症の場合には、“ニコチン酸アミド”と“テトラサイクリン”の併用療法で効果が期待できるケースがあります。一方、中等症以上の場合には、副腎皮質ステロイド薬が中心として用いられます。副作用の出現リスクを下げるため、副腎皮質ステロイド薬の投与量を減らし、免疫抑制薬を併用して治療を行うこともあります。

このような治療によっても改善が期待できない場合や重症の場合には、血液中の血漿(けっしょう)成分から自己抗体などを取り除く“血漿交換療法”、正常な抗体が含まれた“免疫グロブリン”と呼ばれる成分を大量に投与する“免疫グロブリン大量療法”、 副腎皮質ステロイド薬を3日間高容量で投与する“ステロイドパルス療法”などが考慮されます。

このほか、粘膜に形成された水疱(すいほう)が跡を残す場合や癒着を起こしている場合には、外科的治療が考慮されることもあります。咽頭の水疱がただれて呼吸困難がある場合には、気道を確保するために気管を切開することもあります。

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