かんのうほう

肝嚢胞

同義語
肝のう胞
最終更新日:
2024年02月01日
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2024/02/01
更新しました
2018/09/14
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概要

肝嚢胞とは、肝臓内に水(嚢胞液)がたまる良性の腫瘤(しゅりゅう)の一種です。自覚症状に乏しいため健診時の超音波検査で発見されることが多く、年齢は40歳代以上が大半を占めるといわれています。

肝嚢胞は先天性のものと後天性のものがあり、嚢胞の数によって孤立性肝嚢胞と多発性肝嚢胞の2種類に分けられます。

基本的には自覚症状に乏しい一方で、嚢胞が大きくなると周囲の臓器を圧迫し、呼吸困難や運動への支障をきたすことがあります。

無症状である場合には経過観察とすることも多いですが、症状がみられる場合や、嚢胞内で出血や感染などを生じる場合には治療が行われます。

原因

先天性のものと後天性のものとでは、それぞれ要因が異なります。

先天性の肝嚢胞は女性に多いことから女性ホルモンとの関連性があると考えられていますが、原因はいまだはっきりしていません。多発性肝嚢胞は比較的発症頻度が少なく、多くは腎臓の嚢胞性疾患に合併してみられます。常染色体劣性(潜性)遺伝疾患である先天性多発肝内胆管拡張症(カロリ病)により発症するものも報告されています。

後天性では外傷性のほか、エキノコックスという寄生虫の幼虫に感染して発症するものや、嚢胞腺腫・嚢胞腺がんにより発症するものがあります。

症状

一般的に肝嚢胞は自覚症状に乏しく、血液検査でも肝機能は正常範囲です。そのため、多くの場合は健康診断などを受けた際にたまたま発見されます。

しかし、嚢胞が発生した部位や大きさによっては上腹部の痛みや腹部膨満感(お腹が張っている状態)などを生じることがあります。これらの症状に加えて多発性肝嚢胞では呼吸困難やヘルニア、足のむくみなどが現れることがあります。また、嚢胞内の感染による発熱や出血による痛みなどが起こることがあります。

このほか、頻度は低いものの閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)や腹水、肝静脈閉塞を生じたりすることがあります。

検査・診断

肝嚢胞の診断には腹部超音波検査が有用です。また、ほかの病気との鑑別を行うため、血液検査やCT、MRI、嚢胞の試験穿刺(しけんせんし)などを行うこともあります。さらに、多発性嚢胞腎を合併している場合は腎機能検査も併せて行います。

治療

孤立性、多発性ともに無症状であれば特別な治療はせず経過観察となります。

周辺臓器の圧迫による症状がみられたり嚢胞内で出血や感染を起こしたりしている場合には、嚢胞に針を穿刺し、嚢胞液を排液する治療を検討します。また、この治療後に嚢胞液が再びたまることがあるため、再発予防の目的で嚢胞液を排液後にエタノールやミノサイクリン塩酸塩を注入することもあります。

このほか、症状の重さや日常生活への支障度によっては、肝切除術や腹腔鏡(ふくくうきょう)による嚢胞壁切除術が行われます。日常生活が大きく損なわれる場合は肝移植の手術が検討されます。

予防

感染対策

後天性肝嚢胞の原因の1つであるエキノコックス感染症は、日本では北海道地区に生息するキタキツネおよび道内での放し飼いによって感染した犬が主な感染源です。感染している動物が糞中にエキノコックスの虫卵を排泄し、その虫卵が食物や水、手指などに付着し、それらが口から入ることで人に感染します。

そのため、感染源となるキタキツネや犬とその糞に直接触れない、感染が確認される地域での野菜などはよく洗ってから食用する、川や沢などの生水を煮沸せずに飲まないようにするといった対策が重要です。

定期検査

一般的に肝嚢胞は予後良好な病気で、その多くは経過観察のみでも問題ありません。ただし、病気の悪化を防ぐため、定期的に腹部超音波検査を受けて嚢胞の変化を見逃さないようにしましょう。

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