種類
脂肪肉腫には、5種類の組織型分類があります。それぞれの組織型によって、悪性度や好発年齢などが大きく異なり、予後にも違いが生じます。
高分化型脂肪肉腫(異型脂肪腫様腫瘍)
脂肪肉腫の40~50%を占めるといわれており、好発年齢は40~50歳代です。悪性度が低くゆっくり増殖するため、良性の“脂肪腫”との見分けが難しいこともあります。
発症した部位によって異なった名称で呼ばれる傾向にあり、後腹膜に生じたものは“高分化型脂肪肉腫”、四肢に生じたものは“異型脂肪腫様腫瘍”と呼ばれることが一般的です。四肢の中では特に太ももに生じやすいという特徴があり、四肢に生じたものは治療後転移をしにくく、良好な予後が得られます。一方で後腹膜に生じたものは正常組織との区別が難しいことから、治療後の再発率が高くなります。
また一部で、下記の脱分化型に転化する場合があり、注意を要します。
脱分化型脂肪肉腫
脱分化型脂肪肉腫は悪性度の高い脂肪肉腫で、およそ10%は高分化型脂肪肉腫(異型脂肪腫様腫瘍)から発生するといわれています。そのため、好発年齢や発生部位は高分化型脂肪肉腫(異型脂肪腫様腫瘍)と同様ですが、中でも特に後腹膜に発生しやすいことが特徴です。高分化型脂肪肉腫(異型脂肪腫様腫瘍)と比較すると、転移しやすく予後が悪いことが特徴です。
粘液型脂肪肉腫
脂肪肉腫の30%程度を占めるといわれており、腫瘍の内部が粘性に富んでいることが特徴で、特異的な遺伝子変異(融合遺伝子)を有します。好発年齢は30~40歳代といわれていますが、ときに20歳以下の人にみられることもあります。
好発部位は四肢で、特に太ももの深い位置によくみられ、悪性度の高いものは遠隔転移を引き起こす場合もあります。遠隔転移は肺以外の部位(骨など)にも生じやすいことが特徴です。
多形型脂肪肉腫
脂肪肉腫の5%ほどを占め、悪性度が高いことで知られています。発症年齢は50歳以上で、好発部位は四肢の深い部分ですが、ときに体幹や後腹膜にも発生することがあります。
多形型脂肪肉腫の特徴として、3~6か月という短期間で腫瘍が大きくなることや、ほかの部位へ転移する可能性が高いことなどが挙げられ、予後の悪い病気として捉えられています。
粘液多形型脂肪肉腫
粘液型脂肪肉腫と多形型脂肪肉腫の特徴が重なり合ったタイプの脂肪肉腫で、発生頻度が少なく、2020年に発表された『軟部腫瘍WHO分類 第5版』から追加された比較的新しい組織型です。
ほかの組織型と比較すると発症年齢が低く、子どもや若年者など30歳以下の患者が多くみられるほか、男性より女性に多いことが特徴です。発生部位は幅広く、主な部位として縦隔、太もも、お腹、臀部などが挙げられます。悪性度は高く、転移や再発のリスクも高いため、予後が悪いと考えられています。
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