しぼうにくしゅ

脂肪肉腫

皮膚

目次

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概要

脂肪肉腫とは、脂肪組織から発生したがん(悪性腫瘍)であり、筋肉・脂肪・関節などの組織から発生した悪性腫瘍の総称である「軟部肉腫」のひとつです。

脂肪肉腫は中高年以降に発症しやすく、大腿(だいたい)(太ももにあたる部分)などに生じることが多いでしょう。組織生検(病理組織検査)により診断され、画像検査により腫瘍の進行の程度が判断されます。病気の進行を示す病期に応じて、主に手術、薬物治療、放射線治療の組み合わせで治療が行われます。

原因

脂肪肉腫は、成熟脂肪細胞自体が悪性化するのではなく、脂肪細胞のもとになる間葉系細胞が悪性化することにより腫瘍が発生すると考えられています。脂肪肉腫の腫瘍細胞には、いくつかの遺伝子異常が発見されており、それががん化の原因と考えられています。腫瘍の顕微鏡検査の特徴から、脂肪肉腫は高分化型、粘液型、多形型などいくつかに分類されます。

たとえば、粘液型脂肪肉腫では染色体間の相互転座により生じたTLS-CHOPという融合遺伝子が腫瘍の発症に関わっていることが知られており、悪性度が低いといわれています。一方、多形型脂肪肉腫ではMDM2という遺伝子の増幅が観察され、悪性度が高いことが知られています。このように同じ脂肪肉腫と診断されても、原因となっている遺伝子変異によって病気の進行には違いがみられます。

症状

脂肪肉腫は、下肢(かし)などの皮下や筋肉のなかの、境界不明僚な大きなしこりとして気づかれることが多いでしょう。通常痛みを伴わないため気づかないまま拡大し、進行してしまう場合もあります。

検査・診断

生検

脂肪肉腫の診断を確定させるために、針などを用いて病変の一部を採取し、顕微鏡の検査(病理組織検査)を行います。CTや超音波で病変の位置を確認しながら生検を行う場合もあります。脂肪肉腫かどうかの診断に加えて、腫瘍の組織の悪性度も評価します。

画像検査

病変の大きさや転移の有無を調べるために、必要に応じていくつかの画像検査を行います。たとえば、血管を介して他の臓器(肺や肝臓など)に遠隔転移がないか調べるためにCT検査を行います。

また、病変の広がりや、病変と周囲の筋肉あるいは神経との位置関係を調べるためにMRI検査(磁気を使い、体の断面を写す検査)を行います。CT検査、MRI検査では造影剤を併用することで、より正確に病変の状態を観察することができます。全身の遠隔転移やリンパ節転移を調べる目的でPET検査(がんなどに用いられる検査の一種。特殊な薬とカメラを使って全身の詳しい画像を撮る検査)が行われることもあります。また、骨への転移を調べるために骨シンチグラフィが行われる場合があります。

上記の生検により診断した腫瘍の悪性度と、画像検査で確認した腫瘍の大きさ・広がり、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無を総合して、腫瘍の進行の程度を表す病期(ステージ)が決定されます。米国がん合同委員会(AJCC)と国際対がん連合(UICC)でステージの決め方に若干の違いがありますが、いずれの方式でも病期はIAからIVまでの6段階で表され、それぞれの病期に応じて適切な治療方針が選択されます。

治療

脂肪肉腫の治療法には、主に手術、薬物療法、放射線治療があります。生検および画像検査の結果によって病期(ステージ)が決まり、それぞれの病期に応じた最適な治療の組み合わせを選択します。大まかな治療の原則は、手術による切除が可能なものは手術が優先され、そうでないものは薬物療法・放射線治療などを組み合わせて治療します。

手術

手術は、遠隔転移のない脂肪肉腫の治療において最も重要な治療です。MRIなどの画像評価で明らかになった腫瘍の大きさをもとにして、周囲の正常組織を含めて切除します(広範切除)。これは、画像でみえる腫瘍の範囲よりもがん細胞が広がっている可能性を考え、再発を防ぐために行います。リンパ節への転移が疑われる場合は、同じ領域の一連のリンパ節を切除(リンパ節郭清)することもあります。

腫瘍の切除後の傷をふさぐ治療は再建手術と呼ばれ、通常は腫瘍の切除と一緒に行われます。再建手術では、正常な部位から皮膚、筋肉、骨などを採取し、それを腫瘍を切除した部位に細い血管を顕微鏡下でつないだり、静脈や人工血管を使って移植することにより手足の機能を温存します。

薬物療法

正常組織を含めた手術(広範切除)を行っても、その後に再発や転移が起こることがあります。その原因は、検査で発見できない小さな腫瘍組織が残っていた可能性が考えられます。このような手術で取り切れない小さな腫瘍組織を治療するために術前または術後に薬物療法を行うことがあります。また、肺など他の臓器への遠隔転移がある場合や手術ができない場合に、腫瘍の進行をコントロールするために薬物療法を行うことがあります。

一般的に抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)と呼ばれる、がん細胞の分裂を抑える薬剤を静脈注射し、がんの増殖を抑える治療(化学療法)が代表的な薬物療法です。薬物療法では、複数の種類の抗がん剤を組み合わせて治療を行う場合(多剤併用化学療法)があります。

薬の副作用には、吐き気、食欲の低下、脱毛、血液細胞の減少、免疫力の低下などがありますが、副作用を軽減するさまざまな薬剤が開発され、化学療法に組み合わせて使用されています。

また、がん細胞の増殖に関わるタンパク質の働きを抑えることで、がん細胞が増殖するのを防ぐ「分子標的薬」と呼ばれる新しい種類の内服薬(パゾパニブ)も近年の薬物療法の選択肢に加わりました。分子標的薬は化学療法とは異なる副作用を生じ、一概に副作用が軽いとはいえません。

放射線治療

放射線治療は、腫瘍を小さくする目的で局所に放射線を照射する治療法です。他の治療と組み合わせて行われることが多く、手術後に腫瘍の取り残しが考えられる場合や、手術後の再発を減らす目的で腫瘍を切除した部位に放射線治療を行うことがあります。また、さまざまな理由で手術ができない場合や、手術前に腫瘍の大きさを縮小させて切除しやすくする目的で放射線治療を行うこともあります。また、がんによる痛みを緩和するために行うことがあります。