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早期発見・治療が難しい膵がんとは? ――注意したい症状について解説

早期発見・治療が難しい膵がんとは? ――注意したい症状について解説
寺嶋 千貴 先生

兵庫県立粒子線医療センター 医療部放射線科長兼放射線科部長

寺嶋 千貴 先生

目次
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(すい)がんは早期発見も治療も難しいために、難治性のがんの1つといわれています。少しでも早期に発見し治療を始めるためには、膵臓(すいぞう)という臓器の役割を理解し、リスク因子や日常生活で注意が必要な症状について知ることが重要です。

今回は兵庫県立粒子線医療センター 放射線科において放射線科長を務める寺嶋 千貴(てらしま かずき)先生に膵がんの症状を中心にお話を伺いました。

膵がんとは、膵臓に発生するがんです。早期発見が非常に難しいがんであるとともに、手術してもなかなか根治が得られない難治性のがんの代表です。膵がんと診断された患者さんの中で手術が可能な割合は20%ほどであり、80%の患者さんがすでに切除ができないほど進行した状態で発見されます。切除できない患者さんのうち、70%ほどが膵臓以外の臓器に遠隔転移をきたしており、残りの30%ほどの患者さんが遠隔転移のない“局所進行膵がん”と診断されます。

国立がん研究センターのがん統計によると、膵がんの罹患者数、死亡者数は男女共に年々増加しています(2021年7月時点)。

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膵臓は胃の後ろ側に位置している左右に長い臓器であり、頭部、体部、尾部の3つの部位に分けられます。

膵臓には主に消化液である膵液を十二指腸に分泌すること、血糖を下げるホルモンであるインスリンを血液中に分泌することの2つの役割があります。

膵がんのリスク因子として、家族歴(家族に膵がんの既往があること)、糖尿病の既往、肥満などが挙げられます。そのほか、遺伝性膵炎(いでんせいすいえん)をはじめとする遺伝性疾患、喫煙や大量飲酒などの生活習慣もリスク因子とされています。

広島県の尾道市医師会では、2007年から膵がんを早期診断するために“尾道プロジェクト(膵癌早期診断プロジェクト)”を行っています。住民健診の中でこれらのリスク因子を複数有する方を中心に超音波検査を行い、その結果膵がんが疑われる症例に対しては超音波内視鏡検査(EUS)、CT検査、MR胆管膵管撮影(MRCP)を実施したところ、膵がんの早期発見率が上昇し、5年生存率の改善につながったと報告されています。

膵がんは発生した初期では症状が出にくいために、早期発見が非常に難しいです。しかし、膵がんの中でも膵頭部がんの場合は、胆汁を十二指腸に排泄する総胆管が閉塞(へいそく)してしまうことによって、早期から眼球や顔の皮膚が黄色くなる、体がかゆくなるなどの黄疸(おうだん)の症状が出る場合があり、それをきっかけに膵がんが早期発見されることがあります。

PIXTA
痛みを感じる部位(画像提供:PIXTA/画像加工:メディカルノート)

初期の膵がんではあまり痛みを感じません。これは、一部分を除いて膵臓内には痛みを感じる神経がないからです。しかし、膵臓の後ろには神経叢(しんけいそう)という神経の塊があるため、膵臓の後ろ側にがんが広がったときには腹部や背中に持続性の強い痛みを感じます。

膵がんになると膵臓の機能が低下する場合があります。特にインスリンの分泌量が低下すると、糖尿病を発症したり、糖尿病のコントロールが悪化したりするといった症状が現れ、それがきっかけで膵がんが見つかる場合があります。

そのほか、進行するとお腹の張りや食欲不振、体重減少、微熱などの症状が現れます。体重が減って減量に成功したと考えていたらその後に痛みが出てきて、検査をしたらがんが見つかったということもあります。これは膵がんに限らずほかのがんにも共通する症状ですので、体重減少に思い当たることがなかったり、急激に体重が減ったりした場合にはなるべく早くに病院を受診してください。

膵がんの早期発見が難しいのは、膵臓という臓器自体が小さいために、がんがすぐに膵臓の外に浸潤(しんじゅん)(周囲組織に食い込み、染み込むようにがんが広がっていくこと)してしまうからです。また、がんの性質があまりよくない(悪性度が高い)ことが多く、早い段階から遠隔転移をきたしやすいということも結果的に早期発見に至らない原因の1つです。

膵がんの治療が難しい要因として、解剖学的構造と病理学的な理由の2つが挙げられます。それぞれの要因について詳しくご説明します。

膵臓の周囲に重要な血管があり、切除が難しい

手術でがんを完全に切除することが難しい要因の1つとして、膵臓の周りに重要な血管が存在していることが挙げられます。膵臓の周囲には、肝臓や膵臓、脾臓(ひぞう)などの重要臓器に血液を送っている腹腔動脈(ふくくうどうみゃく)、小腸や大腸に血液を送っている上腸間膜動脈、消化管から肝臓へ血液を集める門脈という重要な静脈などがあり、がんを切除するときに同時にこれらの血管を切断すると腹部の重要な臓器が血流不足に陥り、生命の維持ができなくなります。したがって、これらの血管にがんが浸潤してしまった場合には切除ができないと判断されます。また、がんを取り切れたと考えられたとしても、微小ながんが残ってしまっていることがあり、その場所からがんの再発をきたしやすいことも予後が不良となる一因です。

悪性度が高く、治療効果が出にくい

膵がんが悪性度の高いがんである点も治療が難しい要因の1つです。化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療が効きにくいことに加え、遠隔転移をきたしやすいことも治療効果が得られにくい理由です。

  • 黄疸
  • 腹部や背中の痛み
  • 糖尿病の発症、悪化
  • 食欲不振、倦怠感、持続する微熱
  • 急激な体重減少

特に体重減少には注意してください。体重が減ってくるとつい喜んでしまう方もおられるかもしれませんが、普通の生活をしていて急激に体重が減ることはありません。膵がんに限らず何らかの病気が潜んでいると考え、病院を受診するようにしてください。

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