褐色細胞腫という病気をご存知でしょうか。頭痛・動悸・息切れといった症状から、急激な血圧上昇をきたして救急搬送される例もある病気です。しかし、90%近くは良性腫瘍のため、手術によって治すことができる病気でもあります。今回はこの褐色細胞腫という病気について、京都医療センター 臨床研究センターの成瀬光栄先生にお話を伺いました。
褐色細胞腫とは、腎臓の上にある副腎という小さな臓器から発生する腫瘍です。この腫瘍は副腎の中でも髄質(ずいしつ)と呼ばれる副腎の内側に位置する場所から発生します。
副腎髄質はクロム親和性細胞という細胞から構成されています。褐色細胞腫は多くの場合良性の腫瘍ですが、褐色細胞腫全体のうち約10%に悪性のものがみられます。また、多くは副腎に発生しますが、副腎の外(頸部・胸部・膀胱付近などの傍神経節)に発生することもあります。家族性(遺伝的、集積的)に発生するケースや両側性に発生するケースもあります。
以前は上記のような悪性、副腎外での発生、家族性の発生、両側性の発生がそれぞれ約10%みられることから、この腫瘍は医師の間では「10%病」と呼ばれることもありました。発症年齢は特に定まっていませんが、20代〜40代での発症が多くなっています。男女差も特にみられていません。腫瘍の大きさはさまざまですが、直径5cm~6cm、重さ約50g~200gのものが多くなっています。現在日本における褐色細胞腫の患者数は約2000人、そのうち約10%・200人が悪性の患者さんと考えられます。
近年腫瘍の原因となっている遺伝子の特定が進み、高い確率で遺伝性腫瘍に褐色細胞腫を合併する病気がわかってきました。
例えば、多発性内分泌腫瘍Ⅱ型・Von Hippel Lindau 病(フォン・ヒッペル−リンダウ病)・レックリングハウゼン病などは褐色細胞腫を合併する疾患として知られています。現在では原因遺伝子がいくつかわかっており、発生した原因は遺伝的背景がある例が全体の約25%〜35%程度とされています。また、遺伝性の場合は両側性で発症年齢が若い傾向があることも特徴です。
具体的には、SDHB・SDHD・VHL・RET・NF1と呼ばれる遺伝子をはじめとし、現在では10種類以上の遺伝子の異常が明らかになっています。なかでもSDHB遺伝子が変異している場合、褐色細胞腫は悪性で転移が多いことが報告されています。ただ、1つでも遺伝子に異常があると発症するというわけではなく、SDHB遺伝子をもっていても約50%の方は発症しないという報告もあります。そのため、複数の要因による発症が考えられていますが、そのメカニズムはまだ明らかになっていません。
褐色細胞腫が悪性化する確率は全体のうち10%未満に過ぎないのですが、良性の腫瘍の場合でもさまざまな症状を引きおこします。それは、褐色細胞腫がカテコールアミンを産生するからです。
カテコールアミンとは、アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミンなど、神経伝達物質やホルモンとしてはたらく化学物質の総称であり、これらの物質がさまざまな比率で各臓器に含まれています。カテコールアミンは本来心臓の収縮力を増加させたり、全身の血管を収縮させたりする働きによって、脳や腎臓などの重要な臓器へ血流が滞りなくいきわたるようにしています。しかし、過剰に分泌されることで、高血圧や急激な血圧の変動をきたします。その結果、頭痛・動悸・吐き気・異常な発汗・不安感といった症状をもたらすこともあります。
医仁会武田総合病院 内分泌センター長
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