概要
レックリングハウゼン病とは神経線維腫症1型とも呼ばれ、皮膚にカフェオレ斑や神経線維腫と呼ばれる病変を来す病気です。
レックリングハウゼン病ではこうした皮膚症状以外にも骨、目、神経系にも病変を呈することになります。
レックリングハウゼン病はNF1と呼ばれる遺伝子の異常で発生することが知られており、常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式を取ります。日本では難病指定を受けている病気のひとつであり、全国に約4万人の患者さんがいると推定されています。
レックリングハウゼン病の根本的な治療方法はなく、症状にあわせた対症療法が中心となります。同じ家族内であっても症状の出方は一定でなく、個々の患者さんに合わせた治療が重要になります。
原因
ヒトの細胞には、1番から22番まで番号が付いている常染色体と、性別を決定する性染色体が含まれていています。レックリングハウゼン病は、17番目の染色体に位置するNF1と呼ばれる遺伝子に異常が生じることで発生します。
NF1遺伝子はニューロフィブロミン(neurofibromin)と呼ばれるタンパク質を産生します。ニューロフィブロミンは、神経細胞そのものや神経細胞周囲に存在するシュワン細胞が正常にはたらけるように、また、異常に増殖しないように調整するはたらきを有しています。
NF1遺伝子のように、細胞増殖にブレーキをかけるはたらきを持つ遺伝子を一般的に癌抑制遺伝子と呼びます。
異常なニューロフィブロミンが産生されるレックリングハウゼン病においては、細胞増殖にブレーキをかけることができなくなり、無秩序に細胞が増殖するようになります。その結果、神経線維腫をはじめとした腫瘍が神経系に多く見られるようになります。
レックリングハウゼン病は、常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式をとります。この遺伝形式では、原因となる異常遺伝子を1本でも持つと病気を発症することになります。
両親いずれかが病気を有する場合、そのお子さんが同じ病気を発症する確率は50%です。ただし、両親が病気を有していなくても、レックリングハウゼン病を発症することはあります。
症状
レックリングハウゼン病では、カフェオレ斑や神経線維腫といった特徴的な皮膚病変を呈することになります。
カフェオレ斑
扁平で盛り上がりのない斑であり、色は淡いミルクコーヒー色から濃い褐色に至るまでさまざまで、色素斑内に色の濃淡はみられません。
形は長円形のものが多く、丸みを帯びた滑らかな輪郭を呈しています。新生児期から認めることが多く、小児では径0.5cm以上、成人では径1.5cm以上を基準とします。
神経線維種
皮膚の神経線維腫は思春期頃より全身に多発します。特に上肢、下肢の皮膚に数ミリから数センチ大のこぶ状の神経線維腫(nodular plexiform neurofibroma)、および、び漫性の神経線維腫(diffuse plexiform neurofibroma)がみられることもあります。
悪性末梢神経鞘腫瘍は、末梢神経から発生する肉腫で患者の2~4%に生じます。
肉腫を除く神経鞘腫では、これら皮膚症状で健康被害が生じるわけではありませんが、見た目の問題から悩みを抱える患者さんが多いです。
レックリングハウゼン病では、他にも悪性末梢神経鞘腫瘍、視神経膠腫、毛様細胞性星細胞腫、脊髄腫瘍など、多種多様な腫瘍があらゆる神経において発生します。
また側彎や四肢の骨の変形、学習障害・注意欠陥多動症などがみられることもあります。さらに、乳がんの発生率も高いことがわかってきました。
検査・診断
レックリングハウゼン病の診断では、カフェオレ斑と神経線維腫の有無を確認することが重要です。
ただし小児期においては、神経線維腫がはっきりしないこともあるため、カフェオレ斑のサイズや個数をもとに診断を行うことになります。レックリングハウゼン病は遺伝もひとつの発症要素のため、家族歴について伺うこともあります。
また、レックリングハウゼン病では骨の変形(脊柱、胸郭、四肢骨など)をみることもあるため、病変部位の評価を行うためのレントゲン写真が行われます。
また、中枢神経系(脳や脊髄)に腫瘍性病変をみることもあるため、MRIやCTといった画像検査を行うこともあります。
その他、レックリングハウゼン病では目に虹彩小結節と呼ばれる病変を見ることもあるため、眼科的な検査も必要になります。
また、けいれんを来す場合もあるため、脳波でけいれんを評価することが必要になります。
治療
レックリングハウゼン病に対する根本的な治療方法はなく、症状に対する対症療法が中心となります。
カフェオレ斑に対しては、Qスイッチルビーレーザーなどの各種機器を用いた治療、ビタミンD3製剤の外用、カバーファンデションの活用などがあります。また皮膚の神経線維腫に対しては、電気焼灼術、炭酸ガスレーザーによる治療などいくつか方法があります。
いくつかある方法から、メリット・デメリットを考慮しながら治療方針を決定していきます。
その他、悪性腫瘍を含む内臓病変などに対して必要とされる治療が行われます。
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