概要
神経膠腫(グリオーマ)とは、脳や脊髄を構成するグリア細胞と呼ばれる細胞から発生する腫瘍です。神経膠腫の大部分は脳内にできるため、脊髄にできるのは非常にまれです。
神経膠腫は元になる細胞によって種類が異なり、悪性度によって4段階のグレードに分類されています。グレードによって生存率は異なりますが、すべての神経膠腫は脳実質内を浸潤(まわりに広がっていくこと)して成長するため、正常組織との境界がわかりづらく、手術で全摘出することは困難であると考えられています。
原因
脳や脊髄には数多くの神経細胞が存在しますが、その神経細胞に栄養を運んだり、安定化させたりするのに必要な細胞がグリア細胞です。脳や脊髄のなかには、情報伝達を行う神経細胞の50倍ものグリア細胞が存在すると考えられており、脳や脊髄の重要な構成要素でもあります。このグリア細胞と呼ばれる細胞から発生する腫瘍が神経膠腫です。
症状
腫瘍の部位による局所的な症状と、腫瘍が大きくなって脳圧を上昇させることによる症状に分けられます。
局所的な症状
腫瘍ができる部分によって、その部分が司る機能の低下がみられます。
たとえば、大脳では手足の麻痺や言語障害、記憶障害、けいれんなどが生じ、小脳ではめまいなどの平衡感覚の異常が生じます。脳幹に腫瘍ができた場合には、嚥下障害などの脳神経麻痺が起こることがあります。
脳圧上昇による症状
腫瘍が大きくなることで脳圧が上昇し、さまざまな症状が現れます。代表的な症状は、頭痛や吐き気です。また、腫瘍の場所によっては、腫瘍が脳脊髄液の流れを妨害して水頭症を合併し、結果として脳圧が上昇することがあります。
検査・診断
CTやMRIでの画像検査が主体となります。まず、CT検査を行い、次にMRI検査を行うことが多く、一般的にどちらも造影剤が用いられます。また、神経膠腫は画像上、転移性脳腫瘍と非常に似ているため、他の部位に腫瘍がないか全身のCTやPET検査などで確認することもあります。
確定診断のためには手術で腫瘍を取り、組織を病理検査する必要があります。
治療
原則的には手術で腫瘍を取り除く治療が行われます。神経膠腫は脳実質にしみ込むように成長するため、周辺の正常組織との区別がつきにくく、腫瘍を取りすぎると正常な脳組織まで障害してしまうことになります。そのため、全身麻酔後、腫瘍を取り除く段階で患者さんを覚醒させ、言語障害や麻痺が起こらないように、神経障害を確認しながら手術を行う覚醒下手術が行われることもあります。
しかし、腫瘍ができた部位や大きさ、全身状態によっては手術を行えないことがあります。このような場合には、放射線治療と抗がん剤治療が併用して行われます。
また、手術をした場合にも術後に放射線治療と抗がん剤治療がおこなわれることがありますが、3歳未満の小児では、放射線治療により発育障害や知能障害などの後遺症を生じる可能性があるため、手術と抗がん剤治療が優先して行われます。
「神経膠腫」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「神経膠腫」に関連する記事
関連の医療相談が6件あります
小児がんサバイバーの寿命と晩期合併症について
1歳の頃、神経芽腫(右後腹部)と診断されました。 手術で腫瘍を摘出後、約3年間2か月に一度、放射線治療と抗がん剤治療を受けました。 その後15歳まで定期検診を続けましたが、再発はしていません。 43歳の頃、子宮筋腫と卵巣腫瘍の手術を受けましたが、卵巣腫瘍は良性でした。 小児がんサバイバーは、二次がんや成人病のリスクが高く、寿命も少し短いという情報をネットで読んだことがあり、不安を感じています。 以下の点について、ご教示・ご助言頂きたく、どうぞよろしくお願い致します。 ①平均寿命は、統計的には何歳くらいですか? ②現状では定期的に健康診断を受け、気になる症状があれば該当科を受診していますが、他に留意すべき事があれば教えて下さい。
昨日から続く腕の痛みについて
昨日から左腕の二の腕が痛む 二の腕がこぶのように腫れている 原因はアルバイトのスイカ運びだと思われる これは神経鞘腫なのか なんなのかが知りたいです
眼窩内偽腫瘍の疑い
2歳8ヶ月の時に左目が下がり、受診して手術(病理診断の手術)をしたところ、眼窩内偽腫瘍の疑いと診断されました。その後5ヶ月ほどステロイドを服用しましたが、小さくはなりませんでした。今は半年に1回のMRIの経過観察です。 来年度から小学生になるので、もう一度手術をしてきちんと病理診断をしてもらった方がいいのか、このまま経過観察でいいのか悩んでいます。
神経鞘腫について
半年ほど前に、左足首付近にしこりを見つけ、病院に行ったところ神経鞘腫と診断されました。 おそらく良性だろうと言われているのですが、実際は手術で取り除いて検査をしないと分からないと言われています。 普通に歩いてて全く痛みもなく、そのしこりを押したり当たったりするとつま先にかけてしびれがある程度です。 定期的に検査をし、大きくなっていないことも確認できているのですが、手術をしたほうがよろしいでしょうか? 先生は、急がなくていいけどなくなることはないので、タイミングを見て取ったほうがいいと仰っています。 手術は、神経を触るので全身麻酔で行う、稀にしびれ等の後遺症が残る場合もあると言われ、決めかねている状態です。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
神経膠腫を得意な領域としている医師
-
-
神経膠腫
- 覚醒下手術
- 化学療法
- 放射線治療
- がんゲノムプロファイリング検査
- 新薬による治療
-
膠芽腫
- 覚醒下手術
- 化学療法
- 放射線治療
- がんゲノムプロファイリング検査
- 新薬による治療
-
転移性脳腫瘍
- 覚醒下手術
- 化学療法
- 放射線治療
- がんゲノムプロファイリング検査
- 新薬による治療
-