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インタビュー

神経膠腫(グリオーマ)とは? 病気の分類・症状を解説

神経膠腫(グリオーマ)とは? 病気の分類・症状を解説
園田 順彦 先生

山形大学 医学部 脳神経外科学講座 教授

園田 順彦 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年03月28日です。

神経膠腫グリオーマ)とは、脳の内部から発生する脳実質内腫瘍の一つです。神経膠腫は、世界保健機関(WHO)が定めたグレード(基準)によって4つに分類されており、症状や進行のスピードが大きく異なる点が特徴です。

今回は、山形大学医学部脳神経外科の教授である園田 順彦先生に、神経膠腫の分類や症状についてお話しいただきました。

脳に発生する腫瘍には、脳実質外腫瘍と脳実質内腫瘍があります。脳実質外腫瘍とは、骨や脳を覆っている膜など、脳の外側から発生する腫瘍の総称です。一方、脳実質内腫瘍は、脳の内部から発生する腫瘍を指します。

神経膠腫は、このうち脳実質内腫瘍の一つです。

提供:PIXTA

神経膠腫は、脳をつくる細胞の一つである神経細胞を支持する細胞である星細胞(せいさいぼう)や乏突起神経細胞(ぼうとっきしんけいさいぼう)に類似した形態をとることが知られています。

しかし、これらの細胞から神経膠腫が発生するのかは明らかになっていません。

2018年現在、神経膠腫の原因は明らかになっていません。たとえば、神経膠腫の発症に、遺伝はほぼ関連していないといわれています。喫煙などの生活環境因子との関連も認められておらず、原因が解明されていない点は特徴でしょう。

神経膠腫は、世界保健機関(WHO)が定めたグレード(基準)によって、重症度別にⅠ〜Ⅳに分類されます。

発症しやすい年齢は、それぞれ以下の通りです。男女差についてお話しすると、すべてのグレードで、女性よりも男性の方が発症しやすい傾向にあるでしょう[注1]

グレードⅠは、良性の神経膠腫です。たとえば、毛様細胞性星状細胞腫(もうようさいぼうせいせいじょうさいぼうしゅ)が該当します。グレードⅠの患者さんは、小児が多いことがわかっています。グレードⅠからⅡへと進行することは非常に少ないといわれています。

グレードⅡは、悪性度の低い神経膠腫です。びまん性星細胞腫や乏突起膠腫などが該当するでしょう。グレードⅡの患者さんは30〜40歳代の方が多いことがわかっています。グレードⅡは、一般的に月単位や年単位など、非常にゆっくりと進行します。

グレードⅢは悪性の神経膠腫であり、退形成性星細胞腫などが該当します。グレードⅢの患者さんは40〜50歳代の方が多いことがわかっています。グレードⅢは、月単位で進行するケースが多いでしょう。

グレードⅣは、悪性の神経膠腫であり、膠芽腫(こうがしゅ)が該当します。グレードⅣの患者さんは、10〜20歳代の若い方と50歳代以上の方に分かれますが、どちらかというと高齢の方のほうが発症しやすいといわれています。特に高齢化が進行する近年では、高齢者の膠芽腫が増加傾向にあるといわれています。

注1:Louis DN, Ohgaki H, Wiestler OD et al: WHO Classification of Tumours of the Central Nervous System. Revised 4th ed. IARC, Lyon 2016

良性の神経膠腫が悪性化する可能性についてお話しします。正確な頻度ははっきりとわかっていませんが、低悪性であるグレードⅡが悪性のグレードⅢへと進行することは比較的多いと考えられています。

さらに、グレードⅡとⅢは、近年の研究からは類似点も多く明確な区別が難しいといわれています。

グレードⅡがⅢへと進行し悪性化するスピードは、一般的に年単位になります。たとえば、びまん性星細胞腫であれば、数年単位で悪性化するケースがあります。

神経膠腫の分類のうちグレードⅣは、グレードⅡ〜Ⅲが悪性化した結果としてグレードⅣになるケースもありますが、発症時よりグレードⅣの方もいます。このうち多くのケースは後者であり、発症したときからグレードⅣの膠芽腫であることが多いでしょう。

グレードⅣの進行スピードは非常に速く、週単位で腫瘍が大きくなってしまう点が特徴です。たとえば、2〜3週間放っておくだけで大きく進行してしまい、緊急手術を必要とするケースもあるでしょう。

手術

低悪性・悪性の神経膠腫では、症状が異なります。

低悪性の神経膠腫では、てんかん(けいれんなどの発作が起こる慢性的な脳の病気)が主な症状になります。良性の腫瘍は、腫瘍の塊がないこともあり、脳のなかに染み込むように腫瘍が広がる点が特徴です。それが原因となり異常な電気が脳に発生し、てんかんを起こすことがわかっています。

頭を押さえる患者さん

一方、悪性神経膠腫の場合、大きな腫瘍の塊をつくるケースが多いといわれています。脳のなかで腫瘍が大きな塊になると、脳がむくみ頭のなかの圧力が上がるので、多くの方が頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)を発症します。

頭蓋内圧亢進症状になると、頭痛や吐き気、意識障害などの症状が現れます。さらに腫瘍の場所によっては、手足の動きが悪くなったり、言葉を話しにくくなるなどの症状が現れるようになるでしょう。

神経膠腫の治療の選択肢については記事2『神経膠腫(グリオーマ)の治療の選択肢-手術・放射線・薬など』をご覧ください。

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  • 山形大学 医学部 脳神経外科学講座 教授

    園田 順彦 先生

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