WT1ペプチドワクチンは、難治性といわれるグリオブラストーマの臨床において驚異的な治療成績をあげています。実際の治療はワクチンを注射するだけで、大きな副作用もなく長期にわたって続けることが可能です。放射線や抗がん剤治療に比べ、長期間摂取が可能である、つまり再発に対して積極的な治療を行えることは、患者さんにとっても大きなメリットがあります。京都府立医科大学付属病院の橋本直哉先生にお話をうかがいます。
近年では、ワクチンがどんな症例に効くのかが少しずつ明らかになっています。そのため、明らかに効果が見込めると判断できれば、再発ではなく初発からワクチンを用いた治療を開始することも考え始めました。
ペプチドワクチンは免疫療法なので、皮膚反応を見て有効性が判断できます。1週目にこの2ヶ所、2週目にこの2ヶ所…というふうにワクチンをどんどん打っていくと、皮膚反応の弱い方よりも皮膚反応の強い方に効果が高いということもわかりました。免疫が皮膚反応で証明されているのです。また、がん関連抗原ががん細胞にたくさん発現している方にも効果が高いことがわかっています。
腎障害が起こる、肝障害が起こるなどの大きな副作用はまったくありません。ただし、ワクチンを打った100パーセントの方に注射部位の発赤が出ます。臨床試験が始まった当初は目立つ部位に発赤が出てしまうこともありましたが、現在はワクチンを打つ場所を背中や腕の一部など体の目立たない部分に変えていますので、日常生活に支障をきたすようなことはありません。
最近では、膵がんなどで長期生存の方が出てきて、治療が成功した方の多くが「温泉に行けない」という悩みを抱えているようです。しかし、このペプチドワクチン療法が効かなければ余命1年半ほどだった患者さんが、そのような悩みを持って暮らしていること自体が夢のようなことであるともいえます。実は、それに対するカバーメイクの研究も始まっており、それほど免疫療法は進んできているのです。
臨床試験をスタートした当初、1週間に1回の頻度で打ち続けていましたが、通院の負担と皮膚の発赤や硬化がひどくなってしまうという問題があったため、1か月に1回、2か月に1回と徐々に減らしていきました。その結果、臨床に参加している数名の患者さんの接種間隔は、現在半年に1回になっています。まだ臨床段階のため、病気が治まっている状態を保ち再発を防ぐためにも、これ以上の間隔をあけている方はいらっしゃいません。
繰り返しますが、がんペプチドワクチンには発赤以外の副作用はほとんどなく、免疫療法ですがアナフィラキシーなどの報告もありません。ワクチンを打つだけなので、患者さんの身体的負担や長期入院の必要なく、非常に簡便に治療が行えることが最大の利点です。
長期生存している患者さんの免疫と、治療効果が高かったワクチン(ペプチドの配列)の関係を研究したデータはまだありません。つまり、どんな人にどんなワクチンが効くかについては、今後研究を進めていかなければならない段階にあります。現在、残念ながらワクチンを打っても効果の見込めない患者さんもいらっしゃいます。しかし、将来的に患者さんの特性によってワクチンの種類を変えることが可能になれば、より高い効果を発揮することができるでしょう。
臨床試験には厳しい制約があり、すべての患者さんが参加できるわけではありません。現在治験段階にまで達しています※ので、ペプチドワクチンの免疫療法をより多くの患者さんが受けられるように、まずは製薬化が期待されています。
※がんワクチン治療は先進医療であるため、『現在がん免疫療法の対象になっている悪性度の高いがん』で挙げたすべてのがん患者が対象になっていない(臨床試験)。しかし、治験(一般製薬化のために新薬の効果や危険性などを試す)が進めばより多くの患者ががんワクチン治療を受けられるようになる。
京都府立医科大学 教授 脳神経外科学教室
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