脳腫瘍とは頭蓋内に生じる腫瘍のことをいいます。脳腫瘍には原発性と転移性、良性と悪性、悪性度の高いもの、低いものなどさまざまな種類に分けられるほか、成人がかかりやすいもの、子どもがかかりやすいものなどもあります。種類によって治療方法や予後が異なることもあるため、専門の医療機関における検査・診断を受けることが肝要です。
そこで本記事では脳腫瘍の種類や種類ごとの特徴、症状について詳しく解説します。
脳腫瘍はまず原発性と転移性に分けられます。原発性脳腫瘍とは脳を構成する細胞から発生した腫瘍のことをいい、転移性脳腫瘍とは肺や大腸など別の臓器で発生したがんが頭蓋内に転移したものをいいます。
以下では、原発性脳腫瘍の種類についてより詳しく解説します。
頭蓋内で初発する原発性脳腫瘍には、実に150もの種類があるといわれています。しかし、発生原因はどの種類においてもほとんど明らかになっていません(2022年1月時点)。
原発性脳腫瘍は大きく良性と悪性に分類することができます。主な良性腫瘍は脳から出た神経や硬膜に生じます。これらの腫瘍は大きくなる速度が遅く、腫瘍の周りと脳との境目がはっきりしており、ほかの部位に転移をしないという特徴があります。
一方、悪性腫瘍はいわゆるがんのことで脳を構成する細胞からできることが一般的です。良性腫瘍と比べて腫瘍が大きくなる速度が非常に速く、周囲の脳に染み込むように広がるため境目がはっきりしないという特徴を持つほか、ほかの部位に転移をきたすこともあります。
原発性脳腫瘍の悪性度はI~IVのグレードによって分類されます。
良性腫瘍の大半はグレードIに分類され、II~IVが悪性腫瘍といわれます。進行が早く腫瘍が大きくなりやすいものほど、グレードの数字が大きくなります。
脳腫瘍の好発年齢は全体では50歳代といわれていますが、子どものうちに発症することもあります。さらに、成人と子どもではかかりやすい脳腫瘍の種類が異なります。
成人で発生頻度の高い脳腫瘍として良性腫瘍では髄膜腫、下垂体腺腫などが挙げられ、悪性腫瘍では神経膠腫(グリオーマ)などが挙げられます。一方、子どもの場合、良性腫瘍では頭蓋咽頭腫などが挙げられ、悪性腫瘍では神経膠腫、髄芽腫などが挙げられます。
脳腫瘍は腫瘍が小さい場合や発生した部位によってはあまり症状が現れないこともあります。しかし、腫瘍が大きくなったり、発生した部位が脳の機能に強く関わる場所であったりすると、その発生した脳の部位に応じてさまざまな症状が現れます。
脳腫瘍が大きくなると、頭蓋内の圧力が高まることで頭痛・吐き気・意識症状などが生じます。
脳には、部位によって運動能力をつかさどるところ、感覚をつかさどるところ、言語能力をつかさどるところなどさまざまな役割分担があります。腫瘍のできる部位によってこれらの機能が障害されることで手足の麻痺やしびれ、ふらつき、言語障害、精神障害など多彩な症状が現れることがあります。
医師が症状や脳の機能を評価する“神経学的所見”が行われた後、脳腫瘍が疑われた場合にCT・MRIなどの画像検査によって腫瘍の状態を観察します。腫瘍があることが明らかであっても、良性の腫瘍ですぐに治療をする必要がないと判断された場合には経過観察となることがあります。
一方、治療が必要と判断された場合には、その腫瘍の部位や大きさなどの画像診断上の特徴から手術または放射線治療を行います。長期的な治療方針として組織診断を必要とする場合には、手術で採取した腫瘍から病理検査や遺伝子検査を行って確定診断をします。
良性腫瘍である場合、手術で腫瘍を完全に取り切れてしまえば、その後追加治療を行う必要はありません。しかし、完全に切除しにくい部位にあるときなどは、取り残した腫瘍に対して放射線の治療を追加することがあります。また、悪性腫瘍である場合には、再発や転移を予防するために術後の放射線治療や薬物療法が検討されます。
なお、全身状態や年齢などから手術が難しいと判断された場合には、放射線治療のみで治療することが検討されます。
脳腫瘍はできる部位や大きさによってさまざまな症状が生じます。また、種類が豊富でその種類によって必要となる治療方法が異なるほか、予後も異なります。そのため、脳腫瘍の診断を受けた際は自身でも脳腫瘍について十分に理解したうえで、病気の特徴や治療方針について医師の説明をよく聞き、不安や疑問があれば医師に相談するようにしましょう。
なかや頭痛脳神経クリニック 院長
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