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Ⅳ期の進行がんである転移性脳腫瘍とは~症状や診断、治療について解説~

Ⅳ期の進行がんである転移性脳腫瘍とは~症状や診断、治療について解説~
中谷 幸太郎 先生

なかや頭痛脳神経クリニック 院長

中谷 幸太郎 先生

目次
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脳腫瘍とは頭蓋骨の中にできる腫瘍のこと指します。脳腫瘍は発症原因が明らかでないことが多いですが、原因の1つとしては遺伝子の変異が挙げられています。その種類はさまざまに分けられ、基本的にはほかの臓器にできたがんが脳に転移した“転移性脳腫瘍”と、脳を構成する細胞から発生した“原発性脳腫瘍”に分類されます。

そこで本記事では“転移性脳腫瘍”をテーマに、その特徴や症状、治療法などについて詳しく解説します。

転移性脳腫瘍とは、ほかの臓器にできたがんが脳に転移した脳腫瘍のことで、脳腫瘍全体の約15%を占めるといわれています。ステージ(がんの進行度合い)で表すと遠隔転移に相当し、Ⅳ期の進行がんと診断されます。転移性脳腫瘍の発症の元となる“がん(原発巣)”は半数以上が肺がんであり、次いで消化器がんが12%程度、乳がんが10%程度といわれています。

なお、診断時から治療の経過中に肺がんが脳に転移する確率は約40%、乳がんでは約50%というデータもあり、特にこれらのがん患者は定期的な脳の画像診断検査が必要であるといえます。

転移性脳腫瘍の症状は、腫瘍の大きさや転移した脳の部位によって “頭蓋内圧亢進(こうしん)症状”と“局所症状”の2つに分けられます。頭蓋内圧亢進症状では脳にできた腫瘍や脳の腫れによって頭蓋内の圧が上昇することで、頭痛嘔吐(おうと)、さらに進行すると脳ヘルニアを生じて意識障害が現れます。

一方局所症状では、腫瘍によってその部位がつかさどる機能が障害されることで現れる症状です。脳は前頭葉(ぜんとうよう)側頭葉(そくとうよう)頭頂葉(とうちょうよう)後頭葉(こうとうよう)などに分けられ、部位によってそれぞれ異なるはたらきを担っています。そのため、たとえば前頭葉に腫瘍ができた場合は思考ややる気、感情、言葉などに影響が現れたり、上肢や下肢に麻痺が見られたりするほか、側頭葉に腫瘍ができた場合は聴覚、視覚、記憶、言葉の理解などに影響が現れることがあります。

まずその存在を確認するためにCTやMRIによる画像検査を行います。診断された後に治療方法を検討するために腫瘍の位置や大きさ、脳の血液の流れを調べる造影CTまたはMRI、脳血管造影検査が行われます。場合によっては組織診断を確定するために手術により腫瘍を採取して顕微鏡で調べる病理組織検査が必要となります。

転移性脳腫瘍の治療では、脳腫瘍の数や大きさ、脳の部位、転移の元となったがん(原発巣)の種類や全身の状態などを考慮し、放射線治療、手術、薬物療法から単独または複数の方法が選択されます。

一般的には、放射線治療が選択されます。腫瘍が比較的小さくて個数も10か所程度の場合は、定位放射線(ピンポイントで腫瘍に放射線を照射する)治療が行われます。腫瘍が大きかったり、数が多かったりする場合には全脳照射(脳全体に放射線を照射する)治療が選択されます。手術で取り切れない場合には、術後に放射線治療を追加します。

手術では、腫瘍を取り除く治療を行います。一般的に腫瘍が大きくて局所症状の原因となっており、かつ原発巣の状態が比較的良好で、長期の生存が見込める場合に行われます。

一般的な抗がん剤治療では、転移性脳腫瘍への効果はあまり期待できず、抗がん剤での治療中にもがん細胞が脳へ転移することがあります。しかし、近年登場した分子標的薬の効果が期待できる場合には薬物療法を優先して選択されることがあります。

分子標的薬とは、がんの増殖に関連するたんぱく質や栄養を運搬する血管、がんを攻撃する免疫に関連するたんぱく質などをターゲットにしてがんを効率よく攻撃する薬です。これによってがんの増殖を抑えることができるとされています。

転移性脳腫瘍とはほかの臓器にできたがんが脳に転移したもののことで、ステージでいえばⅣ期です。治療で原発巣の状態をコントロールすることによって生存率が改善されるとされていますが、それでも5年生存率は12%程度といいます。そのため、治療の目的は局在症状や脳圧亢進症状を取り除くことで生活の質を高め、維持することです。

転移性脳腫瘍について不安や疑問がある場合は担当医のほか脳神経外科の専門医とも相談して、適切な治療を受けられるようにするとよいでしょう。

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