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インタビュー

ガンマナイフ治療による副作用と後遺症

ガンマナイフ治療による副作用と後遺症
周藤 高 先生

横浜労災病院 副院長・脳定位放射線治療センター長

周藤 高 先生

この記事の最終更新は2015年08月18日です。

病変部分だけにガンマ線のビームを集中させ、高い精度で限局的な治療をコントロールできるガンマナイフですが、どんな治療方法であっても治療後に副作用や後遺症がまったくないというわけにはいきません。ガンマナイフ治療を受けた場合、どのような副作用や合併症が起こりうるのでしょうか。豊富な治療実績を持つ横浜労災病院脳神経外科部長の周藤高(しゅうとう・たかし)先生に伺いました。

ガンマナイフ治療後に周辺の組織が浮腫(ふしゅ・細胞内外に水分が貯まって腫れる、むくみ)や壊死(えし・細胞や組織が部分的に死ぬ)を起こすことがありますが、これらは多くの場合、内服や点滴などで治療が可能です。横浜労災病院の脳神経外科では放射線治療に伴って引き起こされる合併症についても多数の治療実績がありますので、治療後のフォローを行い対応しています。

意外に思われるかもしれませんが、放射線治療の副作用として一般によく知られるような脱毛=頭髪が抜けるということはありません。ただし頭皮の近くに病変があれば局所的に頭髪が抜けることもありますが、数ヶ月程度でまた生えてきます。

転移性脳腫瘍に特有の副作用・合併症というわけではありませんが、ガンマナイフ治療後に周囲の脳組織に浮腫を生じることが時にあります。これによって四肢の麻痺や言語障害、けいれんといった症状が引き起こされるため、脳浮腫のコントロールはガンマナイフによる転移性脳腫瘍治療において重要な課題となります。

副作用として顔面神経麻痺が起こることはごく少ないといえますが、耳鳴りについては残ってしまうことが多いようです。治療時の聴力がおおむね正常の場合、聴力は60〜70%程度の確率で治療後も温存できますが、ガンマナイフ治療前にすでにかなり聴力が落ちている場合はより難しくなります。

また、聴神経腫瘍の場合に特徴的なこととして、ガンマナイフ治療後3カ月から2年ほどの間、約60%の割合で一過性の腫瘍の増大がみられます。これによるめまい,ふらつき感,耳鳴り,顔面のしびれ感が出現することがありますが、時間の経過とともに腫瘍が縮小していきますので再治療の必要はありません。

脳脊髄液の循環が悪くなり頭蓋腔内に貯まって脳を圧迫するという、いわゆる水頭症(すいとうしょう)の症状も全体の数%でみられます。ガンマナイフ治療の前からこの状態になっていることもありますが、水頭症の状態を生じた場合には、脳室から腹腔内に髄液を流すシャント手術により治療が可能です。

髄膜腫のガンマナイフ治療で課題となるのは腫瘍の大きさです。3cmを大きく超えるものや発生部位によっては外科的な摘出が優先されます。一方、深部にあり摘出が難しいものなどはガンマナイフが適しているといえます。また、手術でどうしても取りきれないような場合には無理をせず一部を残し、そこに対して後からガンマナイフを用いるといった治療計画もとられます。

下垂体腺腫のそばにある視神経は放射線感受性が高く、放射線治療による損傷を受けやすいといえます。したがって、視神経から近い、もしくは視神経を押し上げるほど大きな腺腫の場合は放射線量を低くしたり,手術での摘出を考えたりする必要があります。多くの場合、低い線量でも腫瘍の増大をおさえることは可能ですが、ホルモンの過剰分泌をおさえることはできません。このような場合はガンマナイフよりも外科手術が適しています。

ガンマナイフ治療後、脳動静脈奇形の周辺に脳浮腫が現れることがあります。治療を受けた患者さんの約50%に浮腫がみられますが、症状が出るほどまで進行するのは全体の5%程度にすぎません。浮腫は治療後半年から1年目あたりでピークとなり、その後約1年で消失します。

また、合併症として嚢胞(のうほう・液状のものが入ったふくろ)ができる場合もあります。嚢胞が周囲の脳の組織を圧迫することによってさまざまな症状を引き起こしますが、これはタンパク成分などが放射線で壊死した血管から脳実質内に漏れ出すことが原因であると考えられます。

ちなみに、ガンマナイフ治療後、完全閉塞までの待機期間中に出血リスクが増えるということはありません。

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