病変部分だけにガンマ線のビームを集中させ、高い精度で限局的な治療をコントロールできるガンマナイフですが、どんな治療方法であっても治療後に副作用や後遺症がまったくないというわけにはいきません。ガンマナイフ治療を受けた場合、どのような副作用や合併症が起こりうるのでしょうか。豊富な治療実績を持つ横浜労災病院脳神経外科部長の周藤高(しゅうとう・たかし)先生に伺いました。
ガンマナイフ治療後に周辺の組織が浮腫(ふしゅ・細胞内外に水分が貯まって腫れる、むくみ)や壊死(えし・細胞や組織が部分的に死ぬ)を起こすことがありますが、これらは多くの場合、内服や点滴などで治療が可能です。横浜労災病院の脳神経外科では放射線治療に伴って引き起こされる合併症についても多数の治療実績がありますので、治療後のフォローを行い対応しています。
意外に思われるかもしれませんが、放射線治療の副作用として一般によく知られるような脱毛=頭髪が抜けるということはありません。ただし頭皮の近くに病変があれば局所的に頭髪が抜けることもありますが、数ヶ月程度でまた生えてきます。
転移性脳腫瘍に特有の副作用・合併症というわけではありませんが、ガンマナイフ治療後に周囲の脳組織に浮腫を生じることが時にあります。これによって四肢の麻痺や言語障害、けいれんといった症状が引き起こされるため、脳浮腫のコントロールはガンマナイフによる転移性脳腫瘍治療において重要な課題となります。
副作用として顔面神経麻痺が起こることはごく少ないといえますが、耳鳴りについては残ってしまうことが多いようです。治療時の聴力がおおむね正常の場合、聴力は60〜70%程度の確率で治療後も温存できますが、ガンマナイフ治療前にすでにかなり聴力が落ちている場合はより難しくなります。
また、聴神経腫瘍の場合に特徴的なこととして、ガンマナイフ治療後3カ月から2年ほどの間、約60%の割合で一過性の腫瘍の増大がみられます。これによるめまい,ふらつき感,耳鳴り,顔面のしびれ感が出現することがありますが、時間の経過とともに腫瘍が縮小していきますので再治療の必要はありません。
脳脊髄液の循環が悪くなり頭蓋腔内に貯まって脳を圧迫するという、いわゆる水頭症(すいとうしょう)の症状も全体の数%でみられます。ガンマナイフ治療の前からこの状態になっていることもありますが、水頭症の状態を生じた場合には、脳室から腹腔内に髄液を流すシャント手術により治療が可能です。
髄膜腫のガンマナイフ治療で課題となるのは腫瘍の大きさです。3cmを大きく超えるものや発生部位によっては外科的な摘出が優先されます。一方、深部にあり摘出が難しいものなどはガンマナイフが適しているといえます。また、手術でどうしても取りきれないような場合には無理をせず一部を残し、そこに対して後からガンマナイフを用いるといった治療計画もとられます。
下垂体腺腫のそばにある視神経は放射線感受性が高く、放射線治療による損傷を受けやすいといえます。したがって、視神経から近い、もしくは視神経を押し上げるほど大きな腺腫の場合は放射線量を低くしたり,手術での摘出を考えたりする必要があります。多くの場合、低い線量でも腫瘍の増大をおさえることは可能ですが、ホルモンの過剰分泌をおさえることはできません。このような場合はガンマナイフよりも外科手術が適しています。
ガンマナイフ治療後、脳動静脈奇形の周辺に脳浮腫が現れることがあります。治療を受けた患者さんの約50%に浮腫がみられますが、症状が出るほどまで進行するのは全体の5%程度にすぎません。浮腫は治療後半年から1年目あたりでピークとなり、その後約1年で消失します。
また、合併症として嚢胞(のうほう・液状のものが入ったふくろ)ができる場合もあります。嚢胞が周囲の脳の組織を圧迫することによってさまざまな症状を引き起こしますが、これはタンパク成分などが放射線で壊死した血管から脳実質内に漏れ出すことが原因であると考えられます。
ちなみに、ガンマナイフ治療後、完全閉塞までの待機期間中に出血リスクが増えるということはありません。
横浜労災病院 副院長・脳定位放射線治療センター長
横浜労災病院 副院長・脳定位放射線治療センター長
日本脳神経外科学会 脳神経外科指導医・脳神経外科専門医・代議員日本脳卒中学会 脳卒中専門医・脳卒中指導医日本脳卒中の外科学会 技術指導医日本臨床倫理学会 上級臨床倫理認定士日本ガンマナイフ学会 理事・学術委員会委員・QA委員会委員長日本定位放射線治療学会 世話人日本ガンマナイフ治療計画勉強会 世話人日本放射線外科学会 世話人日本脳神経外科コングレス 会員日本頭蓋底外科学会 会員日本脳腫瘍の外科学会 会員日本医療マネジメント学会 会員日本職業・災害医学会 評議員・編集委員会委員
2015年開催の第16回日本ガンマナイフ研究会で会長を務める。困難な脳神経外科手術とガンマナイフをはじめとした定位放射線治療を両方行っている数少ない脳神経外科医。
周藤 高 先生の所属医療機関
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ガンマナイフ治療効果について
私の治療に関する質問と言うより、治療効果そのものに対する質問です。 ガンマナイフ治療について、その効果について多数の機関が情報を載せていますが、「80%〜90%の治療効果」的な表現が多いかと思います。 大変、効果のある治療と思いますが、反面、「10%〜20%は効果が出ない。」と言う事もあるのかな?と思ってしまいます。 そこで質問ですが、 ①ガンマナイフ治療後の効果判定は治療後どのくらいで実施されるのでしょうか ②残念なことに、期待した効果が出なかった場合の治療方法はどのようなものが考えられますか? 教えて頂ければ幸いです。
脳腫瘍の大きさが5センチで外科手術にするかガンマナイフ治療にするか迷っています。
右半身に力が入らなくて箸も使えなくなり歩くのにも靴を履かずに進むようになり3日位の間に日に日に悪くなって脳外科を受診したら脳腫瘍と言われました。大腸癌の手術を10月29日にしたばかりで転移だと言われました。腫瘍の大きさは、5センチです。若かったら外科手術を進めるが高齢だからねと言われガンマナイフでは、大きいから結果がでないかもと言われました。秋まで稲刈りなど一人でして体力は、ある方だと思います。どっちの治療をした方がリスクがないですか?どっち治療をするか迷っています。
転移性脳腫瘍と言われましたが病理検査もせずにガンマナイフと言われて
9月5日主人が出勤後会社から目眩がして具合いが悪いと連絡があり、病院で検査してもらうように勧め、近くの脳神経外科に行きMRI.CT.血液検査等ですぐに入院して検査が必要と言われて入院しました。次の日には9日に転院と言われて、病状を聞きに行くと転移性脳腫瘍と言われました。肺にも小さいガンと見られるものがあるがおおもとは別にあるだろうと言われ脳腫瘍は1センチくらいのが3~5個だからガンマナイフがある病院がいいだろうと言われ、ここではおおもとがわからないので転院先で調べてもらいなさい。との事でした。 最初の病院では腫瘍のまわりが腫れていると言われたにもかかわらず点滴も薬も出してもらっていなかったので9日の転院の日には吐き気が酷く座って居られない状況で転院でした。 転院先の病院ではいきなりガンマナイフですね!と言われいろいろ検査して頂きましたが病理検査の機器が壊れていて病理検査が出来ないからガンマナイフが終わったら他の病理検査が出来る病院を紹介すると言われガンマナイフの日程だけ決められました。おおもとの病理検査もせずにガンマナイフありきに不信感だらけです。病院ってどこでもこんな感じでしょうか?私はきちんと病理検査をしてもらって今後の治療方針も聞けるものだと思っていました。
脳脊髄液減少症
一ヶ月ほど前に、頭部外傷。 その後、持続的な軽い頭痛と吐き気。 あとは、目を瞑った状態で片足立ちができない。 しかし、運動とかは頑張ればでき、歩くこともサイクリングも行くことはできる。 今日医師からは、脳脊髄液減少症の可能性は低いだろうとは言われたのだがそれ以外の病気なのか、それとも、脳震盪後遺症のようなものなのか。他の病院行くべきなのか教えてください。
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