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インタビュー

下垂体腺腫の症状-ホルモンの分泌は、過剰でも低下しても体に深刻な影響を及ぼす

下垂体腺腫の症状-ホルモンの分泌は、過剰でも低下しても体に深刻な影響を及ぼす
高橋 裕 先生

神戸大学 大学院医学研究科 糖尿病内分泌内科学 准教授

高橋 裕 先生

ホルモンは過剰に出ても、不足しても体にさまざまな影響を及ぼします。機能性下垂体腺腫によって引き起こされる「下垂体ホルモン分泌過剰症」と「下垂体機能低下症」について、神戸大学大学院医学研究科 糖尿病分泌内科学 准教授の高橋裕先生にお話を伺いました。

「下垂体ホルモン分泌過剰症」は、下垂体ホルモンが腫瘍から過剰に分泌されることによって症状が現れます。機能性下垂体腺腫のうち最も多く見られるのが「プロラクチン産生下垂体腺腫」です。「プロラクチノーマ」と呼ばれ、とくに若い女性に多く見られます。プロラクチンはもともと授乳中に出るホルモンで、乳腺を刺激して乳汁を分泌させる一方で、性腺系を抑え生理を止めるなどの働きがあります。このためプロラクチノーマになると、妊娠をしていないのに乳汁が出て、生理が止まるといった症状が出てきます。

次に多いのが「成長ホルモン産生下垂体腺腫」です。成長するために必要な骨端軟骨が閉じる前である思春期以前に発症した場合は、体がどんどん大きくなる巨人症になります。しかし巨人症はまれな病気で、多くは成人で発症し、手足・額・あご・唇・舌などが肥大する先端巨大症になり、高血圧糖尿病睡眠時無呼吸症候群などを合併します。

「副腎皮質刺激ホルモン産生下垂体腺腫」では、腫瘍から作られるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンの作用によって副腎皮質ホルモンであるコルチゾールが過剰に出る「クッシング病」を発症します。顔が満月のように丸くなる「ムーンフェイス」、手足は細いままなのにお腹が太る「中心性肥満」が起こり骨粗しょう症も発症します。高血圧や糖尿病などさまざまな合併症を起こすこともあります。下垂体ホルモン分泌過剰症の中ではもっとも深刻な病気のひとつです。

「甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腺腫(TSH産生下垂体腫瘍)」はまれな病気で、甲状腺ホルモン分泌が刺激されるので、代謝がより活発になって、食べてもどんどんやせたり、心臓がどきどきしたり、汗がとまらないといった症状が出ます。「性腺刺激ホルモン産生下垂体腺腫」は、一般的には「FSH産生腫瘍」がほとんどで、この場合症状はほとんど現れません。

「下垂体機能低下症」は正常なホルモン分泌が障害されることによって症状があらわれます。最も深刻なのは「副腎機能低下症」で、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンが出なくなることによって副腎不全になり、食欲がなくなり体重が減少したり倦怠感がひどくなるといった症状が現れ、ひどい場合には命にかかわります。TSHというホルモンが出なくなると「甲状腺機能低下症」が起こります。疲れやすくなって、体がむくみ、ひどい場合には認知機能が低下したり、意識障害を起こす場合もあります。

また、子どもの成長が急に悪くなったときには、腫瘍によって成長ホルモンの分泌低下を疑う必要があります。そして性腺刺激ホルモンが低下すると女性では無月経や月経不順、男性では性欲の低下、インポテンツ(勃起障害)が起こります。腫瘍がさらに進展すると下垂体ホルモン分泌がすべて低下してしまう「汎下垂体機能低下症(はんかすいたいきのうていかしょう)」になることがあり上記の様々な症状が同時に出現します。腫瘍が大きくなって視神経(視交叉)にまで及ぶと「視力・視野の障害」が現れることがあります。

下垂体腺腫の中での発生頻度は、「非機能性下垂体腺腫」が約40%を占め、「プロラクチン産生下垂体腺腫」 が約30%、「成長ホルモン産生下垂体腺腫」が約20%、「副腎皮質刺激ホルモン産生下垂体腺腫」が約10%、「甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腺腫 が約1%となっています。下垂体腺腫は20〜50代の方で多く発症し、子どもではまれな病気です。

「成長ホルモン産生下垂体腺腫」の原因は、細胞内の情報伝達を行うあるタンパクをコードする遺伝子(遺伝子の暗号)の変異によって、シグナルのスイッチが常にオン状態になってしまうなど遺伝子の異常が原因で起こることがわかっていまが、これらで説明がつくのは全体の半分ほどで、残りは原因不明です。

例えば先端巨大症ではGNASという遺伝子の変異で、クッシング病の場合USP8という遺伝子変異で発症の4割くらいが説明できるのですが、それ以外の原因は不明です。多くの遺伝子の変異は、細胞が体細胞に分化した後に変異しているので後天的なものです。

がんと同じようにたまたまある細胞で遺伝子の変異が起こり、1個の細胞から増殖して腫瘍になっていきます。上記に挙げた以外の、「プロラクチノーマ」「TSH産生下垂体腫瘍」については今のところ原因がわかっていません。

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  • 神戸大学 大学院医学研究科 糖尿病内分泌内科学 准教授

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