概要
先端巨大症は、成長ホルモンの過剰な分泌、インスリン様増殖因子-I(IGF-I、ソマトメジンC)の高値によって、あご、鼻、おでこ、手足など体の先端部位が大きくなるとともに高血圧、糖尿病、手根管症候群、睡眠時無呼吸症候群、心不全などさまざまな合併症を引き起こす病気です。何も治療をしない場合は生命予後が悪化するため、的確な診断治療が必要です。
40~50歳代で発症しやすい病気ですが、成長期に発症した場合は高身長になり、“下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(下垂体性巨人症)”と呼ばれます。
先端巨大症は脳の下垂体に発生した良性腫瘍によって、成長ホルモンが過剰に分泌することで発症します。腫瘍が大きくなると、周囲の神経を圧迫して視力や視野の異常などの神経症状や頭痛を引き起こすこともあります。また、下垂体からは成長ホルモン以外にも体のさまざまな機能をつかさどるホルモンが分泌されており、それらのホルモンの分泌低下も併発することがあります。
根本的な治療として基本的に手術が選択されますが、手術で腫瘍を取りきれない場合などでは成長ホルモンの分泌を抑え、腫瘍が大きくなるのを防ぐための薬物療法や放射線治療を行うこともあります。
原因
先端巨大症は下垂体の成長ホルモン産生腫瘍が原因となる孤発性*ケースのほかに、多発性内分泌腺腫症I型やMcCune-Albright症候群など、遺伝子変異が関与する家族性の病気として発症するケースがあります。
*孤発性:遺伝せず、病気が散発的に発生すること
症状
先端巨大症は長期間にわたる成長ホルモンの過剰分泌や、それに伴うインスリン様増殖因子-Iの高値が生じることで、主に軟部組織の肥大と骨の変化をきたします。
また、体の先端部分が肥大化するほか、あごやおでこの突出・鼻や唇の肥大、下顎が突出することによる噛み合わせの異常が引き起こされるようになります(先端巨大症様顔貌)。手足の容積も肥大化していくため、靴が小さくなる・指輪が入らなくなったといった変化がみられるようになります。
これらの容貌の変化以外にも、多汗や手根管症候群、睡眠時無呼吸症候群、高血圧、糖尿病、心不全などさまざまな症状を引き起こします。原因となる下垂体腫瘍が大きくなると頭痛が生じるようになり、上部の視神経を圧迫すると視力や視野の異常がみられることもあります。
さらに、腫瘍が大きくなると正常な下垂体を圧迫するため、そのほかのホルモン分泌の低下を伴うことも多く、生理不順や性欲低下などの症状が生じることがあります。
検査・診断
先端巨大症が疑われるときは以下のような検査が行われます。
血液検査
成長ホルモンが過剰に分泌されているか調べるために血液検査を行います。成長ホルモンによって産生されるインスリン様増殖因子-Iも同時に測定します。
また、ブドウ糖を摂取して成長ホルモン分泌量の変化を調べる“経口ブドウ糖負荷検査”も行われるのが一般的です。通常はブドウ糖を摂取すると成長ホルモンの分泌は抑制されますが、先端巨大症では抑制はみられません。
画像検査
先端巨大症の原因のほとんどは下垂体腫瘍であるため、病変の有無や大きさなどを評価することを目的としてCTやMRIによる画像検査が必要になります。また、手足の肥大などによる骨や関節の変化がある場合などはX線検査を行うこともあります。
治療
先端巨大症の根本的な治療は、発症原因である下垂体腫瘍を手術で摘出することです。通常は、鼻から脳の中(下垂体)へ器具を挿入して腫瘍を摘出する“経蝶形骨洞下垂体腫瘍摘出術(けいちょうけいこつどうかすいたいしゅようてきしゅつじゅつ)”が行われます。しかし、腫瘍が浸潤するなどして手術が難しい場合は、成長ホルモンの分泌を抑えるための薬物療法や放射線治療が行われることもあります。さらに合併する高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などに対する適切な治療も重要です。
予防
先端巨大症を予防する方法は確立していません。一方で、先端巨大症は適切な治療を行わないと、さまざまな合併症を引き起こして命の危険をもたらすこともある病気です。また、容貌の変化を含む多くの症状を引き起こすため、精神的な負担がかかる病気でもあります。
しかし、この病気は徐々に進行していくため、自分では長期間発症に気付かないケースも少なくありません。昔の写真と顔つきが違う・指輪や靴などが段々きつくなっているなどの変化を感じた場合や、先端巨大症にみられる多くの合併症を複数診断されている場合には早めに診察を受けましょう。
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