概要
多発性内分泌腺腫症とは、膵臓や副甲状腺、副腎などの内分泌腺組織において、良性腫瘍や悪性腫瘍が多発性に出現する病気を指します。
遺伝子異常が原因であり、大きく1型と2型に分類されています。複数の臓器に異常がみられることからさまざまな症状が起こる可能性があります。
複数の臓器異常は必ずしも同時に出現するとは限らず、時を経てそれぞれに出現する場合もあります。
日本国内での患者数は、1型、2型それぞれ約4、000人と推測されています。
原因
多発性内分泌腺腫症は、遺伝子異常が原因で発症します。身体の中には多くの内分泌腺組織が存在しますが、障害を受ける臓器・遺伝子に応じて、1型と2型に大きく分類されます。
多発性内分泌腺腫症1型
MEN1と呼ばれる遺伝子に異常が生じています。このタイプの多発性内分泌腺腫症では、主に下垂体、副甲状腺、膵臓においてホルモン分泌が過剰になります。
多発性内分泌腺腫症2型
2型はさらに、2A・2B・家族性甲状腺髄様がんの3つに分類されます。1型と同様、遺伝子異常が原因となっており、RET遺伝子における遺伝子異常をもとにして発症します。
副甲状腺や副腎においてホルモン分泌が過剰な状況が生じたり、甲状腺に髄様がんと呼ばれるがんが生じたりします。
遺伝子異常を原因として引き起こされる多発性内分泌腫症ですが、家族内に遺伝することがあります。常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式をとり、理論的には50%の確率で病気が次世代に遺伝します。
症状
多発性内分泌腺腫症では、複数の臓器に異常がみられます。
1型
副甲状腺の異常に関連してカルシウムのバランスが崩れ、腎結石や胃十二指腸潰瘍、疲れやすさ、便秘、骨折などさまざまな症状が現れます。
また、下垂体と呼ばれる脳の一部が異常を示すことから、顔貌(顔つき)の変化や肥満、月経不順や不妊、高血圧や糖尿病などの症状・病態が引き起こされることがあります。
高血圧や糖尿病が持続し、脳血管障害や虚血性心疾患を生じることもあります。さらに、膵臓の異常が出現し、胃潰瘍や低血糖などの病態が生じます。
2型
副甲状腺に異常を示すこともありますが、副腎や甲状腺にも異常を伴うことが特徴です。副腎に異常が生じることで、過剰な高血圧、冷や汗、頭痛などが引き起こされます。
甲状腺の障害としては、髄様がんと呼ばれるタイプの悪性腫瘍が発症することがあります。
検査・診断
多発性内分泌腺腫症は、複数の臓器にまたがる内分泌系の異常をもとにして病気の存在が疑われます。そのため、診断のためにはまず内分泌の分泌状況を確認するために、血液検査や尿検査が行われます。
また、多発性内分泌腺腫症は遺伝子の異常が原因となり発症する病気であるため、血液を用いて行う遺伝子検査なども検討されます。
治療
多発性内分泌腺腫症では、異常な腫瘍が存在している臓器に対しての手術療法が行われます。
手術を行うことで異常な腫瘍を摘出することが目的です。状況に応じて、薬物療法や放射線療法が行われることもあります。
また、多発性内分泌腺腫症は遺伝性疾患としての側面も有しています。そのため、遺伝カウンセリングなどが検討されることもあります。
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