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インタビュー

光線力学療法とは? 光線力学の仕組み

光線力学療法とは? 光線力学の仕組み
梶本 宜永 先生

大阪医科大学附属病院 脳神経外科 特任教授

梶本 宜永 先生

この記事の最終更新は2016年02月01日です。

光線力学という言葉を聞いたことはありますか? 実はこの光線力学、がん脳腫瘍に対する新しい治療法や検査法として、現在研究が進められている医療なのです。光線力学には2つの種類があります。一つは治療に用いられる光線力学療法(PDT)、もう一つは診断に用いられる光線力学診断(PDD)です。この2つのもととなる光線力学の仕組みと現在の治療への応用について、大阪医科大学脳神経外科特任教授の梶本宜永先生にお話をお聞きしました。

光感受性物質(光に反応する物質)は悪性新生物(がん細胞)などの悪い細胞に集まる傾向があるため、それをあらかじめ患者さんに投与し、そのあとで光感受性物質が集まっている部位にのみレーザー光を照射し、活性酸素を発生させます。その活性酸素が悪性新生物を攻撃することで、正常な組織を傷つけることなくがんを治療することができます。このことを光線力学療法といいます。

光線力学療法は悪性(体に何らかの害を及ぼす危険性がある性質を持つもの)の脳腫瘍など、難治性の病変に対する画期的な治療法とされており、従来のレーザー治療と異なり他の正常組織を傷害することなく、病変部位だけを選択的に治療できる新たながん治療の方法として近年注目を集めています。

光線力学が応用されているのは光線力学療法だけではありません。これを用いると、がんがどこにあるかが分かります。それにより診断にも用いることができるのです。このことを光線力学診断と言います。光線力学診断は特に脳腫瘍の診断で活躍しており、詳細は記事2『脳腫瘍を手術中に光らせることのできる「光線力学診断」とは』で説明します。

光線力学診断(PDD)に使われる光線は主にレーザーですが、LEDであったり、必要なフィルタを通した通常の光源の光であったりと、使用される光線の種類は個々の患者さんの状態によって異なります。

一方で、光線力学療法(PDT)に関しては光のパワーを集中させる必要があるのでレーザーを用いることがほとんどです。ただし、患部が広範囲で集中照射をする必要がない場合にはLEDを使うこともあります。

光感受性物質の薬剤のひとつに、5-ALA(アミノレブリン酸)を使った術中蛍光診断(PDD)があります。5-ALAは脳腫瘍の手術の際に非常によく日本に普及している物質です。

5-ALAは体の中にもともと存在するうえ、経口で飲めるのでショックもなく、サプリメントとしても売られています。植物に撒く肥料としても売られており、非常に一般的なアミノ酸に近いものです。この5-ALAは、腫瘍によく取り込まれ、腫瘍細胞内でポルフィリンという光感受性物質が大量に作られます。

日本で光線力学療法(PDT)として認可されているのはタラポルフィンナトリウムという日本初の物質で、脳腫瘍への適応も2016年、認可が通りました。大阪医科大学も年内を目安に5-ALAによる光線力学療法(PDT)の導入を検討しています。

タラポルフィンナトリウムは青紫色の光を当てると、赤く光るという特徴を持ちます。光線力学療法(PDT)の場合、当てる光は赤い色を使うのが標準です。これはなぜかというと、青色の光は組織の表面までしか浸透しないからです。一方、赤い光は体の中を通りやすい性質を持ちます。深いところまで光線力学療法(PDT)をきかすためには赤色のレーザーが適しているのです。

光線力学療法は悪性の脳腫瘍の治療に対しての応用が研究されています。

悪性脳腫瘍の治療は通常、手術で腫瘍を摘出します。しかし、腫瘍が大きければ大きいほど広範囲にわたった摘出が必要となるため、脳機能障害を起こしてしまう可能性も高まります。そのため、重要な機能を持っている脳の組織に関しては、腫瘍が浸潤していても切除することはできません。

このように、重要な部分でありながらなおかつ腫瘍が浸潤しているところに対して、正常な組織を侵すことなく悪性腫瘍のみを治療する光線力学治療は、脳腫瘍の治療に対しても非常に効果的だといえます。

脳腫瘍は浸潤性(周辺の組織に病変が侵出する)のため100%は治せませんが、光線力学療法(PDT)によって患者さんの生命予後(患者さんの寿命)を延ばすことが期待できます。

光線力学診断(PDD)が適応されている疾患は脳腫瘍や膀胱がんのほかに、子宮頸がん、早期肺がん、早期食道がん胃がん皮膚がんなど、組織を大きく切除できないがんの治療に対して主に使用されています。皮膚がんはアメリカでは認可されており、前立腺がんなどの疾患にも色々トライアルされています。とくに膀胱がんはかなり臨床試験が進んでいる状態です。

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