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インタビュー

小児がんに対する放射線療法の特徴

小児がんに対する放射線療法の特徴
淡河 恵津世 先生

久留米大学 放射線治療センター 教授

淡河 恵津世 先生

目次
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小児がんとは、小児がかかるがん(悪性腫瘍)の総称です。基本となる治療方針は、まず化学療法を行い、手術で腫瘍を切除し、残った腫瘍もしくは切除ができないがんに対して放射線療法を行います。放射線療法とはどのような治療か、そして小児がんに対する放射線療法の特徴について、久留米大学医学部の淡河恵津世(おごう えつよ)先生にお話を伺いました。

放射線療法では、一般的にX線と電子線を用いた通常照射を行います。そのほかに、粒子線治療(陽子線・重粒子線)と、中性子線治療もあります。しかしながら現時点では、中性子線治療を行う施設と適応は限られています。

小児がんの陽子線治療が2016年4月より保険適応になりました。陽子線治療は先進医療に指定されており、約300万円の自己負担が必要でしたが、小児がん患者の負担が大幅に軽減されるようになりました。重粒子線治療に関しては、同時期に骨軟部腫瘍への保険適応になったため、小児においても切除不能な悪性骨軟部腫瘍(骨肉腫軟骨肉腫など)は重粒子線治療が受けやすくなっています。線量の集中性に優れているため、晩期有害事象を軽減できる可能性が高く、局所線量も上げることができますが、いずれも治療施設が限られているため、充分な検討が必要であると考えます。

【放射線療法の種類】

  • 通常照射(X線・電子線)
  • 粒子線治療(陽子線・重粒子線)
  • 中性子線治療

化学療法と組み合わせて行う化学放射線療法や、手術療法と組み合わせて行う方法(術前照射・術中照射・術後照射)などがあります。機械の種類によって、腫瘍に集中的に線量を集め、周囲の正常組織への障害を軽減することも可能になってきました。

放射線療法は、外部照射(体の外から放射線をあてる)と、内部照射(体の内側から、がんやその周辺に放射線をあてる)に大別できます。症例によっては、外部照射と内部照射を組み合わせて治療することもあります。

ほとんどの放射線治療は、三次元治療計画に基づき進められます。つまり、はじめにCT検査を行い、その結果をもとに三次元的に標的となる臓器や正常組織への照射線量を決定するのです。

CT検査画像

CT検査の画像 画像提供:淡河恵津世先生

放射線療法は、治療中に痛みや苦痛を感じるものではありませんが、放射線をあてている間は体を動かすことができません。治療の種類や患者さんのケースにもよりますが、通常10〜30分程度は静止状態を維持する必要があります。

通常の放射線療法は、週5回(月〜金)毎日行います。がん種によって放射線照射の合計回数を決定しますが、一般的には5〜6週間継続します。近年は、放射線の局所線量を上げることで短期間かつ集中的に行う放射線療法も実施されおり、その治療法にバリエーションが生まれています。

小児がんの一部である白血病の全身照射、脳腫瘍神経芽腫(しんけいがしゅ)に対しては、以下のように放射線療法を行います。

全身照射(骨髄移植の前処置として行う)

期間:1日2回の分割照射で、1~3日間照射する

  1. 頭部固定具を作成
  2. 治療計画用CT撮影 → 治療計画装置転送 → 治療計画 → 検証
  3. 照射初日:頭部固定具を装着して治療計画と同等に治療できるか確認し、照射
  4. 照射継続時も頭部固定具を装着して行う

期間:腫瘍によっても異なるが、15~30回程度

高リスク群原発巣:11~17回

高リスク群転移巣:転移巣であっても可能な限り照射を検討する 11~13回程度

特殊な症例:新生児の4S期肝転移へは緊急照射の適応になる 2~4回

放射線療法は、3歳以上が適応年齢となります。3歳未満で適応となるのは、おもに生命にかかわる症例であり、例としては保存的治療抵抗性の血小板減少を伴う巨大血管腫(カサバッハメリット症候群)・新生児の腹部膨満で発見される神経芽細胞腫の肝転移・高リスクの脳腫瘍などのケースなどです。

一般的に小児がんに対する放射線療法では、大人と同じく週に5回ほど、計30回にわたって放射線を照射して治療を行います。しかし1回の放射線量は大人よりわずかに少なく、たとえば大人が1回2グレイ(放射線の単位)だとすれば、子どもは1.5〜1.8グレイほどです。基本的には、できるだけ少ない量・回数の照射を目指します。

また、基本的には化学療法(+手術による腫瘍切除)を経て放射線をあてるため、大人よりも大幅に少ない放射線量で治療をコントロールできるケースもあります。

放射線療法は一般的に「局所的に治療できる」と認識されています。ところが小児がんの場合は、比較的広い範囲の組織に放射線を照射することが多いです。なぜなら、小児は成長過程にあるため、一部の組織だけに放射線を照射すると変則的な成長障害が起こる可能性があるからです。例としては、脊椎へ不均等に照射をすることによって側弯症(脊椎が横に曲がり、脊柱自体がねじれる疾患)のリスクが高まることがあります。

小児慢性疾患医療費助成制度とは小児慢性特定疾患に該当する18歳未満の子どもが医療費の補助を受けられる制度です。対象となる小児慢性特定疾患には悪性新生物(がん)が含まれているので、がんが発症した場合、助成の対象となります。

小児がんに対する放射線療法では、以下の条件を十分に考慮し、治療線量を決定します。

  • 年齢
  • 病変部位
  • 周辺の正常組織の状態(転移リスク)
  • 脳や体の発育・成長
  • 生命予後
  • 化学療法の影響

一般的には、各正常臓器に対する耐容線量(障害を受けずに耐えうる放射線の許容量)が定められています。その基準と上記の条件に加えて、副作用や合併症を加味し、最終的な治療線量を決定します。

がんの治療では将来子どもを望む場合、放射線療法を行う前に精子や卵子を保存しておく方法があります。小児がんの場合、患者さんが生殖機能を持っており、かつ希望があれば人工授精ができますが、大きな費用がかかります。もし患者さんが生殖機能を持つ前であれば、そもそも精子や卵子が出ていないため、人工授精のために保存することはできません。このように、小児がん患者さんの人工授精は、条件と費用の面で容易ではないことを理解していただけたらと思います。

放射線療法で放射線を照射している間は、治療室で1人になりますし、静止状態を維持しなくてはなりません。3歳未満の場合は化学療法が主体になるため放射線療法を行うことはまれですが、治療台に1人にする場合は、麻酔・鎮静剤などによる鎮静が必要です。鎮静をかけると、食事やミルクの時間に影響が出たり、徐々に必要な鎮静剤の量が増えたりすることで、子どもや母親にストレスがかかります。

特にイソゾール(注射の全身麻酔薬)は吐き気を覚えることもあり、「イソゾールはやめて。2分間じっとして眠るから」と子ども自身が拒否するケースも見受けられます。

3歳〜小学校低学年までの場合、個人差もありますが治療室で1人になると不安になる子も多いので、リラックスさせる工夫が必要です。基本的には静止さえできれば痛みなどはないので、子どもが「この治療は痛くない」と理解するようになれば、麻酔なしで放射線照射が可能です。(当院では、固定具にキャラクターの絵を描く、治療中に絵本などの読み聞かせをするなど、できるだけ麻酔をしない工夫をしています。)

小学校高学年〜中学校になれば、静止状態の維持はたやすくなります。教育を受ける機会をできるだけ減らさないため、院内学級などの時間配分を考慮して治療を進めます。

小児がんに対して放射線治療を行うことによる副作用として、照射中や照射後早期にあらわれる「急性障害」と、数か月〜数十年後に明らかとなる晩期障害が挙げられます。

  • 発症時期:照射中~照射後早期
  • 経過:可逆性(状態がもとに戻りえる)、照射を終了もしくは中断すれば1〜2週間のうちに多くは消失する
  • 発症要因:組織の再生障害が起こるため
  • 例:皮膚炎口内炎腸炎など
  • 発症時期:照射後数か月~数十年
  • 経過:進行性・不可逆性(もとの状態に戻らない)
  • 発症要因:微小血管に障害が起こるため
  • 例:組織の萎縮・線維化、出血、硬化

子どもに放射線療法を行うと、さまざまな機能的な障害が起こりえます。

  • 小児の成長・発達への影響
  • 内分泌(ホルモン)機能への影響
  • 生殖機能への影響
  • 遺伝的影響
  • 精神・神経学的影響(精神医学的影響・知能障害に関する影響)

主体となる化学療法で用いる抗がん剤のなかには、生殖器、特に卵巣に影響を及ぼすものがあります。そこへ放射線が照射されることで、卵母細胞(精子を受精して卵子のもとになる細胞)が壊れてしまい、成長したときに生理がこない、出産を望めないなどのケースにつながります。

記事1『小児がんのおもな種類と治療方針』でお話ししたように、徐々にがんサバイバーが増えています。そのなかで、がんサバイバーの生殖医療は大きな課題になっています。

化学療法(抗がん剤治療)の後に放射線療法を行うと、二次性発がんのリスクが高まります。たとえば乳児の頃に放射線治療を行い、10歳で良性腫瘍ができたケースがありました。現在国内のさまざまな施設で、放射線の照射量を減らす、もしくは化学療法だけで治療を行う方法の研究が進められています。

カサバッハメリット症候群は、小児(特に新生児期〜乳児期)に特有かつ非常に希少な疾患で、致命的なケースや、手足をアンプテーション(切断)しなくてはならないケースもみられます。これまでに5例(2017年現在)ほどの症例を経験しました。ある子どもはカサバッハメリット症候群によって手に腫瘍ができ、絶え間なく輸血が必要な状態でした。しかし4~5週にわたる間欠的な放射線療法が大きな効果を示し、アンプテーションが不要になり、現在では1年に1回の検診で済むまでによくなりました。このように、手術が難しい症例などに対して放射線療法が効果を示すケースもあるのです。

先述の通り放射線治療はCT画像をもとに三次元的に照射線量を決めていますが、今後は、成長障害のリスクや患者さんの予後を加味した治療計画を立てることができれば理想的であると考えます。

これまで、小児がんの治療に関して集約化するのか・均てん化するのかが議論されてきました。均てん化とは、全国どこでも標準的な治療を受けられるようにすることをいいます。現在、主たる大学病院では治療を均てん化させる動きがあります。小児がんのような希少疾患は、治療を集約化させると遠方の患者さんが治療を受けにくくなってしまうからです。もし治療を受けられたとしても、治療のために家族が離れ離れに暮らすといった状況は望ましくありません。実際には、小児がんの治療を受けられる病院が少ない地域もありますので、今後はそのような地域差も縮めていくことが望まれます。

アメリカのがんセンターでは、がんを患う子どもたちが病院で描いた絵を売ったなかからドネーション(寄付)を集め、子どもの活動支援金にあてる取り組みをしています。当院では同様の活動を2010年から始め、寄付を集めて「メイク・ア・ウィッシュ(難病と闘う3〜18歳未満の子どもたちを支援するボランティア団体)」などに送っています。活動を続けることで、次の誰かにつながり、子どもたちの支えに少しでもなれたらと考えています。

放射線療法は苦痛が伴うものではありません。また、今後は治療機器が進歩することで、より集中性が高く正常組織への影響が少ない方法で照射できるようになっていくでしょう。放射線療法を正しく理解していただき、怖がらずに治療を受けていただきたいと思います。そして治療を受けた患者さんがサバイバーとして活躍できるように、私ども放射線治療医師・技師・看護師はチームを作って頑張っていきたいと思っています。

淡河恵津世(おごう えつよ)先生

もし有害事象(成長・発育への影響、知能障害など)が出たとしても、再生医療の進歩、各種薬剤の進歩により普通の生活ができる時代もくると思います。まずはしっかりとがん治療を受けて、未来に向かって頑張っていただきたいと希望します。

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