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インタビュー

皮膚の悪性リンパ腫(菌状息肉症など)の治療とは?

皮膚の悪性リンパ腫(菌状息肉症など)の治療とは?
宮垣 朝光 先生

聖マリアンナ医科大学 皮膚科 准教授

宮垣 朝光 先生

体の免疫機能を司るリンパ球は、皮膚や消化管にも常在し、私たちの体を刺激や異物から守っています。「皮膚の悪性リンパ腫」の多くは、このような皮膚に常在するリンパ球が悪性化したものと考えられています。記事1『画像でみる皮膚の悪性リンパ腫(菌状息肉症など)の分類と症状』では、菌状息肉症やセザリー症候群など、皮膚の悪性リンパ腫の種類をご紹介しました。皮膚の悪性腫瘍には現在どのような治療があるのか、今後の展望について、東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線レーザー科の宮垣朝光先生にお話を伺いました。

皮膚悪性リンパ腫の治療は、種類や病期、患者さんの年齢によって様々な方法があります。そのなかで唯一、皮膚悪性リンパ腫の根治もしくは長期寛解(症状が落ち着き安定した状態)を目指せる治療法として、骨髄移植(造血幹細胞移植)があります。

しかし骨髄移植を行うには、健康な臓器および、一定以上の体力・免疫力が必要なため、一般的には患者さんが若年者の場合に限られます。皮膚悪性リンパ腫の患者さんの多くは中高年の方であることから、基本的には進行を抑制する「対症療法」で治療を行います。

下記の図は、皮膚悪性リンパ腫の8〜9割りを占める皮膚T細胞リンパ腫の治療法を可視化したものです。

 

リンパ腫の治療法

菌状息肉症の初期段階(紅斑期)と診断された場合、ステロイド外用・紫外線照射による治療を中心に、経過観察を行います。紫外線照射は特に効果が高く、初期の菌状息肉症であれば1週間〜1か月に1度のペースで照射を行うことで、おおよそ長期寛解が望めます。この紫外線は皮膚治療に必要な領域だけに波長を絞ったもので、治療も短時間で済むことから、比較的副作用が少ないことも利点です。

扁平浸潤期の菌状息肉症に対しては、まず上記の治療を行いますが、それでも病状のコントロールが困難な場合には、レチノイド(ビタミンA誘導体)やインターフェロンガンマ(体内に侵入した外敵を攻撃するために細胞が作り出す物質)による薬物治療を行います。

レチノイド、インターフェロンガンマでも効果が出ない場合、ステロイドの内服、HDAC阻害薬(ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬)による治療を行います。

前述したいずれの治療でも効果が思わしくない場合には、古典的な抗がん剤の内服や、分子標的薬(がん細胞を狙って効果を発揮する抗がん剤)である抗CCR4抗体の投与、電子線照射などによる治療を行います。

セザリー症候群は予後不良のリンパ腫であり、まずは菌状息肉症の進行期の治療と同じく、ステロイド外用と紫外線照射に加えてレチノイド、インターフェロンガンマによる治療を行うことが多いです。それでも症状のコントロールができない場合には、HDAC阻害薬あるいは古典的な抗がん剤や分子標的薬による治療へ移行します。

皮膚原発未分化大細胞リンパ腫では、単発の結節が発生していることが多いため、まずは外科的に切除を試みます。外科的な切除が難しい場合や多発している場合には、電子線照射による治療を行います。

成人T細胞白血病・リンパ腫は前述の通り、血液・全身性の疾患であり、症状によって4つに分類される複雑な疾患です。治療の方法は患者さんごとに異なりますので、専門医の診断を仰ぎましょう。

前述のように、皮膚悪性リンパ腫は診断が非常に難しい疾患です。特に紅斑期の症状は、他の皮膚疾患、たとえばアトピー性皮膚炎乾癬などと非常に酷似しています。

しかし、アトピー性皮膚炎や乾癬の治療に用いられる「免疫抑制剤」は、がんを急激に成長させてしまうため、がん患者さんへの投与は禁忌とされています。もし、皮膚悪性リンパ腫の患者さんがアトピー性皮膚炎などと誤診されて免疫抑制剤を服用すると、症状が急激に進行してしまいます。

このような事態を避けるために、皮膚疾患にかかわる医療従事者は、皮膚悪性リンパ腫の存在、そして免疫抑制剤の使用について注意することが大事です。

入院している患者さん

前述した分子標的薬(抗CCR4抗体)のはしりである抗CD20抗体(リツキサン)はB細胞リンパ腫の治療に広く使われており、必須の治療薬といえるほどの効果を上げています。菌状息肉症やセザリー症候群に使用されている抗CCR4抗体も、私自身は皮膚科医として、よい印象を受けています。今後、皮膚悪性リンパ腫の治療において、主流になっていくと思われます。

また、最近リンパ腫に対して使用されるようになった別の分子標的薬であるブレンツキシマブベドチンは、CD30抗体に細胞を傷害する毒物を融合した薬剤で、現在リンパ節原発の未分化大細胞型リンパ腫の治療としては保険適用になっています。将来的には、皮膚原発の未分化大細胞型リンパ腫の治療でも保険適用になる可能性が考えられます。

皮膚悪性リンパ腫の治療法については現在、研究の過程にあります。現在進められている研究から、分子標的薬などを含めた新たな治療法が登場していくことを期待しています。

皮膚悪性リンパ腫は、他の皮膚疾患と見間違えやすく、非常に診断の難しい疾患です。しかし多くのケースでは予後がよく、大きな心配はいりません。この記事でご紹介したような異常が皮膚に現れて不安を感じたときには、なるべく早い段階で皮膚科医に相談することを推奨します。

宮垣朝光先生

 

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    宮垣 朝光 先生

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