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インタビュー

悪性リンパ腫の原因ー予後を左右する遺伝子タイプとは

悪性リンパ腫の原因ー予後を左右する遺伝子タイプとは
畠 清彦 先生

山王メディカルセンター 予防医学センター

畠 清彦 先生

この記事の最終更新は2016年04月02日です。

がん剤の進歩に伴い、救える患者さんが増えてきている一方、抗がん剤が効かない患者さんも出てきてしまいます。効果がでない患者さんやすぐに再発してしまう患者さんの原因が遺伝子にあるということが少しずつ解明されつつあり、それにより治療薬の開発も進んでいます。がん研有明病院 血液腫瘍科部長 畠清彦先生に、原因と考えられている遺伝子と治療薬の開発状況についてご解説いただきました。

B細胞性リンパ腫の治療は、リツキシマブを導入したことで生存率が20%前後も改善されました。しかし患者さんのなかには、最初から抗がん剤が効かない方、また治療後1年以内に再発してしまう方もいます。このような患者さんは別の治療を行っても効果がなく、予後(病気の経過についての見通し)が非常に悪いことがわかっています。

そのような患者さんが出てきてしまう理由が、遺伝子にあるということが少しずつ解明されてきています。たとえば、B細胞性リンパ腫の患者さんは遺伝子によってGCB*タイプとnon-GCBタイプに分類されることがわかってきました。

*GCB:germinal center B-cell(胚中心B細胞)

はじめから抗がん剤が効かない、もしくはすぐに再発してしまう方がnon-GCBタイプに分類され、予後が悪いとされています。このような解析の進歩にともない、現在non-GCBタイプの患者さんにも効くと期待される薬がいくつか開発され、治験が進んでいます。

  • イブルチニブ(BTK阻害剤):B細胞の過剰な細胞生存シグナルの伝達を抑え、リンパ節などにおける過剰なB細胞の増殖を阻止します。現在、R+CHOP療法にイブルチニブを加えた群と加えない群での治験が行われています。
  • レナリドミド:R+CHOP療法との併用によって、非ホジキンリンパ腫に効果があると期待されています。non-GCBタイプの患者さんにのみに効果があらわれるため、現在、そのような患者さんだけを集めた治験を行っています。

どちらの薬もnon-GCBタイプに効果があると期待されています。イブルチニブは治験が終了しており、現在結果を解析しています。レナリドミドは2015年に治験が始まったため、約2年後に結果が発表される予定です。しかし、どちらの薬もnon-GCBタイプのすべての方に効果があらわれるかはわからないため、今後も研究を進めていく必要があります。いずれにせよ、2〜3年または4〜5年ごとに新しい治療薬が開発されているので、今後も悪性リンパ腫の治療が進歩していくことが期待できます。

慢性骨髄性白血病の例では、抗がん剤がはじめから効かない方やすぐに再発してしまう方には造血幹細胞移植*を行います。2000年までは移植を行った患者さんは年間1000人ほどいましたが、2015年は50人程度でした。薬の開発によって、移植をしなくてもよい方が増えてきているのです。しかしながら、薬による治療を続けることが必要となるため、一部の血液がんは慢性化しているともいえるのです。血液がんの慢性化については次の記事「今後のがん治療はどのように進歩していくのか-血液がんの慢性化とは」で述べます。

*造血幹細胞移植:造血幹細胞を多く含む細胞(骨髄や末梢血(まっしょうけつ)、など)を移植する治療法です。血球をつくる力や免疫系を回復させるために行われます。

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