抗がん剤の進歩により、造血幹細胞移植を行わずに薬によってがんをコントロールできる患者さんが増えてきました。これは薬で血圧や血糖値をコントロールする高血圧病や糖尿病と同じであるともいえます。血液がんの慢性化と今後の抗がん剤治療の方向性について、がん研有明病院 血液腫瘍科部長 畠清彦先生にご解説いただきました。
慢性骨髄性白血病では治療効果が高い、良い薬が開発されることによって、造血幹細胞移植を行わずに薬で血液がんをコントロールできる患者さんが増えてきました。しかし、現在は薬をやめた場合に再発してしまうのか、どうなるのかというデータがないため、やめることができない状況にあります。それを受け、欧米などでは薬をやめた場合の影響に関する研究(ストップ試験)が進められています。2016年現在、結果はまだでていませんが、今後のこの研究の結果を受け、薬での治療期間について適正に検討することができると期待されます。
今後は、はじめから抗がん剤が効かない方に焦点を当てた薬が開発されるのはもちろんですが、効果がある方に対してもさらに短時間で効く薬の開発が進むと考えられます
短時間で薬をやめることができれば、副作用も少なく抑えられるからです。たとえば、ホジキンリンパ腫のABVD療法(参考記事「悪性リンパ腫の治療-病型によって治療法は異なる」)を受けた30〜50歳以上の患者さんは、30年後に心筋梗塞・虚血性心疾患・心不全になる率が正常の方より30倍以上高くなるといわれています。また抗がん剤治療により、二次がん(抗がん剤の影響で遺伝子に傷がつき、二次的に発症するがん)が約10〜15倍起こりやすくなるといわれています。
非ホジキンリンパ腫は高齢の方がかかりやすいため、30年後の影響に関するデータを得るのは難しいですが、非ホジキンリンパ腫の治療でも同様の影響があらわれると考えられます。ですから、今後は、副作用(晩期有害事象)を残さないような薬を開発していかなければならないと考えています。また、従来型の抗がん剤(化学物質)を使用しない、抗体医薬(参考記事「悪性リンパ腫の治療-病型によって治療法は異なる」)のみを用いた抗がん剤治療への移行を目指しています。
山王メディカルセンター 予防医学センター
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