概要
神経芽腫とは、自律神経の1つである交感神経から発生する腫瘍です。交感神経細胞が存在する交感神経節や腎臓の上に位置する副腎で発生する頻度が高いと報告されています。
小児、とくに1歳までの乳児で診断される場合が多く、日本では毎年約150~200名が神経芽腫と診断されています。また、小児の固形腫瘍では脳腫瘍に次いで2番目に多く認められます。
原因
多様な悪性度を示す神経芽腫ですが、その予後に関連する因子、遺伝子がいくつか報告されています。まず挙げられるのは診断時の年齢です。一般的に、診断時年齢が1歳未満であれば予後良好であるといわれています。
そのほか、MYCNという遺伝子の増幅や染色体数の異常も予後を左右する重要な因子と考えられており、腫瘍の悪性度を判定する際にも取り入れられています。
症状
神経芽腫が発生初期の段階では、無症状であることがほとんどです。進行すると、お腹が異常に大きい、お腹に硬いしこりがあるといった症状が認められる場合があります。
幼児ではすでに転移している症例も多く、発熱、貧血、頻繁にぐずる、歩かない、まぶたが腫れる、骨の痛みなどの転移した臓器に基づく多様な症状が認められます。
検査・診断
神経芽腫が疑われる場合には、まず尿検査と血液検査が実施されます。
神経芽腫では、カテコールアミンという物質を産生する腫瘍細胞が増殖します。カテコールアミンは、体内で代謝されたのち、尿中にHVA(ホモバニリン酸)やVMA(バニリルマンデル酸)として排出されます。そのため、一部の神経芽腫を除き、尿検査にて確認することが可能です。
血液検査では、NSE(神経特異エノラーゼ)、LDH、フェリチンなどが高値を示すことがあります。
血液検査や尿検査で神経芽腫が疑われる場合、画像検査にて腫瘍の発生部位を特定します。画像検査には超音波検査、単純エックス線検査、CT、MRIといったものが挙げられます。
また、放射性同位体(ラジオアイソトープ)を利用したMIBGシンチグラフィ検査では、腫瘍の発生部位だけでなく、全身への転移の有無を調べることができます。
このほか、神経芽腫は骨や骨髄に転移しやすいことから、骨髄検査が行われます。また、確定診断にあたっては、摘出した腫瘍や生検で一部採取した腫瘍組織を顕微鏡で確認する病理診断が実施されます。
治療
神経芽腫は、自然と小さくなる良性のものから、転移を起こしやすい予後不良のものまで、その悪性度はさまざまです。腫瘍の悪性度、ならびに進行具合によって、治療方法は大きく異なります。日本においては、神経芽腫国際病期分類(INSS分類)による臨床病期(近年さらに新しい分類として治療前の画像診断を加えた国際神経芽腫リスクグループ病期<INRGSS>も利用されています)、年齢、腫瘍の遺伝子診断(MYCN遺伝子増幅や染色体数の異常など)、国際病理分類に基づいて、低リスク、中間リスク、高リスクの3つに分類されます。このリスク分類に応じて、治療方法が決定されます。
低リスク群の場合、通常は腫瘍摘出手術のみの治療となります。周囲の臓器との関係で診断時に腫瘍全摘出が難しい場合などは抗がん剤を用いた比較的軽度の化学療法を先行する場合もあります。中間リスク群の場合、中等度強度の化学療法が行われ、腫瘍を小さくしたのちに手術を行います。
高リスク群の場合、原発腫瘍が周囲の臓器や血管を巻き込んでいたり、転移していたりすることが多く認められます。抗がん剤による化学療法と手術による外科療法と放射線療法の組み合わせによる集学的治療が必要です。
まずは強力な化学療法を行い、原発巣ならびに転移巣の腫瘍を小さくします。その後、手術での全摘出を目指すことになります。術後も化学療法の継続や自家造血幹細胞移植を併用した抗がん剤治療(患者自身の造血幹細胞を前もって採取しておき、強力な抗がん剤治療を行ったのちに移植を行い、正常な造血機能を回復させる治療方法)の実施が必要不可欠です。
原発腫瘍切除部位には放射線照射が行われます。また、近年は化学療法と自家造血幹細胞移植後に手術と放射線照射を行う方法(遅延局所療法)も行われています。
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