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インタビュー

良性脳腫瘍の治療のポイントは? 腫瘍の全摘出を目指す札幌柏葉会病院

良性脳腫瘍の治療のポイントは? 腫瘍の全摘出を目指す札幌柏葉会病院
寺坂 俊介 先生

札幌柏葉会病院 理事長・院長

寺坂 俊介 先生

目次
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良性脳腫瘍(りょうせいのうしゅよう)の治療方法は、手術が中心となります。主に、腫瘍が大きくなって症状が出ている場合や、大きくなる兆候がみられる場合に、手術が検討されます。それ以外の場合は、通院を続けながら経過観察することもあります。札幌柏葉会(はくようかい)病院は、手術での脳腫瘍全摘出を目指しながら、より安全な治療の提供に努める病院です。

今回は、良性脳腫瘍の治療のポイントを述べるとともに、腫瘍を全摘出することの重要性について、札幌柏葉会(はくようかい)病院理事長・院長の寺坂俊介先生に伺いました。

良性脳腫瘍の治療方法は、基本的に手術が中心となります。そのサポートとして放射線治療が用いられることもあります。

治療の方法は、腫瘍が発生する場所によって異なります。たとえば、脳を包む膜に発生する“髄膜腫(ずいまくしゅ)”だけでも、脳の表面にできるものや、頭の底の部分にできる頭蓋底髄膜腫と呼ばれる種類があり、それぞれ腫瘍に到達するための方法が異なります。

良性腫瘍のなかには、あまり大きくならなかったり、自然に少し縮小したりするものがあります。偶然見つかった腫瘍に対しては、症状が出ている場合を除き、初診で手術をすることは少ないです。少し経過をみて、腫瘍が大きくなる兆候があるかどうかを確認してから、治療をするのか、経過観察を続けるのか、方針を決めることになります。

良性脳腫瘍が偶然見つかったとき、何も症状が出ていないにもかかわらず、初診で手術をすすめられた場合、その判断は適切ではない可能性があります。すぐに手術を決めるのではなく、本当に手術すべきかどうか、医師に詳しく確認するとよいでしょう。

脳腫瘍は、小さければ小さいほど、綺麗に摘出することが期待できます。大きくなってから摘出すると、手術の難易度も、後遺症の出る確率も高くなります。

たとえば、それほど大きくない良性脳腫瘍が偶然見つかった場合、半年、1年と経過を観察します。そのなかで、年間に数mmずつ大きくなっている場合には、私は手術をおすすめしています。やがて大きくなることが予想でき、小さい内に手術したほうがよいと考えられるためです。

まったく大きさが変わらなかったり、少し小さくなる兆候があったりする場合は、そのまま経過観察を続けます。患者さんとよく話し合い、適切な情報提供に努めながら、診療を行います。

良性脳腫瘍は、治療が順調に進めば、およそ2週間弱で退院できることが多いです。当院では、ほとんどの患者さんに、退院後は1週間ほど自宅療養していただいています。その後、半日勤務から仕事に復帰し、フルタイムなどに戻していくことをおすすめしています。

良性脳腫瘍の手術をするとき、昔は髪を剃ってから行うことがありましたが、2019年現在は一般的には必要な部分を1cmほどの幅で切るだけで済み、手術の直後から髪で隠すことが可能です。

良性脳腫瘍の治療後や療養中に気をつけたほうがよいことは、特にありません。ほとんど普段どおりの生活に戻ることができます。

良性脳腫瘍の場合、“絶対に全摘出する”という方針にはならないことがあります。仮に半分だけ摘出したとしても、すぐに命に関わるような病気ではないからです。「これ以上摘出したら危険だ」と医師が判断すれば、一部だけ摘出する方法も選択できます。しかし、これ以上は危険と思うレベルは、医師によって異なることがあるのです。そこに、手術の難しさがあります。

当院は、治る可能性のある脳腫瘍は、全て摘出することを目指しています。患者さんは、ご自身の頭の手術をする不安と闘いながら、勇気を出して手術を受けるでしょう。全摘出することで、治療を1回で終えられるのであれば、それを望まれることと思います。できる限り機能を温存する手術を選択し、結果として腫瘍が残ったら、腫瘍はまた少しずつ大きくなっていき、やがてもう一度治療が必要になることもあります。だからこそ、少しでも多く、できる限り全摘出することを目指すことが重要だと私は考えています。

手術のなかで安全だけを意識すると、腫瘍をうまく摘出することができない可能性があります。しかし、思い切って摘出しようとすると、患者さんに後遺症を残してしまう可能性もあります。そのなかでどのようにバランスを取るべきかが、脳腫瘍の治療を行ううえでの課題となります。

だからこそ私たち外科医は、血管や神経、脊髄(せきずい)など、幅広い部位の手術の修練を積むことで技術を磨き続けなければなりません。医師自身の技術が高まれば、危ないから摘出できないと思われた腫瘍でも、摘出できるリスクレベルに変えることが可能になると思います。後輩の医師には、「おごるな。けれども、恐れるな」という言葉でそのことを伝え、少しでも摘出できるところがあれば摘出するという姿勢で手術に臨むよう話しています。

まず、“脳腫瘍”という言葉に驚かないでください。良性の脳腫瘍であれば、治癒できる可能性は十分にあります。また、治癒が難しくても、その病気と共存できる可能性も十分にあります。そのため、その言葉に驚いて精神的に動揺したり、慌てて間違った判断をしたりしないことが重要です。インターネットを使って脳腫瘍に関する情報を調べることもあるでしょう。しかし、それよりも、実際に脳外科の医師と会話をして、納得のいく話を聞けるかどうかが重要だと思います。

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    東京都立多摩総合医療センター 脳神経外科 部長

    おおた たかひろ

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    国立健康危機管理研究機構国立国際医療センター 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授

    はら てつお
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    よしの まさのり

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    佐々総合病院 脳神経外科 部長

    ふくだ あたる

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    東京医科大学病院  脳卒中センター長、東京医科大学 脳神経外科学分野 主任教授

    こうの みちひろ
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    内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、心療内科、神経内科、脳神経外科、呼吸器内科、呼吸器外科、消化器内科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、矯正歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、循環器内科、糖尿病内科、代謝内科、内分泌内科

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