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脳腫瘍とは?種類や検査、治療法について

脳腫瘍とは?種類や検査、治療法について
メディカルノート編集部 [医師監修]

メディカルノート編集部 [医師監修]

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脳腫瘍に対して「とても怖い病気」というイメージを抱いている方は多いのではないでしょうか。脳腫瘍のなかには、確かに悪性脳腫瘍で治療が困難なものもありますが、一方で良性脳腫瘍であり経過観察となるものも多い病気です。

本記事では脳腫瘍の種類や検査、治療法について解説します。

脳腫瘍とは、頭蓋内にできる新生物(異常な増殖組織)の総称です。あとで詳しくお話ししますが、脳腫瘍にはさまざまな種類の腫瘍があり、大きく原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍、また良性脳腫瘍と悪性脳腫瘍に分類されます。

また、脳腫瘍の多くを占める原発性脳腫瘍の年間の発症患者数は約2万人です。人口10万人あたり12〜15人であるという統計データも出ていることから、脳腫瘍は非常にまれな病気であることがわかります(脳腫瘍全国集計調査報告2001〜2004年による統計)。

脳の構造
素材提供:PIXTA

脳腫瘍は遺伝子の突然変異によって発生すると考えられていますが、詳しい発生原因については明らかになっていません。(2018年1月現在)

よく患者さんから「不健康な生活を送っていたからなのか、喫煙をしていたからなのか」などということを聞かれるのですが、何らかの生活習慣によって脳腫瘍が発生するということの証明もされていません。また、なかには家族内で遺伝的に発生する種類のものもありますが発生頻度は非常にまれです。

脳腫瘍にはいくつかの分類方法があり、大きく原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に分けることができます。

脳腫瘍全国集計調査報告(2001〜2004年)によると、すべての脳腫瘍の約8割程度が原発性脳腫瘍、約2割弱が転移性脳腫瘍であると報告されており、脳腫瘍の多くは原発性脳腫瘍が占めていることがわかります。

原発性脳腫瘍とは、脳を構成している組織や細胞、または脳の周りにある髄膜などの組織から発生する脳腫瘍のことです。

原発性脳腫瘍にもさまざまな種類のものがあり、大きく良性脳腫瘍と悪性脳腫瘍に分類されます。

原発性脳腫瘍の種類別の内訳は、約4分の1が神経膠腫(しんけいこうしゅ、同じく約4分の1が髄膜種(ずいまくしゅ)(脳を包む髄膜、特にくも膜という組織から発生する腫瘍)です。神経膠腫とは神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)(脳の神経細胞を結合し支える役割を持つ細胞)から発生する脳腫瘍のことで、ほとんどが悪性の脳腫瘍です。一方で髄膜種はほとんどが良性の脳腫瘍です。

そのほか、下垂体腺腫(ホルモン産生の司令塔である下垂体に発生する腫瘍)や神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)脳から分かれた末梢神経から発生する腫瘍)がありますが、ほぼすべてが良性腫瘍です。

このことから、原発性脳腫瘍の半数程度は良性脳腫瘍であることがわかります。

医師から「脳腫瘍です」と診断を受けると、多くの方はとても絶望的な気持ちになってしまうことでしょう。しかし、実際には良性脳腫瘍も多く存在し、これらは治療を受けることで完治が目指せる病気なのです。

転移性脳腫瘍とは、脳以外の場所で発生したがんが脳に転移してきて、増殖した脳の悪性腫瘍のことです。原発巣(最初にがんが発生した病変)としてもっとも多いものが肺がんで、続いて乳がん直腸がん腎臓がん胃がんとなっています。

小児にも脳腫瘍は起こり得ますが、発生頻度は成人に比べて非常に少ないです。先述している通り、脳腫瘍自体の患者数がとても少ないので、そのなかの小児脳腫瘍というと極めてまれな疾患であることがわかります。

小児脳腫瘍のなかでは、以下のようなものが多くみられます。

<主な小児脳腫瘍>

  • 神経膠腫(しんけいこうしゅ)…神経膠細胞(しんけいこうさいぼう:脳の神経細胞を結合し支える役割を持つ細胞)で発生する腫瘍
  • 胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)…脳内の原始胚細胞(胎児期のときに内臓に分化することのできる能力を持つ細胞)から発生する腫瘍
  • 髄芽腫(ずいがしゅ)…小脳の中央部に発生する腫瘍
  • 頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)…下垂体と視神経の近くに発生する腫瘍
  • 上衣腫(じょういしゅ)…上衣細胞(脳室の壁を形成している細胞)から発生する腫瘍

脳腫瘍が疑われるとき、また脳腫瘍がどのような種類のものか鑑別するときには主に以下のような検査を行います。

<脳腫瘍の検査方法>

  • 画像検査(MRIやCTなど)
  • 脳血管造影検査(カテーテル検査)
  • 髄液検査
  • 腫瘍マーカー
  • PET検査
  • 病理検査

など

これらのなかでも、脳腫瘍の診断を行ううえで特に有用な検査はMRI検査(磁気を使い、体の断面を写す検査)です。近年、MRIでは非常に高精細な画像が撮影できるようになり、診断の精度も高まってきています。

また、CT検査(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)は骨の状態などを確認するために有用な検査です。脳腫瘍によっては、頭蓋骨に悪影響を及ぼしている場合があったり、石灰化(腫瘍のなかに硬い石のような組織が形成されること)が起きていたりすることがあり、CT検査でこれらの情報を得ることができます。

また、脳腫瘍の摘出術が必要な場合には頭蓋骨を切開する必要があるため、術前検査としてもCT検査を行います。

素材提供:PIXTA

このように、脳腫瘍の検査ではMRIとCTを組み合わせて診断をつけていきます。

また、脳血管造影検査(カテーテルという細い管を用いて頭部の血管に造影剤を注入し血管の様子を写し出す検査)を行うこともあります。

特に髄膜種は、血管から栄養をもらうことで成長していく腫瘍であるため、腫瘍の周りに栄養血管が豊富にあるという特徴があります。そのため、髄膜腫の診断を行ううえで、脳血管造影検査は有用です。

小児に多くみられる胚細胞腫瘍などの診断には髄液検査を行います。髄液検査とは、腰部の脊髄腔(せきずいくう)に針を刺して髄液を採取して調べる検査方法です。

転移性脳腫瘍神経膠腫のような悪性脳腫瘍の診断を行うためには腫瘍マーカー計測やPET(Positron Emission Tomography)検査を行います。

腫瘍マーカーとは、血液中などに現れる、そのがんに特徴的な物質のことで、採血を行うことで計測することができます。

PET検査は特殊な薬とカメラを使ってがん細胞に目印をつけることができる検査方法です。がん細胞は正常細胞より多くのブドウ糖を取り込む特性を持っていることから、PET検査ではブドウ糖に近い性質を持つ薬を注入することで、がんの発見につなげることが可能です。

ここまでご説明してきた検査方法で、脳腫瘍のおおむねの鑑別を行うことは可能です。しかし、最終的な確定診断のためには手術で腫瘍組織を切除して顕微鏡で確認する、病理検査を行う必要があります。

特に悪性脳腫瘍の場合には、化学療法や放射線治療などの術後の治療計画を立てるうえで病理検査は非常に重要になります。

脳は多くの機能を持っていて、場所によっては手術によるわずかな損傷が麻痺や意識障害などの非常に重い合併症(ある病気や、手術や検査が原因となって起こる別の症状)につながることがあります。そのため、手術適応など治療方針の決定は非常に慎重に行う必要があります。

治療方針を決める際には、「そもそも治療が必要な脳腫瘍かどうか」が大きな分かれ道となります。

検査の結果、脳腫瘍が良性であった場合には経過観察が第一選択となります。ただし、経過観察となるのは脳腫瘍による症状がなく、周囲に重要な機能を持った組織がない場合です。

良性脳腫瘍であっても、すでに何らかの症状(視力低下など)がみられる場合には手術による脳腫瘍の摘出を行います。また、現段階で無症状であっても腫瘍の増大に伴い将来的に症状が出る可能性が高い場合や、症状が出てから手術を行うと合併症を起こす危険性があると考えられる場合には手術治療を行うこともあります。

また良性脳腫瘍のなかにも一部、増殖の能力が高い成分を持っている腫瘍もあり、その場合には術後に放射線治療を行うこともあります。

放射線治療には、頭の広い範囲に照射する方法と、腫瘍に対してピンポイントに照射する方法があります。それぞれの照射方法のメリットとデメリットを十分に考慮して、腫瘍の広がり方、組織型(病理学的な腫瘍の分類)、年齢などから患者さんに適した放射線治療を選択します。

悪性脳腫瘍の場合には、無症状であっても摘出が可能な場所であれば手術による摘出が治療の第一選択です。そのうえで、腫瘍の組織型に合わせて放射線治療や化学療法を組み合わせた治療を行います。

摘出困難な場所に腫瘍がある場合には、腫瘍の一部を摘出する生検術を行い、放射線治療や化学療法による治療効果を期待します。

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