ずがいいんとうしゅ

頭蓋咽頭腫

脳

目次

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概要

頭蓋咽頭腫とは脳に発生する良性腫瘍のひとつであり、視床下部や下垂体といった重要構造物の近くに発生する腫瘍です。また、小児慢性特定疾病に指定されている病気のひとつでもあり、5歳未満の小児に発生する腫瘍の中では9.7%を占め、第4位の頻度と報告されています。また日本脳神経外科学会の報告から、年齢別の発生頻度としては5歳以降において15%前後と報告されており、10歳前後に発生しやすいことも知られています。

頭蓋咽頭腫では頭痛や視野障害、尿崩症といった症状をみることになります。腫瘍そのものは良性の性質を持つのですが、発生部位が脳の奥深くであり、かつ機能的に重要な役割を担う構造物近傍に発生するため、慎重な治療介入が求められる疾患です。

原因

頭蓋咽頭腫は、脳のなかでも下垂体や視床下部と呼ばれる重要構造物の近くに発生する良性腫瘍です。腫瘍そのものは、水がたまった嚢胞と呼ばれる部分と塊の部分で構成されており、しばしば石灰化していることもあります。頭蓋咽頭腫は脳の奥深くに発生するため、症状や治療方法の決定などを理解する上で重要となる点が多く、発生すると以下のような正常機能が障害を受けます。

頭蓋咽頭腫が発生する脳の奥深くには、下垂体と呼ばれる構造物が存在することが知られています。下垂体は、身体の恒常性や活動に際して必要不可欠な多くのホルモンを分泌しています。下垂体は「前葉」と「後葉」に分けることができ、前葉からは副腎皮質刺激ホルモン[ACTH]、甲状腺刺激ホルモン[TSH]、成長ホルモン[GH]、黄体化ホルモン[LH]、卵胞刺激ホルモン[FSH]、プロラクチン[PRL]が、後葉からは抗利尿ホルモン[ADH]、オキシトシン[OT]がつくられ、分泌されています。これらの機能が障害されることから、下垂体機能低下症に伴う症状や尿崩症などを呈することになります。

頭蓋咽頭腫の発生部位の上側には視床下部が存在しています。視床下部にはさまざまな中枢機能が備わっており、体温調節、モルモン分泌の調整、情動や性欲、記憶の管理などを行っています。視床下部の機能障害を原因として、頭蓋咽頭腫ではたとえば肥満や性格の変化といった合併症を呈することがあります。

さらに、視神経や動眼神経も存在しており、腫瘍による圧迫症状として視力障害や眼球の動きに異常が生じることになります。さらに、髄液の流れが障害を受けることから水頭症を発症することになります。

症状

頭蓋咽頭腫では、腫瘍が大きくなることで水頭症を引き起こし頭痛や吐き気、意識障害を認めることがあります。また、下垂体や視床下部の正常機能が障害を受けることに関連したさまざまな症状も出現します。

抗利尿ホルモン分泌が障害を受けると、尿量を適切に調節できずに常時尿がつくられるため、多尿、多飲、口渇といった尿崩症の症状が出現します。また、ホルモン分泌障害として、疲れやすい、倦怠感、食欲低下などの症状が出現します。成長ホルモン分泌障害では、低身長といった成長障害が引き起こされ、性欲の減退や生理不順、性格変容といった症状も出現する可能性もあります。

頭蓋咽頭腫は近傍に視神経や動眼神経など、眼に関連した重要神経も存在しているため、視神経が障害を受けると、眼がみえなくなる視野障害・視力障害が生じます。動眼神経が障害を受けると、眼球や眼瞼の動きに異常をみることもあります。

検査・診断

頭蓋咽頭腫では、腫瘍を同定するための画像検査(CTやMRI)が行われます。また、ホルモン分泌の障害を併発することも多いため、血液検査や尿検査にて各種ホルモンの血液濃度を測定したり、負荷試験などを行ったりします。また、頭蓋咽頭腫では視力や視野の異常を伴うこともあるため、これらを評価する検査も必要です。

治療

頭蓋咽頭腫の治療方法は、外科的な腫瘍摘出術が基本です。頭蓋咽頭腫が発生した部位に応じて、経蝶形骨洞手術や開頭術が選択されます。手術以外の治療法としては定位放射線照射(ガンマナイフ、エックスナイフ、サイバーナイフなど)があります。

頭蓋咽頭腫は良性腫瘍の性格を有する腫瘍ですが、発生した部位近傍に重要組織(視床下部や下垂体、視神経や動眼神経など)が多く存在するため、手術を始めとした治療の難易度は非常に高いことが知られています。重要臓器の機能温存を図るために全摘出を行えないこともあり、腫瘍が再発することもまれではありません。また、再発を来した場合の手術はより困難を極めます。さらに、治療による正常機能を障害する術後合併症(尿崩症や性ホルモン分泌低下、視野障害や麻痺など)が発生することもあります。

頭蓋咽頭腫はこうした特徴を有する疾患であるため、腫瘍の様子や合併症状の有無、年齢などを慎重に加味して治療方針を決定することが重要です。