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インタビュー

脳腫瘍とはどんな病気? 検査したほうがよい症状について

脳腫瘍とはどんな病気? 検査したほうがよい症状について
寺坂 俊介 先生

札幌柏葉会病院 理事長・院長

寺坂 俊介 先生

目次
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脳腫瘍(のうしゅよう)とは、脳の表面や組織にできる腫瘍の総称です。腫瘍ができていても症状が出ないこともありますが、進行すると、起床時の頭痛、嘔吐などが起こることがあります。なかには、命に関わる種類の脳腫瘍もあります。早期発見のため、脳腫瘍の症状に気付いたら、病院でMRI検査を受けることが重要です。

今回は、脳腫瘍とはどのような病気なのか、札幌柏葉会(はくようかい)病院理事長・院長の寺坂俊介先生に伺いました。

脳腫瘍にはさまざまな種類があり、大別すると“良性脳腫瘍”と“悪性脳腫瘍”に分けられます。脳の表面を包んでいる膜や、脳神経、脳の血管など、脳組織以外のところから発生する腫瘍は、ほとんどが良性脳腫瘍です。一方、脳そのものから発生する腫瘍は、ほとんどが悪性脳腫瘍です。

悪性脳腫瘍は、治療が困難な病気の1つです。たとえば、“膠芽腫(こうがしゅ)”という脳腫瘍は、固形がんの中でもっとも治療が困難で、5年生存率が10%程度の病気だといわれています。

脳腫瘍がなぜ発生するのか研究が進められているものの、はっきりとした原因は分かっていません(2019年12月時点)。また、ほかの病気や生活習慣との因果関係も分かっていないため、脳腫瘍の発生そのものを予防することは難しいと考えられます。

脳腫瘍は、肺がん乳がんなどのよく知られているがんと比べて、発生率が少ない希少がんの1つです。人口10万人に対して、1年間に14~15人ほど発生するといわれています。

脳腫瘍の中でも発生頻度が高いのは、脳を包む膜から発生する“髄膜腫(ずいまくしゅ)”、脳そのものから発生する“グリオーマ神経膠腫(しんけいこうしゅ)”、下垂体と呼ばれる部分から発生する“下垂体腺腫”、脳神経から発生する“神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)”です。

腫瘍の種類によって、発生しやすい年齢層にそれぞれ特徴があります。

たとえば、頭の後ろの小脳に発生する“髄芽腫(ずいがしゅ)”は、子どものときに発生しやすい腫瘍です。先に述べた膠芽腫(こうがしゅ)は、壮年から老年にかけて多く発生します。“頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)”のように、小児期と成人期のどちらにも発生のピークがみられる脳腫瘍もあります。

近年、がんを抱えている患者さんの数は非常に多くなりました。医療の進歩によって内科的な治療方法が向上し、免疫系の治療や、分子標的薬を用いて、がんの患者さんが長期に生存できるようになってきているからです。

それに伴って、がんが脳に転移してしまうこともあります。このような脳腫瘍を“転移性脳腫瘍”といいます。

先に述べたように、脳そのものから発生する腫瘍や、脳の組織以外から発生する腫瘍は、“原発性脳腫瘍”といいます。正確なデータはまだ出ていませんが、原発性の脳腫瘍よりも転移性の脳腫瘍のほうが、数は多いのではないかといわれています。

発生した脳腫瘍の種類によって、治療法は異なります。主に手術が必要となる腫瘍もあれば、手術、放射線治療、抗がん剤治療を同じような比重で行う腫瘍もあります。また、手術治療と比べて抗がん剤治療や放射線治療の役割が大きくなる腫瘍もあります。

たとえば、“中枢神経原発悪性リンパ腫”は、抗がん剤と放射線を用いて治療することが推奨されます。組織を採って診断をつけ、どのようなタイプのリンパ腫であるかを確定するために、手術は必ず行いますが、外科治療の役割は少ないといえます。

一方、髄膜腫の場合は、全摘出ができれば、治癒につなげることが可能です。そのため、外科治療の役割が大きく、できるだけ綺麗に全摘出をすることが求められます。

脳腫瘍の治療について、詳しくは記事2『良性脳腫瘍の治療のポイントは? 腫瘍の全摘出を目指す札幌柏葉会病院』、記事3『悪性脳腫瘍の治療のポイントは? テクノロジーを用いた安全な手術に努める札幌柏葉会病院』をご覧ください。

脳腫瘍の症状は、腫瘍が発生する場所によって異なります。頭痛を感じて受診するケースもあれば、てんかんという発作を起こして脳腫瘍が発見されるケースもあります。また、腫瘍がだんだん大きくなっていくと、症状も重くなっていきます。たとえば、朝方に気分が悪くなって嘔吐をすることがあります。さらに病気が進行すると、手足がしびれたり、まひが起こったりすることもあります。

脳腫瘍の早期発見のために、検査したほうがよいと考えられるのは、次のような場合です。

一般的には、起床時の頭痛が長期間続くことがあれば、脳の検査をしたほうがよいといえます。

寝ている間は呼吸が浅くなるため、二酸化炭素が少し体の中に溜まり気味になり、血管が拡張して、脳の圧が少し高くなります。そのため、脳に腫瘍があると、寝ている間に頭痛が起こります。目が覚めていつもどおり呼吸を行うようになると、徐々に二酸化炭素が排出されて血管が縮小し、脳の圧が少し下がって頭痛が治まります。

聴神経腫瘍”という脳腫瘍ができている場合、片方の耳の聞こえが急に悪くなることがあります。「年を取ったせいかな」と思ってしまいがちですが、原因が加齢によるものだけではないこともあります。単純な老化によるものだと思わずに、検査を受けていただければと思います。

脳腫瘍の中でも多くみられる“下垂体腺腫”では、腫瘍が大きくなると視野の両サイドが見えづらくなってくるという症状が出てきます。脳の下垂体に腫瘍ができて、目の神経の視し交叉こうさと呼ばれる部分が押されるためです。

「車が横から来ているのに見えなくて、危険なことが何回もあった」「よく肩をドアにぶつけて、けがをする」といった場合、下垂体腺腫が発生している可能性があります。

ほとんどの脳腫瘍はMRI検査によって発見することができます。大きな病院の多くはMRI検査を実施しているため、気になる症状がある場合は、まずはMRI検査ができる病院にかかって診てもらうとよいでしょう。

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    東京都立多摩総合医療センター 脳神経外科 部長

    おおた たかひろ

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    国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授

    はら てつお
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    東京医科大学病院  脳卒中センター長、東京医科大学 脳神経外科学分野 主任教授

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    NTT東日本関東病院 脳神経外科 部長/脳卒中センター長

    いのうえ ともひろ
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