ちゅうすうしんけいげんぱつあくせいりんぱしゅ

中枢神経原発悪性リンパ腫

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

血液中の細胞は大まかに、感染症やがんと闘う白血球、酸素を体中に運搬する赤血球、出血を止める血小板の3つに分類されます。白血球はさらに、骨髄で成熟する骨髄系細胞と、リンパ節やリンパ組織で成熟するリンパ球に分けられます。

このリンパ球のうち、Bリンパ球は骨髄で成熟し、リンパ節や脾臓、粘膜関連リンパ組織といった器官の胚中心と呼ばれる場所で、抗原に対処するための多様な抗体、免疫グロブリンを作る能力を獲得します。最終的には免疫グロブリンの産生に特化した形質細胞、あるいは長期的に生存し再度同じ抗原が体内に侵入した際に活性化してより素早く対処するメモリーB細胞というものに分化するのが正常のBリンパ球の分化過程です。

Bリンパ球とは異なる方法で抗原に対処するTリンパ球は別の分化過程を経ます。リンパ腫はこのような分化過程のある段階で、リンパ球が何らかの理由で異常に増殖した結果として生じます。ほとんどの場合、リンパ節やリンパ組織(脾臓、消化管など)から生じ、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫に大別されたうえで、更に細かく分類されます。

病期の進んだリンパ腫では脳や神経組織に転移がみられる場合もあります。中枢神経原発悪性リンパ腫とは、このような進行性リンパ腫の脳転移とは異なり、脳、髄膜、眼球、脊髄などに限局しその他の全身性の病変をきたさないまれな非ホジキンリンパ腫を指します。HIV感染者で比較的多くみられるという特徴があります。しかし、HIVに感染していない場合も勿論あります。

原因

HIV感染や先天的な免疫不全症、医原的な免疫不全状態(ステロイドやその他の免疫抑制剤の長期使用)は中枢神経原発悪性リンパ腫の発症の可能性を高めます。

中枢神経にはリンパ組織は通常存在しないため、リンパ腫の元となる細胞がどこからやって来るのかは不明です。仮説のひとつとして、末梢で生じたリンパ腫細胞が、他の部位では免疫機構の正常なはたらきによって定着・増殖できず中枢神経系に到達しリンパ腫となることもあります。

EBウイルスとの関連も指摘されています。しかし、免疫不全のない患者さんでリンパ腫細胞中にEBウイルス由来のDNAが発見されることは少ないです。また髄液中にEBウイルスが認められる方すべてに中枢神経原発悪性リンパ腫が生じているわけでもありません。

症状

中枢神経は体のさまざまな部位の感覚、運動に関わるため、中枢神経原発悪性リンパ腫による症状はリンパ腫がどの部位に生じたかによって大きく異なります。

大脳に生じた場合は場所に応じた局所的な神経症状(麻痺(まひ)、感覚低下・消失、言語機能への影響等)がもっとも多く、その他に(うつ)や性格の変化といった精神症状、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、吐き気等)、痙攣(けいれん)発作が認められます。

病変が髄膜のみに限局している場合は比較的まれですが、その場合の症状としては脳神経麻痺(眼球運動障害や顔面麻痺)、頭痛、脊髄神経根症状(特定の脊髄神経の支配領域における麻痺、疼痛、感覚麻痺等)、平衡感覚の喪失が含まれます。

患者さんのなかには経過中に眼球のリンパ腫を生じる方もいます。症状はかすみ目、視野の異常といった非特異的なものであることが多く、ウイルス感染やサルコイドーシス等との鑑別が必要になります。脊髄に原発性のリンパ腫病変が最初に現れることは非常にまれですが、病変のある部位とその支配領域に応じた神経症状(麻痺、感覚鈍麻・喪失、疼痛)を引き起こします。

検査・診断

症状が認められた場合、通常はCTによる画像検査を行います。しかし、中枢神経原発悪性リンパ腫ではCTよりも造影剤を使用したMRI検査のほうが病変を見つけられる可能性が高いです。そのため、CTで異常がはっきりしない場合やリンパ腫の可能性が臨床的に疑われる場合にはMRI検査を行います。MRI検査を行なった場合でも、髄膜の病変は見つけられない場合も多くあります。

MRIで中枢神経原発悪性リンパ腫の疑いが強い場合は、腰椎穿刺による脊髄液の採取、眼科的な検査によって眼内病変が強く疑われる場合にはその病変の生検検査を行います。これらの細胞診、組織診断でリンパ腫細胞の単クローン性増殖などが認められた場合は中枢神経原発悪性リンパ腫と診断します。

認められない場合、頭蓋内の病変が生検可能であるかを、MRI画像を元に慎重に判断します。部位によっては難しい場合もあり、脳神経外科医の判断が必要です。

頭蓋内の悪性腫瘍が疑われ、かつ症状を呈している場合には通常ステロイド剤の全身投与を行います。男性、特に高齢の場合は中枢神経のリンパ腫が原発性ではなく精巣由来であることも多いです。そのため、精巣の超音波検査も考慮します。また、原発が中枢神経であるかの確認のため、全身のCTあるいはPET・CT検査も、生検検査を行う前に必要です。

治療

中枢神経は人体のその他の臓器と異なり、血液脳関門という特殊な障壁で守られています。癌や感染症ではこの血液脳関門も障害されるため、通常よりは薬が中枢神経に到達しやすくなりますが、それでも不十分な場合が多いです。

そのため、中枢神経原発悪性リンパ腫の治療には、血液脳関門を突破しやすいメソトレキセートという抗癌剤を中心とした全身化学療法が行われます。組み合わせるその他の抗癌剤としては、リツキシマブ、シタラビン、プロカルバジン、ビンクリスチンなどがあります。

治療によってリンパ腫が一時的に消えた場合、治療効果を長く持続させるために地固め療法として、さらなる化学療法、自家造血幹細胞移植、放射線療法などを行います。それぞれに副作用があるため、どの方法をとるかは患者さんの元々の健康状態などを考慮して慎重に決定します。特に高齢者で化学療法と放射線療法を行った場合、白質脳症という認知機能に高度の低下が認められる合併症が多いため避ける場合が多いです。

初期治療で十分な効果が得られなかった場合でも、患者さんの元々の健康状態に問題がない場合は自家造血幹細胞移植を行うことがあります。悪性腫瘍の治療は現在(2017年現在)日進月歩で、新たな治療法が次々に開発されています。最新の治療に関しては主治医に、あるいはセカンドオピニオン外来でご相談下さい。

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