小児がんとは15歳以下の小児期に発生する悪性腫瘍の総称で、よく見られるものとしては白血病、リンパ腫などの“血液のがん”や脳腫瘍、胎児性腫瘍、肉腫などの腫瘤を形成する“固形がん”があります。
国立がん研究センターの調査によると、日本では年間2,000~2,500人の子どもが小児がんと診断され、発生頻度から見ると大人に比べて少ないうえ、近年は医療の進歩によって70~80%の確率で根治できるようになってきています。しかし、5~14歳の子どもの病死死因第1位を占めており、がんによって子どもの命が失われているのも事実です。では、小児がんは何が原因で発生するのでしょうか。
小児がんの原因はまだ明らかでない部分もありますが、主な原因として遺伝的な要因や偶然起こる細胞の異常などが考えられており、大人のがんの原因とは異なる部分が大きいといわれます。
たとえば大人のがんでは、喫煙習慣や食生活、肥満など、生活習慣が発生要因となっている場合があります。しかし、小児がんは生活習慣が発生要因となっている可能性はほとんどないと考えられています。
また、国際小児がん罹患 第3版(IICC-3)では小児がんを主分類12種類、小分類47種類で分けており、種類によって発生原因も異なると考えられています。
小児がんは大きく分けると“血液のがん”と“固形がん”に分類され、発生頻度はそれぞれ50%程度と考えられています。主な血液のがんとしては白血病やリンパ腫などが挙げられ、特に白血病は小児がんの中でもっとも発生頻度が高いといわれています。
また、主な固形がんとしては脳腫瘍や胎児性腫瘍、肉腫などがあります。固形がんの中では脳腫瘍がもっとも発生頻度が高く、小児がん全体で見ても白血病に次いで2番目に多いがんです。
以下では、小児がんの種類別に考えられる原因について解説します。
小児がんの中でもっとも発生頻度の高い白血病は、いまだに具体的な発生原因が明らかになっていませんが、未熟なリンパ球に染色体や遺伝子の異常が積み重なることによって発生するといわれています。
リンパ腫も同様に発生原因は不明ですが、リンパ組織を構成するリンパ球に異常が生じることによって発生すると考えられています。
小児の固形がんの中でもっとも発生頻度の高い脳腫瘍にはおよそ150もの種類があり、ほとんどの種類で発生原因は分かっていません。ただし、神経線維腫症などの一部の脳腫瘍には遺伝的な要因が関与していることが分かってきています。
また、神経芽腫、網膜芽腫、腎芽腫(ウィルムス腫瘍)、肝芽腫、胚細胞腫瘍などの胎児性腫瘍と呼ばれる固形がんは主な原因として胎児期に神経や腎臓、肝臓の細胞になるはずだった細胞が未分化のまま胎児の体に残っており、それらの細胞が偶然変化することによって生じると考えられます。なお、網膜芽腫や腎芽腫は一部遺伝的な要因が関与している場合もあると考えられます。
さらに、小児の固形がんには骨肉腫、ユーイング肉腫、軟部肉腫、横紋筋肉腫など“肉腫”と呼ばれる種類もあります。肉腫もまた、ほかのがん種と同様に発生原因は分かっていませんが、一部の横紋筋肉腫は近年遺伝子変異が関与していることが分かってきました。
小児がんに特化した検診などはないため、発見されるきっかけのほとんどは何らかの症状によって病院を受診したときや健康診断を受けたときに見つかります。
しかし、小児がんは大人と比べて発生頻度も少なく、分かっていないことも多いため、診断が難しいといわれています。ただし、以下のような症状があった場合には、小児がんの可能性を踏まえて専門施設で検査・診断を受けることを検討しましょう。
国際小児がん学会(SIOP)・小児がん親の会国際連盟(ICCCPO)では、以下のような症状がある場合に病院を受診することが推奨されています。
など
小児がんのほとんどは、具体的な発生原因が明らかになっていません。ただし、生活習慣などが原因となっている確率は低く、遺伝的な要因や偶然生じる細胞の異常などが関与していると考えられていることから、小児がんを予防することは難しいとされています。そのため、まずは小児がんの特徴について十分に理解することが非常に重要です。
そのうえで子どもに気になる症状や訴えがある場合、または不安や疑問に思うことがある場合は、まずは担当医に相談、必要に応じて専門医療機関の受診を検討するようにしましょう。
九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野 教授
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